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ロボット掃除機は、将来どうなっていくのか──コデラ総研 家庭部(53)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第53回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ロボット掃除機は、将来どうなっていくのか」。

文・写真:小寺 信良

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廉価なロボット掃除機を導入して、3週間ほどが経過した。ここのところは2日に1度ぐらいの稼働率で、ダイニングや廊下などを掃除させている。

実際にある程度の期間運用して分かったのは、電源ケーブルに絡んで身動きが取れなくなるというケースは案外少ないということだ。これにもコツがある。ケーブルが1本だけにょろっとしていると、ぐいぐい突っ込んでいってローターブラシに巻き込んでしまう。しかし束ねた状態だと、押しても動かないので、単なる障害物だと判断して引き返すので、巻き込むまでに至らない。単独で存在するケーブルは壁際に寄せたり、重さがあるものをケーブルの上に乗せておけば、それがジャマーとなって巻き込むことはない。

また、吸えるゴミのタイプもだんだん分かってきた。人間には見えない小さなゴミを取るのは得意だが、案外大きなゴミ、例えばティッシュの切れっ端みたいなものは吸いきれず、ローターブラシにはじき出されることが多い。おそらくこの辺りが、機種による違いになるだろう。吸引力が強ければ、大きなゴミも問題なく吸えるはずである。

この、目に見えるものが掃除できるかというのは、人間にとっては大きな評価基準になる。吸えていないのが目に見えれば、それは結果として掃除ができていないという評価になってしまう。実際にゴミパックを開けてみれば、人の目には見えなかった大量の小さいゴミが取れているのだが、それは購入して自分の家で運用してみるまで評価できない。

店頭デモや家電レビューでは小麦粉などをまいて吸引させているが、これなどは小さいゴミでも可視化できるぐらいの量にまで増やさないと、成果が見えないからである。実際に小麦粉をぶちまけてしまったら、のんきにロボット掃除機など動かさず、普通に掃除機で吸った方が早い。すなわちロボット掃除機は、現段階ではありもしない状況の上で評価されているに過ぎない。

動作を可視化する

そうはいっても、成果の可視化というのは、白物家電にとっては重要だ。ダイソンのキャニスター型掃除機は、ゴミが溜まる部分を透明にして、成果を可視化したことが高い評価に繋がった。ダイソンのロボット掃除機も、ゴミパック部分は透明だ。従来の概念では、ゴミをなるべくユーザーに見せないように溜め、触らずに捨てさせるのがセオリーであったわけである。

ドラム式洗濯機は、ドア部分が透明で中が見えるようになっているため、動作の様子を確認することができる。元々コインランドリーに置いてあるような業務機はすべてドアが透明だが、これは中身が確認できれば取り間違いがないといった理由からだろう。最初から透明ありきのものは、家庭に入っても透明のままである。

三洋電機の白物家電部門を買収した中国ハイアールは、今年6月に全体がスケルトンの縦型洗濯機の実働モデルを公開した。同じ頃シャープは、天板が透明で内蓋がなく、洗濯中の中身が見える縦型の洗濯機を発売した。中の動作を確認したい衝動は、誰にもある。動作の可視化は、自動化への信頼や期待と表裏一体ではないかと思う。

もうひとつ、ロボット掃除機で可視化できるのが、走行ルートだ。多くのロボット掃除機は、基本的には対物センサーと、転落防止センサーしか備えていない。まっすぐ進み、ぶつかったら向きを変えてまた進むという繰り返しだ。ぶつかって反転するときの角度を微妙に変えることにより、動作がループしないようになっている。ということはすなわち、限りなくランダムに走行させることで床面全体をカバーしようとする発想である。

これはある意味、計画性のない動きなので、当然無駄も出る。すでに掃除したはずのルートを何度も横切ることになるからだ。もちろん1度で綺麗に吸い込むことができないのであれば、何度でも通って構わないのだが、やはり人間の目には無駄な動きが多いように見える。

現時点で最も進んだロボット掃除機であるルンバの最新シリーズは、カメラなど複数のセンサーを駆使して部屋の間取りをマッピングし、椅子の脚などが入り組んだ場所の掃除も、ランダム性に頼らずに走行できる。基本動作が直線で、走行場所に重複がないため、目的を持って走行している様子が可視化される。価格が12万5000円もするのは当然で、中身的にはもはやスマートフォン並みである。

多彩なセンサーを搭載するという方向性は、やがて他社も追従してくるだろう。問題は、センサーから送られてくる膨大なデータから、意味のある情報に統合処理を行うプロセッサとプログラムである。これを本体内に搭載すると、価格は急上昇する。ルンバが高性能なのは分かっていながら、多くの家庭で導入が進まないのは、費用対効果に躊躇するからである。

しかし考えようによっては、ここはITにチャンスがあるとも言える。掃除機がWi-Fiに接続し、センサーからのデータを流し込むと、そこに繋がっているPCやスマートフォンがデータ処理を行って本体に戻す。あるいはクラウドに送って処理するという手も考えられる。頭と手足を分離することで、手足のコスト上昇を抑えるわけである。

この点で言えば、ロボット掃除機は、すでにハードウェアのベースは中国製の廉価なものがたくさんある。従ってソフトウェアベンチャーがファブレスで手を出しやすいジャンルであろう。市場性から考えれば、掃除をしなくていい家庭など存在しないわけだから、まさに無限の市場があると言っても過言ではない。(つづく)

本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)

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