記事

いいね!数≠露出価値。スポンサー価値を可視化する自動認証技術とは? レピュコム・ジャパン代表取締役・秦英之【前編】

リンク先を見る

“スポンサーシップ業界”という言葉をご存知だろうか? 本インタビューを受けてくださったレピュコム・ジャパン・秦英之さんが何度も口にする言葉だ。「スポンサーシップ業界では、こういうやり方がスタンダードになっています」というお話は、このインタビュー中に何度も登場した。

スポンサーシップというのは、スポーツや音楽、エンタメなどのイベントに広告料もしくは物品、人員などを提供する代わりに露出機会を得ることと定義される。説明するまでもなく、われわれの生活はスポンサーシップなしに成り立たないと言っても過言ではない。意識するにせよしないにせよ、われわれは様々なスポンサー広告に囲まれている。スポーツが今のように莫大な広告効果を生むジャンルになったのも、スポンサーシップが進歩したことが大きい。

レピュコム・ジャパンは、そのスポンサーシップの価値を最大化する世界最大のスポーツマーケティングリサーチ会社の日本支社だ。そして秦英之氏は同社の代表取締役であり、Jリーグのマーケティング委員会のメンバーでもある。インタビューは予定をはるかにオーバーする2時間半に及び、そのバイタリティ、知識量、熱量、スポーツへの深い愛にただただ圧倒されることとなった。日本で最もスポーツマーケティングの、そしてスポーツの未来を熱く考える男の1人、アンディ秦さんこと秦英之さんのお話を聞いていただこう。
(取材日:2015年08月20日 構成:澤山大輔[スポーツマーケティングナレッジ編集部])

秦英之 弊社は企業がスポーツに投資する際、スポンサー側が1円でもお金を出した際にどういった価値になっているか、あるいはJクラブ側がどういった価値を作れるかを数値化する会社です。

スポンサーシップには2つの要素があり、それは露出する価値と、露出された後の意味です。テレビ、ラジオ、紙媒体、オンライン、最近ですとソーシャルメディア。それらをどう数値化できるか。より多く露出することがスポンサー価値、媒体価値に直結します。いかに多くの方々に触れてもらうかが、価値に繋がります。プレミアリーグはより全世界に向けて発信されていますから、投資価値は大きいということですね。

レイヤーがより大きくなれば、より多くの人に届きます。出た後に訴求されているか、イメージが良くなっているか、スポンサーシップ業界においては認知された後の商品を欲しくなっているか、イメージが良くなっているかということを測るのがリサーチ側の仕事です。

会社としては、その両面を測定する基準を作るための数字づくりをしています。スポンサーシップの価値を可視化し、明確な価値がハッキリすれば、良いものに対しては投資が増やせますし、悪いものに関しては改善ができます。それが、スポンサーシップに対する弊社の考え方です。

では、なぜ弊社が大きくなったのか? 元々、テレビの画面における広告価値は、広告単価と露出時間を掛けあわせたものになります。テレビコマーシャルは人があって、音があって、物語があります。そこに30秒の価値があり、時間帯によっては高く売ることができます。

しかしスポーツにおいてはどうでしょうか? 例えばスポンサー広告は、画面においては胸スポンサーや看板などしか映っていませんよね。となると、「テレビコマーシャルと同様に、単価や時間を掛け合わせるのはフェアではないのでは?」と考えました。そこで、開発されたのが『積み上げ方式』という考え方です。

要は、スポンサーロゴが出現する大きさ、位置、回数、時間を4つの指標として考えようということです。それを自動認証技術で拾い、最終的に積み上げて最終的な広告単価を出そうという考え方です。事前登録すれば、どの箇所においた看板に最終的にどのぐらい露出価値が出たか、ということが可視化できるわけです。スポンサーシップ業界では、この考え方はかなり一般的になっています。Jリーグでも3年前に導入されており、この考え方を理解することがまず重要になります。

目に見える価値を可視化すれば、市場はより促進され、マーケットが大きくなります。銀行や金融でもそうですがフェアなトレードほどお互いイーブンになり、市場は活性化するわけですね。フェアであることがスポンサーシップ業界では重要で、弊社がこのサービスを開発したことで一気に世界的に展開されたという経緯です。

[画像をブログで見る]

 弊社はこの自動認証技術をインドでポジショニングし、世界的に展開しました。リサーチというのは、お願いするほどコストが掛かります。5試合と10試合と100試合では、本来それぞれコストが違いますよね。弊社は、自動認証技術なのでいずれにせよすべてのデータを取るので、「あらゆるデータを取る代わりに、コストを分担しあいましょう」ということで会員制にしました。

要は、Wi-fiや携帯電話の使用料と同じですね。一定価格で提供し、自分の領域だけデータを取ってもらう。その代わり、別のドアからは他のクラブが自分たちに関する情報を持っていく。おおもとのデータは一緒で、ドアをしっかり作ることで定額で良いデータを提供できるようになりました。

弊社ができたのが2004年でして、そこから2006年ぐらいにかけて一気に世界的に普及し、差別化できています。おかげさまで、今やほとんどのプロリーグでこの技術を採用していただいています。同じロジックで、新聞や雑誌でも記事の中でブランドがきちんと出ているか、数字的に証明できれば出す側も納得しやすいわけです。媒体側の言い値だったものが、スポンサー側にも客観的な指標を得られたということです。

