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アナ雪とブルージャスミン

「アナと雪の女王」が恐ろしいほどの大ヒットである。観客動員数2000万人に迫る勢い。尋常な数字ではない。もはや社会現象である。エンディングテーマを歌ったメイ・ジェイのドキュメンタリーを見たが1分刻みのスケジュールで大変なことになっている。

実は私の12歳の娘もご多聞にもれずこのブームに巻き込まれた。娘は小学生なのに映画監督志望などと公言している。1回目は妻と鑑賞し、2回目は私と日本橋の映画館で見た。2回目にも関わらず上映後、娘は興奮し、帰りの地下鉄の中で「レリゴー」を鼻歌で歌って上機嫌である。アメリカ製のミュージカル映画が大ヒットしたのは、何十年ぶりのことだろう。それもアニメーションという形で甦ってくるなんて誰が想像しただろう。

映画館はかつて「幸せになりに行くところ」だった。観客の日頃の憂さや不合理をエンターテイメント映画でしばし晴らす。映画はそういう機能を持っていた。「アナ~」もまさに、そういうディズニー的機能を十分に持っていた。見事なハッピーエンディング。娯楽はこう来なくちゃ。と思った方も多いだろう。

しかし鑑賞後、数日経って私はある提案を家族にする。
「来週の週末は「ブルー・ジャスミン」を見に行かないか。」
「ブルー・ジャスミン」・・・七〇歳越えのウディ・アレン監督の映画である。NYのセレブ夫婦がいる。幸せな日々を送っているが、夫はある日、経済事件を起しFBIに逮捕されてしまう。妻のケイト・ブランシェットは失意のままLAの義理の妹のところに転がり込む。セレブライフを捨てられない姉。貧乏だけど様々な男性との恋を楽しむ妹。・・・富と幸せ、人生の悲哀を描くほろ苦いコメディドラマであった。

私は「ハッピーエンディングだけが人生じゃないよ。」「セレブライフを目指しても大変なことが起こることもあるよ。」などの考えを娘に押し付けていたのかもしれないが、ちょっとこれが12歳の娘に理解できるのかな?というある種残酷な実験的な意味をもって家族でこの映画を見に行ったのだった。

上映後、待ちかねたように私は聞いた。「どうだった?」・・・娘は「面白かった・・・。」と放心したように語った。「これが理解できるんだ。」娘はごく普通の小学生だが理解できるということ自体が私にとって非常に驚きだった。

そういえば私達も小学校高学年になると怪獣映画など目もくれず大人用映画を見に行っいた。鑑賞がある種のトラウマになった大人用作品もある。でも映画やテレビはそういうものだった。世界を知るある種の道具だった。娘にとっては「ブルージャスミン」はある種のトラウマになってしまったかもしれないが、これも大事な映像体験であったと思うのだ。ちなみに娘はいま白黒映画、子役のテータム・オニールとライアン・オニール(実親子)が活躍する詐欺師物語「ペーパームーン」など古い映画に夢中である。

ところでかつてこんなことを言われた事がある。「あなたの作る番組は難しすぎる。」私が制作した番組の一部内容が難解だというのだ。この言葉を断片的に語ったり、それをどう解釈するかは一筋縄では行かない問題だが、(製作者の勝手に想定する様な)子供用・知的好奇心があまりない層のために作ったアタマを使わないで見る様な映画やテレビが果たして本当に面白いのか?テレビの可能性を広げる番組になるのだろうか?など疑問が湧いてくる。人間の感性や理解力は想像を絶する広さと深さと繊細さを持っていると思うからだ。もちろんこの世界、玉石混合状態が前提になるのだが。

「高尚・高級・難解なことを横町のオバサンにも解りやすい言葉で語れ!」入社後、若手社員の私はある先輩から毎日の様に言われた。また「困難・難解なテーマを自分から避けるのはやめろ!そこに宝の山がある事もある。」厳しかったが良い先輩だった。

「アナ~」も出来からいってターゲットとされる子供層のためだけにに作ったとは到底思えない。劇場では大人の観客も多かった。これはCGアニメーションであるが、考えに考えて作り込んだクオリティの高い大人の鑑賞にも耐える一級のミュージカル作品だ。また子供の感性も一秒もバカにしていない。むしろ子供でしか持っていない鋭い感じ方にも呼応して制作してると思うのだ。

勝手に想定したターゲットに向けて作ることの製作者にありがちな危うさをこの体験で感じた。もっと観客・視聴者の感性・理解力を信じていたい。

ところで娘は、「ペーパームーン」観賞後、同じテータム・オニール主演の「がんばれベアーズ」を何度も観賞していた。あの少年野球映画は子供用映画の皮を被った大人の観賞にも耐えうる上等な勝負・チーム・人間の物語であった。そして今娘はあの「ブルージャスミン」のレンタルがいつ開始されるのかを非常に気にしている。明日TSUTAYAに聞いてみようか。それともいっそのことウディ・アレンのNY恋愛物語「アニー・ホール」を見せちゃおうか。

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