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失敗に終わった新疆政策 失われた中国政府の寛容さ - 岡崎研究所

英フィナンシャルタイムズ紙は10月13日付で、中国の西進政策に関して、北京駐在のトム・ミッチェル記者による、新疆ウイグル自治区の現状についての分析を掲載しています。

自治と寛容の統治から強硬路線への転換

 すなわち、新疆は習近平政権の「新シルクロード」プロジェクトの要である。しかし、新疆は現在、暴動の温床となっており、中国政府のフラストレーションと悩みの種である。それは中国政府の政策がもたらした結果でもある。中国がインフラ整備を通してユーラシア大陸の通商と繁栄の再興を夢見るのであれば、まず新疆を安定させなければならない。しかし今の所、政府は民族の不満を助長しているだけの現行政策を変えるつもりはないようだ。

 新疆は中国にとって極めて重要な資源産出地域である。その上、資源が豊かな中央アジアへの玄関口でもある。そのこともあって、中国政府は新疆に多大な投資を行ってきた。しかし、それは新疆の不満を沈静化することにはならなかった。中央政府は、「民族分裂主義」、「宗教過激派」、「テロリズム」と戦っているというが、これらの暴力行為は政府の戦略に由来すると言う者もいる。1990年代中葉に策定された「七号文件」は、公安主導による宗教統制を強化し、1980年代の自治と寛容を強調する政策から強硬路線の民族政策へと回帰した。政治的弾圧と経済的支援という、硬軟混じりの新しい政策が画定され、今日に至るまで強化されている。

 今日の新疆において、警察と軍の存在感が際立っており、至る所で厳重な警備が敷かれている。2009年7月5日の暴動ですべてが変わり、この地域は暴力の発生と軍事化を繰り返す負のスパイラルに陥ってしまった。ウイグル族の多くの者は標準語である中国語を話せないために、良い仕事を漢族に奪われている。新疆における漢族の割合は、この60年で6パーセントから40パーセントを超えるまでになっている(それでもウイグル族は43パーセントを占めている)。オックスフォード大学のレザ・ハズマスは「硬軟混じりの政策は、教育水準の割に就業機会が少ないことと政治的な代表の欠如というウイグル族社会の二つの主要な不満を解消することに失敗した」と話す。

 王力雄という著名な政府に批判的な人物は、政府の新疆政策は宗教的寛容と政治的自治を強調するウイグル族の中の穏健な声を消滅させるという結果をもたらしたとする。王は「政府は人々を下僕か敵かの二択で考えている。彼らは中間にいる者と接することができない」と話す。

出典:Tom Mitchell,‘China’s Great Game: New frontier, old foes’(Financial Times, October 13, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/60f33cf8-6dae-11e5-8171-ba1968cf791a.html#axzz3oyN90JXv

*   *   *

ムスリム世界との関係占う新疆政策成否

 この論評は、正確な分析であると思います。中国の新疆ウイグル政策決定者は、歪曲された自己中心的な視点の制約を受けており、異文化に対する知識不足という大きな限界を持っています。

 新疆の少数民族問題は、チベットよりはるかに困難です。チベットは本質的にチベットに限定され、国際的広がりを欠きます。しかし、新疆のウイグル族は、民族的にも宗教的にも大きな国際的コネクションを持ち得ますし、現に持ち始めています。さらに、チベット族が628万人なのに対し、ウイグル族は1000万人を越えます。

 中国がさらに西進すれば、その地域に存在する現実の諸問題に関与せざるを得ず、そこでの対立抗争に必然的に巻き込まれることになります。大昔のシルクロードは、中国の富を目指して異邦人が自己責任で中国にやってきたのですが、今度は自分たちが出かけて行こうとしています。中国は最近ロシアのシリア空爆を支持し、支援することを決めたようですが、中国のこの地域の問題への関与の深化と国内でのウイグル族の圧迫の継続は、中国とムスリム世界との関係をさらに複雑化させるでしょう。

 同時に、中国が現行の新疆政策を変えない限り、新疆の状況は悪化し続けるでしょう。しかし、習近平自身、昨年4月に新疆を訪問した際、発展を通じる民政の向上は強調しましたが、新疆政策の根本には手を付ける気配はありませんでした。

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