この指標は、最近ではソーシャルメディアでも同じようなものが得られています。今はいいね! 数イコール露出の価値ではありません。例えば1000人の友人がいても、全員がフェイスブックの投稿を観られるわけではなくだいたい5%~10%ぐらいの人しか読めないというロジックがあります。そこを加味し、ブランド露出価値を算出するとデータが積み上がっていくわけですね。「なぜ、この金額なのか」ということがわかりやすく伝わるわけです。これが、この世界の常識になったわけです。

データを可視化することで、スポンサー露出に対するリサーチのニーズもさらに高まりました。「しっかりブランドが認知されているか」「そもそも露出していることが知られているか」、そういう疑問が生まれます。

それに対し、例えばスポーツチームにスポンサードした場合、認知者・非認知者と比較し通常2~3割、ブランドのイメージは向上します。自分が応援するクラブのイメージは、大体良くなるわけです。それをいかにサービスに繋げていくか、定性的・定量的なものを組み合わせるのがわれわれの仕事になります。グローバルなどんなトップリーグでも、すべて数字で裏付けできるため、高い取引ができるようになりました。

最も露出価値が高いのは、やはりプレミアリーグおよびラ・リーガの2強(FCバルセロナ、レアル・マドリー)ですね。露出価値は、テレビ放映がどこまでされているかによって変わってきます。アメリカのMLBよりも、圧倒的に露出のボリュームが違います。

――私も昨年ドバイに行きましたが、CLの試合が普通にやっていて「やはりサッカーは世界的に観られているんだ」という感想を新たにしました

秦 ゆえに、胸スポンサーの取引が高い価格で行なわれているわけですね。それはこれまでのデータが蓄積され、積み上がっているからです。「1:3」の法則というものがありまして、1の投資に対して3のリターン、投資価値があるというものです。売値は、露出価値の3倍を逆算して決まっていくものになっています。

例えば明治安田生命さんのJリーグタイトルスポンサーも、突然決まったわけではなく、しっかり資産価値を測りどれぐらい露出価値があるか査定し、取引値が決まり、それから交渉がスタートするという構図になっています。テレビ、紙媒体、オンラインというのはどういう角度でどう出るか、で取引値が変わってきます。

――確かに、Jリーグのサポーターの平均年齢は40・4歳ということで、明治安田生命さんにすると顧客ターゲットとしては適している人が多いという判断なのかもしれません

秦 そうですね。あとは認知が高まってくると、その次を求められます。例えばマンチェスター・ユナイテッドにAON(エーオン)という企業の胸スポンサーが2013年までついていましたが、2014-15シーズンからは降りて別の企業になりました。これは金額的な云々ではなく、AON社にとっての目的達成、認知の獲得ができたからです。

次なるステップとして商売に直結するプログラムを用意し、あえて胸スポンサーから降りて余った金額を違う所に投資しているわけです。いつまでも胸スポンサーに付けても意味がないですが、とはいえ練習着や看板では維持しつつ、余った金額でマンチェスターの選手・スタッフ全員にライフプランニング・プログラムを提供しています。要は「われわれは、ウェイン・ルーニーのライフプランニング・プログラムをやっています」ということを商材に展開することで「AONはこういうことをやっているんだ」ということが次に繋がるわけですね。

日本ですと、横浜ベイスターズをDeNA社が買収しました。買った瞬間にDeNA社の知名度はすごく高まりましたが、その後をどうするかということですね。

――認知が高まった段階を過ぎたらと、次なる効果を求めることが重要と。実際、不祥事が起こったりすると企業イメージも下がるわけですしね。こうしたスポンサーシップ業界におけるデータ収集においては、競合他社はいるものなのでしょうか?

秦 そうですね、自動認証技術を持っている所はあまりないのではないでしょうか。アプリケーションさえ手に入ればできるので、査定する競合もいますしリサーチする競合もあります。ただ、それを世界規模でやれる企業はいないと思います。例えばマンチェスターのクラブやチェルシーなどはグローバルで動くわけですが、そこに対応可能だというところが差別要因になっていると思いますね。

<つづく>

あわせて読みたい

「広告・マーケティング」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    元オウム死刑囚の帰依心消えた夜

    篠田博之

  2. 2

    中露側との連携に舵切った文政権

    赤池 まさあき

  3. 3

    石破氏「日韓の歴史を学ぶべき」

    石破茂

  4. 4

    日米を敵に回し北朝鮮選んだ韓国

    AbemaTIMES

  5. 5

    「GSOMIA報道は感情的」に反論

    小林よしのり

  6. 6

    韓国暴走か 日本は立場表明せよ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  7. 7

    GSOMIA破棄 米では日本批判なし

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  8. 8

    ユニクロと無印良品の決定的違い

    PRESIDENT Online

  9. 9

    GSOMIA破棄 画策したのは中国か

    文春オンライン

  10. 10

    民主主義を取り戻せ 若者の挑戦

    たかまつなな

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。