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「空母いぶき」のリアリティ

かわぐちかいじ氏のマンガ、「空母いぶき」が1〜2巻が販売になっております。

お話は自衛隊が軽空母を導入、ざっくり言えば海自がフネを、空自が搭載機のF-35Bを運用する、艦長は空自のファイターパイロット上がりです。
「いぶき」は「いずも」級をベースに開発された軽空母で、スキージャンプ台を有しております。


フネ自体の設定に問題はありません。サイズ的にはF-35Bを運用するに足ります。僚艦へのいずもの燃料補給用のタンクなどを取り払えば、艦内スペースは大幅に広くなります。いぶきがそうだという描写はありませんが、そうでないとハンガーの容積が足りなくなるでしょう。
また艦首ソナーは必要ありません、作品中でソナーを撤去しているか否かはわかりませんが、艦首の形状をみるといずもと同じなので、ソナーを装備している可能性もあります。

運用面で言えばかなり怪しい部分があります。まず空母一隻では常に稼働はできません。本来3隻、少なくとも2隻は必要です。また稼働率をあげるのであれば航空機搭乗員を含めて、2クルー制にする手がありますが、今でさえ人で不足の海自には贅沢過ぎる選択になるでしょう。搭載機も然りです、軽空母といえども空母3隻になればかなりの予算と人員が必要になります。それを現在のレベルの防衛費で賄うのはかなりきついでしょう。F-35Bに関してはF-15Jの後継の一部として空自で調達するという選択もありますが。

またF-35Bの運用も空母自体でやることには問題があります。1隻であれば十数機しか機体がない。教導用やスペアの機体を入れても20機程度でしょう。運用コスト上効率的じゃありません。

かつての英軍は空軍と海軍のハリアー部隊を統合しておりましたが、そのような運用がよろしいのではないでしょうか。基本的には2〜3個飛行隊を陸上基地で運用、それを軽空母、揚陸艦、いずも級などで運用できるようにした方が柔軟に運用できるのではないでしょうか。

空母には専門の整備部隊を常駐させ、それ以外の艦では燃料・弾薬の補給だけでもよろしいでしょう。また地上の整備部隊は島嶼などにも展開できるような用意をしておく。つまりヘリ部隊のような運用を想定しておく。

あるいは空母は建造せず、機能をもった揚陸艦やいずも級だけでアドホック的に空母して使用する。

これならば空母が1隻でもある程度、艦載機を運用できるのではないでしょうか。例えば空母を3隻作って全てにF-35Bを搭載するよりもコスト的に安いはずです。


作品中で気になったのが、早期警戒能力です。少なくともこれまで固定翼の早期警戒機、あるいは早期警戒ヘリが登場しておりません。

早期警戒機がなければ、敵の先制攻撃を受ける事になります。それが嫌ならばE-2CやE-2D、E-767の下でしか空母部隊が運用できないことになるでしょう。だとすると空母の能力を限定的にしか使用できません。

現実的な案としては英海軍の用にMCH-101にロールオン・ロールオフタイプの早期警戒システムを搭載して運用することでしょう。これが常識的に考えて2〜4セットと相応のMCH-101、あるいは新たに調達されるUH-Xがこの派生型であればUH-101でしょうか、それらが必要です。

早期警戒ヘリはDDHにも護衛艦隊にも必要な装備であり、これがあまり話題に上らないのは不思議な話です。せっかくヘリ空母があるのですから導入すべきです。

作品中では「いぶき」を中心とする機動部隊にDDHがいませんが、早期警戒システムとMCH-101、さらに対潜ヘリを搭載したいずも級を随伴させれば機動部隊の能力は格段に向上するでしょう。いずも級ならば艦隊に給油もできるし、万が一空母が被弾しても、燃料補給や弾薬の補給の体制を整えておけば、継戦能力が維持でき、またいざというときに戦闘機を失わないための保険としても有用でしょう。さらにはF-35Bの予備機を搭載しておくことも可能でしょう。

実際問題として防衛予算と人員(これも予算問題に含まれますが)の上限を考えると空母導入はかなりハードルが高いでしょう。むしろ先述のようにVTOL機を基本的に地上で運用し、限定的に空母能力を有した、将来型の揚陸艦やDDHなどを利用して局部的に空母的に運用するのが現実的なところではないでしょうか。


とはいえ、今後作品がどの様は方向に展開するか楽しみです。
このような作品を通じて頭の体操をしてみることも有用ではないでしょうか。












朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】〜国内企業のライセンス生産守る為?〜
http://japan-indepth.jp/?p=22467

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