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- 2015年11月20日 11:57
もし日本人が「難民」になったら・・・新作映画「さようなら」を通して考える「難民問題」

(左から)田中さん、ロングさん、深田監督" 写真一覧
折しも、ヨーロッパでは難民問題が大きな社会課題としてクローズアップされており、日本でも、難民や移民の受け入れをめぐる議論が高まりつつある。そんななか、映画「さようなら」を通して難民問題を考えようというトークイベントが11月18日、東京都内で開かれた。深田晃司監督と主演のブライアリー・ロングさん、難民支援協会の田中志穂さんが登壇し、日本社会が難民とどう向き合うべきかについて語った。【取材:亀松太郎】
「つきあいにくい外国人」は排除してしまう日本社会
昨年、日本政府に対して難民申請をした外国人は5000人いた。しかし、難民として認定された人はわずか11人。申請者数の0.2%にすぎない。この数字について、難民支援協会の田中さんは「諸外国でこんな国はない」と嘆いた。「アメリカだと半分ぐらい、ヨーロッパ各国でも2、3割が認められている。それに比べると、日本は非常に厳しい状況です」なぜ日本は、そんなに厳しいのか。田中さんによると、一つは難民認定を担当する入国管理局の対応に問題があるという。「異国に来た人の気持ちになってサービスが提供されていない」。もう一つの要因として、リスクを過度に恐れる日本社会の風潮が影響していると、田中さんは指摘する。
「少しでも間違ってはいけないという意識が強い。難民でない人が入るのを恐れて、実は難民である人を排除しているという構造が生まれている」
日本が外国人に対して「やさしくない」社会だという意見には、深田監督も同意する。「多文化の共生ということはなんとなく認識していても、つきあいやすい外国人や同調しやすい外国人は受け入れるが、そうでない外国人は排除してしまうというところがある。共同体の中での『排除と包摂』の問題になると、すごく厳しくなってしまう」と語った。
一方、5年前に来日し、舞台を中心に女優の仕事をしてきたロングさんは、自らの経験から、「日本社会の一部になりきれていない」と感じているという。映画での出演も増やそうとアプローチしても、「外国人の役はないだろうとよく言われる。外見的に『異物』と見られてしまう」。それでもロングさんは、白人のアメリカ人である自分はどちらかといえば有利な立場で、アジアやアフリカから来た人たちはもっと大変だと同情を示していた。
日本人は「リスクがある社会」を受け入れられるか?
日本人も、海外に行けば「外国人」であり、マイノリティとして扱われるが、日本にいる限り、そのことを意識する機会は多くない。ましてや、自分が「難民」になる可能性を頭に描くことは、日本で暮らす日本人にとって、めったにない経験だろう。その点を逆手にとって、原発事故による日本全土の放射能汚染という架空の設定をすることで、「日本国民が難民化した社会」を想像してみようというのが、映画「さようなら」の試みだ。映画の中では、諸外国による「日本難民」受け入れのニュースを聞いた登場人物が、「本当に難民になっちゃうんだね、私たち」とつぶやくシーンがある。その女性は、日本人が避難した外国で「いじめられているみたいだよ」と口にしながら、浮かない顔をするのだ。
このような描写について、主演したロングさんは「日本人は日本を出ていかない限り、自分がマイノリティになることはあまり想像する機会がない。でも、この映画は、日本からどうしても逃げないといけなくなったときにどうなるんだろうということを想像させてくれる」と話した。
現実の世界に目を向けると、欧米でいま大きな課題となっているのは、内戦状態のシリアから逃れてきた難民たちの受け入れをどうするかだ。ドイツを中心にヨーロッパ各国が大規模な難民受け入れを表明しているが、11月13日にフランスのパリで発生した同時多発テロは、その流れに水を差すのではないかと懸念されている。
難民支援協会の田中さんが危惧するのは、日本社会への影響だ。「ああいう報道があると、ヨーロッパは大変だから、日本は難民の受け入れをしないほうがいいという世論が増えてしまうのかなと思う」。
しかし、田中さんは「リスクがある社会」を受け入れていくべきではないかと提言する。「リスクとどう向き合い、リスクをどう乗り越えるかというのが、ヨーロッパでなされている議論だ」と指摘しながら、リスクを前提とした社会をどう構築していくかという議論が、日本でもっと展開されていくことを期待していた。
『さようなら』11月21日(土)新宿武蔵野館他 全国ロードショー! 配給宣伝:ファントム・フィルム





