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「イスラム国」は国家か 西側の対応がカギ

【パリ】国際社会が今月13日発生したパリの同時テロ事件にどう対応するかは、根本的な問題に絡んでいる。イスラム教過激組織「イスラム国(IS)」が実際にどの程度まで国家であるのかという問題だ。

 ISは国家に関する教科書的な定義に沿っている。英国と同じ大きさのイラク西部とシリア東部で、ISは「暴力の独占(マックス・ウェーバーが唱えた主権国家の定義)」を維持し、市民に対する権限を行使している。その度合いは、国連の多くの加盟国よりも高いほどだ。

 フランスのオランド大統領はパリのテロ事件後、自らの言葉を周到に選択して、ISに国家としてのこのような性格があることを認めた。16日議会で演説し、フランスは「軍隊」によって攻撃され、「戦争状態にある」と述べたのだ。

 オバマ米大統領は同じく16日、全く異なる言い回しをした。同大統領はISについて「殺人者のネットワークに過ぎない」と述べたのだ。

 オバマ大統領は「ISが国家であるかのようにみなしてわれわれが行動し、別の国家を攻撃している国家と戦うために考案されている通常の軍事戦術を使う場合、われわれはISの言説(カリフ=ムハンマドの後継者=を奉じるイスラム国家を創設したと宣言したISの言い分)にはまり込んでしまうのだ」と述べた。

 この違いは決定的に重要だ。ISがおおむねテロリストネットワークとして扱われれば、ISに対する掃討努力は本質的にテロ対策作戦であり、オバマ大統領がしばしば言及しているように、その目標は一義的にISの言説と世界のイスラム教徒へのアピールを切り崩すことだ。軍事的には、これはISの戦闘員など狭い標的に集中し、市民の犠牲者を避けるよう細心の注意を払うことを意味している。

 しかし、ISが敵国として扱われるとすれば、一義的な目標は在来型の戦争と同一だ。まずインフラと経済基盤を含むISの活動能力を破壊し、その後ISの領地を最終的に征服することだ。

 事実上の国家を運営する能力(ISは全イスラム教徒に対し、そこに結集するよう呼びかけてきた)は、ISの言説の重要な一部だ。

 ISの宣伝資料は、ISが提供する公共サービスに集中しているのと同程度に、背教者と異教徒を殺害することに集中している。新しいバス運行サービスや学校教科書や、街灯の修理に関するもっともらしいリポートがある。またモスルやラッカで営業しているピザ屋やバーガーレストラン、そして、コーヒーショップのリポートもある。

 米プリンストン大学のジハード(聖戦)主義者集団研究者コール・バンゼル氏は「分析的な観点からは、それは確かに国家だが、領土の考え方においてそれは非在来型の国家だ」と述べた。

 同氏は、ISには2つの種類の領土があると述べた。一つは、ISが支配しているシリアやイラクの一部のような実際の領土であり、他の一つはサウジアラビアないしアルジェリアでISが主張している「プロビンス(州)」だ。全体として、ISは世界全体をISが統治すべき領土とみなしている。

 世界中のイスラム教過激派に対するISのアピールの核心は、60カ国以上の有志連合がIS掃討のために結集しているにもかかわらず、ISがシリアとイラクで存続している能力にある。ISの領土上の訓練キャンプや製造施設は、その境界線を越えてテロ攻撃を輸出するのにも使われている。

 実際、パリのテロ攻撃に参加したテロリストの一部は、シリアに渡航していたことがある。

 現時点では、フランスも米国もIS掃討のための地上軍の派遣は望んでいない。しかしフランス当局者はパリのテロ攻撃を受けて、着手したIS空爆作戦で攻撃標的の範囲を劇的に拡大すべきだと既に主張している。

 フランス戦略研究財団(FRS)のフェローで元国防省顧問のブルーノ・テルトレ氏は「(ある集団が)社会に秩序をもたらし、食料と健康サービスを提供すれば、社会を構成する人々の間である程度の正統性が得られる。テロが(その集団の)流儀の一部であったとしてもそうだ」と述べた。その上で「必要なことは、その集団がもはや国家と自ら主張できず、統治もできない組織に確実になるようにすることだ」と語った。

 米国は2014年半ば以降、ISを空爆しているが、その標的の大半は最近まで厳密に軍事的なものに限ってきた。軍用車両、重火器、結集した軍隊などだ。

 このため、ISが統治のために使用している行政上の建物、発電所や通信塔などのインフラ、そして工業基盤は、おおむね標的にならず無傷のままだった。ISの主要収入源である石油を運搬するトラックの車列を米軍が攻撃したのは、最近数日間にすぎない。

 著名なイラク国会議員で元安全保障顧問のモワファク・アルルバイエ氏は、ISに効率的に打撃を加えるため、標的設定の際の選択を大幅に緩めねばならないと述べた。

 同氏は「それ(IS)は歴史上に存在する最も恐ろしく、犯罪的で、冷酷な国家だ。米国主導の有志連合はISのインフラ、供給ライン、価値の高いものを標的にすべきだ。われわれはそれをマヒさせる必要がある」と語った。

(筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ中東担当コラムニスト)

訂正:第4段落の「オバマ米大統領は同じく19日」を「オバマ米大統領は同じく16日」に訂正します。

By YAROSLAV TROFIMOV

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