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米が「第2次津波」作戦発動 ISの石油輸送車を大量破壊 - 佐々木伸 (星槎大学客員教授)

 パリ同時多発テロの余波が収まらない16日、米軍は過激派組織「イスラム国」(IS)の石油密輸を壊滅する「第2次津波」作戦に踏み切り、石油タンクローリー116台を破壊、組織の経済的な締め上げを加速させた。フランスではバルス首相が「数日内にもテロが再び起きる可能性がある」と発言、緊張が続いている。

対ナチスの軍事作戦に倣う

 ISが弱体化しない大きな理由の1つは豊富な資金を持っていることだ。米国は当初から最大の資金源であった石油の密売に打撃を与えるため、油田や精油所を重点的に空爆した。この攻撃で、最盛期には日量7万バレルを産出し、1日2億円を稼いでいたISの石油生産はいったんは激減した。

 しかしその後、ISは移動式の簡易精油所を使用するなど生産量を盛り返し、現在でも1カ月4000万ドル(約5億円)の密売利益を上げるなど再び最大の資金源となっていた。これらの石油はISが所有する約1000台のタンクローリーでトルコ国境を超えて密売されていた。

 米国はこれまで、密売の実態を把握しながらも、運転手など民間人に被害が出ることを恐れ、タンクローリーを攻撃することは控えてきた。しかしトルコで開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも資金源を断つ重要性が強調されたように、オバマ政権としても一気に石油の密売網を叩く軍事作戦に踏み出すことを決定、16日の実施となった。

 米ニューヨーク・タイムズなどによると、作戦にはトルコのインジルリク空軍機に配備されたばかりのA10対地攻撃機4機とAC130攻撃機2機が参加し、シリア東部デイル・ゾウルのタンクローリーの基地に集まっていた車両を攻撃した。

 米軍は攻撃の1時間前にタンクローリー周辺に攻撃を警告するビラを撒き、運転手を車両から離れさせた上で攻撃したという。この攻撃は第2次世界大戦でナチスが支配していたルーマニアの石油関連施設を攻撃した際の「津波作戦」にちなんで「第2次津波作戦」と名付けられている。

 名付けたのは、9月に米主導の有志連合司令官に就任したジーン・マクファーランド将軍。作戦はパリのテロ事件が起きる前に策定されたが、ISの資金源を断つという米国の強い方針を反映したもので、2000億円を貯め込んでいるとされる同組織にとっても大きな打撃になるかもしれない。

 米国はこの「第2次津波」と並行してISやその分派の幹部の暗殺作戦を推進し、先週に2人を殺害した。

 1人は日本人人質事件でジャーナリストの後藤健二さんら2人を殺害したとされる黒覆面の男、モハメド・エムワジだ。エムワジは通称「ジハーディ・ジョン」と呼ばれたクウェート系の英国人で、西側の人質を殺害するところの動画がネット上で繰り返し公表された。

 もう1人はリビアのIS分派「トリポリ州」の指導者であるウイサム・ズバイディ。ズバイディはISの指導者アルバクル・バグダディが2014年、リビアに分派を創設するために送り込んだ人物。米国は英国と協調して数週間にわたる監視の末、暗殺を実行したという。

ベルギーにテロ拠点か

 こうした米軍の攻撃の一方で、フランス軍も15日、ISの首都であるシリアのラッカ周辺にテロの報復爆撃を加えて断固たる姿勢を示した。しかしバルス仏首相は「数日から数週間以内に再びテロが起きる可能性がある」と警告、市民の恐怖感はなかなか収まりそうにない。

 テロの捜査も進んでおり、死亡した実行犯7人のうち4人の身元が判明。8人目が指名手配されている。実行犯の1人はパリ郊外出身のフランス国籍の男(29)で、2010年ごろから過激化し、12年にはシリアに旅行していた。また何人かはテロの前にIS関係者と暗号で交信していたようだ。

 ここで浮上しているのがベルギー・コネクションだ。実行犯の兄弟はブリュッセルの貧しい移民街モレンビークで暮らしていた。このモレンビークでは、1月のパリのユダヤ系スーパー襲撃犯や、アムステルダムからパリ行きの高速列車内で8月に起きたテロ未遂事件の犯人も同地で銃を入手していた。

 パリのテロ事件はシリアのIS本部の指令に基づいてベルギーを拠点に計画が練られた可能性が一層濃厚になっている。

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