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米債格下げにより起こりうること・・・

為替千里眼、改めて今週も1週間お疲れ様でした。週末のNY市場終了後にS&Pより公表された米債のAA+への格下げについては、市場の反応は依然不透明ではありますが、バークレイズでは「元々S&Pからは格下げの可能性があったため、市場もそのリスクをある程度織り込んでいる」との見方を示しており、実際に債券市場が「格下げ」により逃避先資産の選択肢から除外するかどうか、可能性は低いとの見解だそうです。先の債務上限引上げ問題に関し、民主・共和両党の妥協案では、10年間で2兆4000億USDの歳出削減を実行する内容ではありましたが、S&Pは元々4兆USDの財政赤字削減および政府債務/GDP比率の安定が必要だと示しており、格下げに踏み切る可能性が高いということは当ブログでもご紹介してきたことなので、逆にS&Pが市場の混乱を避けるために週末の市場終了後に公表したことは、せめてもの配慮だったのかもしれません。

その他の格付け会社に関しては、ムーディーズがトリプルAで格付け維持を確認しているものの、アウトルックはネガティブ。フィッチも2日の時点で与野党の動意は米国のデフォルトリスクが非常に低いことを意味し、トリプルA格付けに見合うとの見解を示しておりますが、こちらも一段の財政再建策が必要との認識も示し、追加的な財政引締め措置が2013年に採用されない場合や景気見通しが大幅に悪化した場合は格下げリスクが浮上するとの見解を示しておりました。既に景気見通しについては悪化の兆候が見られつつありますので、早晩格下げされる可能性が現時点では高いと見ておくべきかもしれませんが、実際に今回のS&Pによる格下げが市場にどのような影響を及ぼすかは非常に不透明であり、未知数でもありますので、その点はいくつか懸念されるところを踏まえて、来週の動意に備えておきたいと思います。

CFTC IMM positions(August 2, 2011)
JPY:Long78,855  Short20,022
EUR:Long58,313  Short56,550
GBP:Long43,266  Short38,127
CAD:Long57,482  Short16,445
CHF:Long25,593  Short13,252
AUD:Long91,352  Short15,754
NZD:Long25,808  Short 1,682

※先週データはこちら

オージーロングに次いで円ロングが積み上がっているというのもまた違和感を感じる部分ではありますが、本邦当局者が口を揃えて発言する「投機的な動き」ということではなく、「逃避的な動き」というのが実際のところで、現状の世界経済の後退懸念、欧州債務危機、米債務問題、諸々を考慮しても投機的ということだけに尽きないのが実情であります。先週は、ドル売りというよりかは回避動意が台頭した1週間でもありましたので、ユーロおよびポンド、高ベータとなるオージーなどは軒並みロングが減少もしくはショートが増加している状況で、特に欧州通貨はネッティングするとほぼフラットという状態になりつつあります。消去法的にオージーが選好されていただけに、ロングが9万枚まで膨れ上がっておりましたが、週末に掛けての急落でロングは相当に吐き出されたと思われ、私個人のロングも吐き出されてしまいました(苦笑)。

US10Y Treasury Notes
リンク先を見る

週末の格下げにより、今後長めの債券がどのようになるのかが争点となりそうです。教科書的には、住宅ローンなどの米国債の金利に連動するような他の借入れコストが上昇し、米経済を一段と圧迫することは容易に想像できますが、皮肉にも来週には3・10・30年の四半期の定例入札が控えており、一段と債券市場の動きが注目されるところです。債務上限の引上げが可決され、四半期入札の延期もしくは中止というリスクだけは避けられたような状況にありますのでキャッシュフロー的な問題(8/15に大型償還を控えている)は、ひとまず大丈夫そうですが、プレミアムの上昇で利回りが急騰するようなことになれば、市場も大荒れになる恐れがあります。

米債の格下げにより既に中国や日本などの大型債権国の動きなども慌しくなってくるかもしれませんが、その他米国債の格下げによりトリプルA格のGSE関連のエージェンシー債の格付けにも影響を及ぼす可能性があり、生保や年金基金などが保有するこれらに関しても、ポートフォリオの入れ替えが加速する可能性もあります。まぁ、その代替となりうる証券が殆どないため、たとえ格下げされても急激に解約売りが加速することはないと見られますが、一部のMMFなどは格付け条件などが設定されているものもあるかもしれませんので、解約等の急増で米政府関連証券の売却に迫られるのではないかという不安感が広がるのは致し方ないことかもしれません。

現状はどのような反応に至るのか、憶測の域でしかありませんが、今回の格下げがネガティブな材料ということだけは明らかですし、借入れコストの上昇が米経済に多大な影響を及ぼすことは言うまでもありませんので、こうしたアプローチから、市場が一段と不透明感を募らせることとなると、再び回避的な動きが強まり、円が選好されやすい地合いが醸成される可能性が高いと見ております。

では、今週も1週間ありがとうございました。
次週もよろしくお願いします。

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