記事

日本経済の最大の問題点は、持っているカネが眠ってしまったままになっていて、消費や投資に回っていない事だ

このところ、地元をこつこつと歩いて回っている。当然ながら、「何やってるんだ」とのお叱りの声や、「どうなってるの、どうするの」とご心配の声を多く頂戴する。

その一方で、皆さん、今の安倍総理ひとり勝ちと言うべき政治状況は健全ではないとも思っている。政権のやりたい放題を許さない、緊張感ある政治が望ましいのに、あんた達野党は内輪揉めと分裂ばっかり繰り返していて、一体、何をやってるのか。いい加減、まとまって、まともな対抗勢力を作ってほしい、との声を頂く。

アベノミクスは成功していると総理は胸を張るが、町場の皆さんの景気実感は冷え冷えとしている。景気回復なんてどこの話か、といった感じだ。実際、世論調査でも8割の人が「景気回復の実感はない」と答えている。私のような都会の選挙区でもそうなのだから、地方はもっとそうだろう。

実際、直近の経済統計は精彩を欠く。四半期GDPは4-6月期が▲1.6%、7-9月期もマイナスの可能性がある。2期連続のマイナスとなれば、それは通常はリセッション(景気後退期)入りと見なされる。ちなみに昨年の4-6月期から見ると、6四半期の間に4回もマイナス成長を記録した事になり、これではアベノミクスの成功にも疑問符を付けざるを得ないではないか。

その一方で、株価は1万9000円台まで上がり、大企業は史上空前の利益を叩き出している。上が伸びれば下もついてくる、上が良くなれば次第に下にもその恩恵が及ぶ、というのがトリクルダウンの経済政策の考え方なのだが、それが3年経ってもまったく実現していない。上が良くなっても下には恩恵は下りてこない、上と下の格差が拡大するだけというのが現実の姿となっている。

富裕層は資産効果でますますリッチになり、2011年からの2年間で資産1億円以上の富裕層は24%増の100万世帯に増えた。経済規模が拡大していない中で富裕層が増えたのだから、一部の人への富の集中が進んだという事になる。現実に、家庭の収入状況を示す世帯年収の統計を見ると、2004年の約580万円が年々低下し、直近の2013年では約530万円と約50万円も減少、過去10年間で最低の水準になっている。その結果、生活が「苦しい」と感じている世帯の割合は過去最高の62.4%にのぼっている(厚労省国民生活基礎調査)。

ピラミッドの上の方にいる富裕層や大企業だけに恩恵が集中し、ピラミッドの裾野にいる大多数の国民・庶民や中小零細企業は置いてきぼりにされ、広がる格差の中でますます苦しくなる生活にあえいでいる。今や非正規雇用が働く人の4割を占め、フルタイムでも非正規雇用だと平均年収300万円を切る水準、正社員の半分しかない。働いても十分な収入が得られず、結婚もできない、ましてや子どもも持てない、という若者が増えている。シングルマザーだと平均年収は220万円、これで保育園に子どもを預けて働いて、ひとり親で子育てをしている。大多数の国民・庶民にとって安心と希望のもたらされない、余裕のない生活の状況は、GDPの6割を占める個人消費の低迷に跳ねかえって、日本経済が精彩を欠く最大の要因となっている。

日本経済の最大の問題点は、持っているカネが眠ってしまったままになっていて、消費や投資に回っていない事だ。個人金融資産1700兆円、企業の内部留保300兆円(うち現預金だけで230兆円)、巨額のカネが眠ったままになっている。眠ったままのカネが動き、消費や投資として市場に出回るようになれば、おのずから日本経済は回復していく。それがそうなっていないのは、企業にせよ個人にせよ持っている者が現在と将来にわたる不安を払拭できず、手元に積み上がった巨大なカネを放そうとしないからだ。個人金融資産1700兆円の6割を保有する60歳以上の高齢者層が、いつまでも老後の不安を抱えて、びっくりするような額の預金を持ち続け、あげくにそれを振り込め詐欺で巻き上げられているのが典型的なケースと言うべきかもしれない。

ならば、やるべき事は明らかだろう。ピラミッドの上の方にいる大企業や富裕層に恩恵を集中させ、機能しない上から下へのトリクルダウンに期待してきた経済政策の考え方を転換し、むしろピラミッドの裾野を支える中間層や低所得層の家計を支援し、現在と将来にわたる安心と希望をもたらす事で、消費や投資の拡大につなげていく。勝ち組のためのアベノミクスではなく、国民・庶民の側に立ったボトムアップの経済政策を取る事が、結果として実感をともなった本物の景気回復につながっていくのだ。

そのためには、再分配機能の拡充をすべきである。具体的には、マイナンバーによる所得捕捉を前提として、生活の上で不足している必要最低限の所得を国が保障する「日本版ベーシックインカム」(給付付き税額控除)を導入すべきであると考える。今や生活保護世帯は160万世帯にのぼっているが、生活保護水準以下の所得しかない世帯は700万世帯以上と言われている。生活保護の適用を受けると就労意欲を削ぐほどの手厚い援助が受けられ、そうでない残りの540万世帯には何もない、という再分配の歪みが生じている。生活保護や基礎年金といった既存の生活保障の給付施策とのスクラップアンドビルドで、無駄なバラマキを避けながら、世代にかかわらず必要な世帯に必要な額の家計の支援を実現すべきである。それができる制度インフラは整いつつある。

今、2017年4月の消費税率10%への引上げを前に、にわかに軽減税率の導入議論が政府与党内において急ピッチで進められているが、低所得層への逆進性対策と言っているものの、議論されている食料品への軽減税率は富裕層にも低所得層にも等しくその恩恵が及び、富裕層がキャビアを食べても軽減税率となれば、富裕層の恩恵の方が大きくなる可能性もあり、上と下との格差是正にはまったくつながらない。そして、富裕層が本来なら負担できる税収まで取り損なってしまう。0%ならいざ知らず、食料品だけ8%に据え置いても、国民・庶民や低所得層の負担感はほとんど変わらないだろうから、それにより消費減退を食い止める効果があるかは疑わしい。小売店の事務負担も中小零細の商店になればなるほど負担が大きい。専門家は「百害あって一利なし」と誰もが思っている。それよりも私の言う「日本版ベーシックインカム」の方が的確であるのは明らかだろう。

一体、誰のために政治をするのか。勝ち組のためか。国民・庶民のためか。ピラミッドの裾野を支える国民・庶民の側に立った政治を行なう、トリクルダウンではなく、ボトムアップの経済政策で景気回復を実現する、そうした立ち位置を持った国民政党が求められていると私は思う。それは同時に「大きな政府」の社会主義ではなく、効率的な政府と、市場での競争を重視する、いわゆる改革派のスタンスと両立させなければならない。私はそれをかねてから「民権」と呼んでいる。

国民・庶民のための「民権」政治。これこそが、いよいよ始まる野党の結集の旗印であるべきだと思っている。結集のための結集では意味がない。そして、政治家の独りよがりではなく、今、国民が何を求めているかを感じ取り、国民に響くメッセージを打ち出さなければならない。それができれば、今、私達が見ている「一強多弱」の政治の風景も、ガラッと一変したものになるだろう。

あわせて読みたい

「アベノミクス」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。