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- 2015年11月19日 06:35
「地方の問題をわかりやすく伝えたかった」~マンガ「地方は活性化するか否か」作者・こばやしたけし氏インタビュー~

「地域活性化」の問題点が4コマで解説されている 写真一覧
多くの読者から「自分の地元も同じだ」の声
-「地方活性化」という社会的で硬派なテーマを、ポップなキャラクターの4コマで執筆しようと考えたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?
こばやしたけし氏(以下、こばやし):私が住んでいる地域では、少子高齢化、人口減少といった問題に直面しています。こうした問題は、テレビのニュースや新聞などではよく話題になっているのですが、非常に漠然としていてよくわからない。言葉自体は、よく耳にするけれど、実際にはどういう問題なのか、知らない、興味もないという方が多いように感じたのです。
私は高校卒業後、一度故郷を離れ20年ぐらい前に戻ってきたのですが、その当時はそれほどせっぱ詰った状況ではありませんでした。しかし、7~8年ぐらい前から人口減少などの流れが顕著になってきたため、この問題について色々と考えるようになりました。
昨年も「消滅可能性都市」の話が大きな話題になりましたし、国の施策としても「地方創生」が叫ばれています。そうした状況の中で、一般の人にもう少しわかりやすく、この問題を伝えることができないかと考えました。そこで、女子高生のキャラクターを使ったマンガであれば伝わりやすいのではないか、と思い執筆を始めたのです。
-Twitterやはてなブックマークなどの反応では、地方在住者や出身者からの「自分の地元も同じだ」という声が見られました。多くの地方出身者が既視感を感じるような内容になっているわけですが、ネタ集めはどのようにしているのでしょうか。
こばやし:ほぼ実体験ですね。行政が無駄な箱ものをつくったり、中心市街地からどんどん人がいなくなったりという地元での体験がネタになっています。後は、図書館や書店を利用して関連本を読んだり、ネット上に掲載されているコラムや資料にも目を通していますね。
また仕事柄、地元のメディア関係者にも知り合いがいるので、そうした方々から聞いた話を自分の中で咀嚼しながら、まとめています。
-読者からは、どのような反応が寄せられていますか?
こばやし:先程お話しいただいたように、私の地元以外からも「これ、自分の地元のことを言っているんじゃないの?」というニュアンスの意見を多くいただいています。地方から出てきて首都圏で働いている方が、お盆や正月に地元に帰ると、このマンガで描かれているようなことがそのまま起きているという状況だそうです。
ロードサイドに中央資本のお店がたくさん建っていたり、昔ながらの地元の商店街がシャッター通りになってしまったりといった状況は、多くの地域で共通する部分だと思いますね。そのため、「自分の育った地域がそうなるのは寂しい」という気持ちを伝えられる方が多いです。
また、TwitterやFacebookなどで感想をいただいた方の中には、地方の市議会議員などもいました。そうした方々から「議員として何か動かなきゃいけない」という声などもいただいています。
他の地域の成功事例をそのまま当てはめて失敗するケースが多い
-作中でも描かれていますが、地方活性化というと、「とりあえず補助金を投入して、それをどう使うか」という話になりがちです。
こばやし:自治体は補助金が落ちてきたら、「いかにして予算消化するか」しか考えていないように見えますし、行政もそれが目的になってしまっています。「これからこの街をどうするか」というプランが出来ていないという状況がありますよね。
-絵柄は可愛らしいのですが、地方活性化の現状について、「やりっぱなしの行政」と「頼りっぱなしの民間」「全然関心なしの市民」というような辛辣な表現もしています。こうした状況の中で、より生産的な議論をするためには、どのようなことが必要だと思いますか。
こばやし:人口減少などによって地方が衰退していくというのは、問題として認知はされていると思います。しかし、人口が減少していくからといって、すぐに自分の暮らしが不便になるというわけではありません。短い期間で解決する問題でもないので、今後5~10年先を見据えた上で、対策を考える必要があると思います。
もちろん行政は認識していると思うのですが、民間企業や市民も今後の5年~10年先の未来をどうするべきか、を考えることがスタートだと思います。その上で、行政、民間、市民をまとめるのは、選挙で選ばれた市町村議会議員、県議会議員ですから、彼らに積極的に関わってほしいと思いますね。
しかし最近はどこの地域でも選挙の投票率があまりにも低く、そこに住民の無関心さが表れている部分もあると思います。自分の住んでいる町がどうなっていくのか、というのは一番身近な問題であるにも関わらず、現実には関心が薄い。もちろん、こうした問題に興味を持っている方も地方にはいるのですが、やはり一般的にはあまり話題にならないんですよね。そこも変えていく必要があるでしょう。
-安倍政権でも「地方創生」が話題になっていますが、「地方活性化」というのは古くて新しいテーマだと思います。作中にも猫写がありますが、以前にも似たような事業で補助金が出たものの箱ものやウェブサイトを作って最終的に放置みたいなことになってしまうケースもあります。
こばやし:そうですね。私も、いろいろと地方活性化について調べてはいるのですが、なかなか「これだ!」という成功例がないのが現実です。もちろん成功事例もあるのですが、それを他の地域が単純に自分の地域にそのまま持ってきて当てはめてしまい、その結果、失敗してしまうというケースが多いように感じます。
典型的な例がゆるキャラですが、一つの場所でうまくいったからと言って同じことをしても成功するとは限りません。オリジナルを模倣したところで、その地域に当てはまるかというと、中々難しいところもあるので、その地方・地域に特化した何かを探すなり、試行錯誤しながら見つけ出し創りだしていくということが基本だと思います。
「地方活性化」の問題の答えは一つではない
-執筆を始めた当初は、まさか地方創生担当大臣のところまで、届くとは思わなかったでしょうね。
こばやし:確かにそうですね。最初は身近な周りの人たちが共感してくれればいいかなという感じでした。ただ、私の地元だけに留まるテーマではないと思っていたので、設定は架空の地方都市ということにしました。舞台を限定してしまうと、それ以外の地域の人に共感が波及しないと考えたのです。
-WEBでの連載については、今後どのような展開をお考えなのでしょうか。
こばやし:書籍の方が先行してしまっている部分もあるので、WEBもあと5~6話ぐらいで追いついて、書籍の内容が終わったところで、「第一部完」という形にする予定です。
その後は第二部として、キャラクターたちの舞台である架空の都市「みのり市」を活性化するために具体的に活動していく様子を描いていこうと考えています。内容としては、日本全国で箱モノと言われる施設が乱立し、それらがどうして結果を出せずに墓標のようになっているのかというテーマや、選挙離れといった話題にも食い込んでいきたいなと思っています。
-マンガというメディアで、社会問題を扱う上で気をつけていることはありますか? こばやし:あまり批判ばかりが前面に出ないように気を付けています。批判した上で、それに代替するアイデアというか具体的にキャラクターがどうするのか、ということを考えつつエンタメ性を交えながら執筆しています。やはり批判だけで終わってしまうと、あまり人には響かないと思うので。
「地方活性化」の問題の答えは一つではありません。やはり様々な立場の方が試行錯誤しながら進めていくものなので、ある地域で成功しても、それだけが正解とは限らない。そういう難しい問題ですので、一つの問題提起として読者に考えていただきたいと思います。
-最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
こばやし:マンガという媒体は手に取りやすいですし、小中学生から、小さい文字が読みづらいご高齢の方にも読みやすいと思います。幅広い年代の方に読んでいただいて、地方活性化について考えるきっかけになればうれしいですね。



