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明石家さんまと動物映像

明石屋さんまさんの秘密について書くのは、さんまさんの神秘性をさらけ出す様な気がして少々ためらわれるが、今回はさんまさんのイメージを固定する話でもなく、傷つけるものでもないと判断して、ちょっと書いてみることにする。

あの方は個人的に実に映画・ドキュメンタリーが大好きである。映画は玉石混合、「恋の渦」からジブリまで基本何でも見るが、お察しの通りアメリカ映画・スポーツ映画好きである。特にクオリティに定評があるアメリカ野球映画は古いものから新しいものまで一冊の本が書けるくらい見ている。近年ではFIレーサー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダの友情と死闘を描いた「ラッシュ」に感嘆し、その勢いでニキ・ラウダのドキュメンタリーまでも全て観尽くしてしまった。また、当然さんまさんは笑いの人であるのでコメディにはかなりのこだわりと志向性がある。

ウディ・アレンものやスティーブ・マーチン出演の「バックマン家の人々」が大好きだ。軽妙洒脱な会話の中に人間の滑稽な本質が表現されているものが好きな様だ。「ラッシュ」と「バックマン家の人々」そして宇宙船奇跡の生還映画「アポロ13」が同じロン・ハワードという一人の監督の手によるものであることをそっとお教えしたときは、「なんでや?」としばらく考え込んでいたが。研究好きなのだ。

一方、ドキュメンタリーはどうか?実はBBCやディスカバリーチャンネルの制作した本格的動物ドキュメンタリーの鬼のようなマニア・おたくなのである。BS・CS放送はもちろんDVDも大量に購入して、現存するものは、凡作・名作を含めてすべてくまなく見ている。したがって世界の動物や秘境やハンターに関する知識・うんちくは驚くべきものがある。

マサイ族のハンターがどうやって獲物をしとめるか?詳細に渡って微に入り細に入り話せる。なぜそうなったのかは解らないが、ずいぶん前に私が世界の動物ドキュメンタリーを集めさんまさんとスペシャルを2本製作したときに、動物映像に異常に興奮していたことを思い出す。あれがきっかけとは言い切れないが何かの刺激を与えてしまったのかもしれない。

ところで解剖学者の養老孟司さんが「唯脳論」という著作の中で「古代、人間は洞窟の中で生きていたが、現在は自分の脳と自らの脳が作り出した世界の中に生きている。」と書いていた。自然の猛威・危険な野生動物のコントロールに少しずつ成功し、完全な人工世界の中でほとんど生きている。高層ビル、高速道路、ゴルフコース、コンビニ、コンサート、ディズニーランド・・・これはすべて人間の脳が生み出したものだ。特に都市生活者は完全な人工世界に生きる。

すると何が起こるのか?逆に自然を求めて、秘境や自然現象や野生動物の生態を克明に捉えた映像を見たくなる。こうした映像はさんまさんのみならず現代人の脳に何かかつて洞窟で暮らしていた時の原始的なインパクトを与えるのかもしれない。一方これは私の推論だが、さんまさんの愛好するサッカー等の一部のスポーツも生物としての人間の超人的な能力を捉えるという意味では現代人に人間の原始的な能力を喚起させる力があるのかもしれない。だからあれだけの人が熱狂できるとも言えるではないだろうか。

私は「世界まる見え!テレビ特捜部」を制作していたので大量の動物ドキュメンタリーを買い付け、専門家にも会った。英国・米国には驚くべき動物撮影のプロがおり、世界中に売れるので予算も時間もかける。1時間番組の為に5年かける事もある。有名なのは、ケンブリッジで動物学を学んだ元BBCの英国のディビッド・アッテンボロー卿で、まさに開拓者。色々な画期的撮影方法も生みだしている。しかも楽しませる事に執着した本物のテレビマンだった。ただし彼のドキュメンタリーだけは世界唯一一秒もカットできない。動物撮影で英国女王から勲章を貰ったのは世界中で彼だけだ。

ところでちょっと前NHKが「巨大イカ」を捉えたと言って大騒ぎになり、ネットでも騒ぎになり、本場英国に売り込もうとしている様だが、一流動物モノを見なれた英国の視聴者の観賞に果たして耐えるのだろうか?わたしには、「巨大イカブーム」がかつてのウーパールーパーやエリマキトカゲと同じ一過性のブームに過ぎないとしか思われないのだが。しかも、世界には巨大生物映像がイカを含めて山ほどある。まあNHKがたまに素晴らしい動物ドキュメンタリーを撮るのは素晴らしいし、続けてもらいたいと思うのだが。

ここで本論に入る。先日、さんまさんと話していたら携帯をいじりながらこんな事を突然言った。
「もうしばらくしたら、動物・生物も撮り尽くしてしまうんやろなあ?」
つまりさんまさんは動物ドキュメンタリーが将来絶滅すると予言したのだ。
私はあの野生動物映像マニアだから言える正に本質を突いた一言だと思った。

年々、驚くべき動物を描いた作品が年々減っているのは確かだ。撮影機材や方向はより進歩しているのだが。映画劇場での上映にも耐えられる作品も増えた。ただ、時代を画する様な作品は減っている。
おそらくBBCの動物自然部門も大所帯なので困ってるのは間違いない。人間は一度目にしたものは、滅多にもう一度見ようとしないからだ。かつて彼らは山のような名シーンを撮ってきた。

熊が川のぼりする鮭に手づかみで食らうシーン。川を渡ろうとする巨大な群れの水牛群が獰猛なワニに襲われるシーン。アッテンボロー卿が軽量飛行機で撮影に成功した空中移動撮影の渡り鳥の一群。アフリカの巨大蟻塚の内部の驚くべき構造。南アフリカの空中を飛ぶ巨大鮫。深海生物の信じられない姿の数々・・・撮影に膨大な努力と知恵と年月と予算がかかっても、人間はどんどん映像を消費する。やがて近い将来、野生動物を撮り尽くしてしまうだろう・・・さんまさんはこう予言している。予測できる近未来の様子だが、野生動物の撮影に命をかけて来た人達には大問題だ。

同じことは「秘境・異国ドキュメンタリー」についても言える。異国情緒(エキゾチズム)は映画・テレビに取って最高の武器だった。NHKの「シルクロード」に衝撃を覚えてから、日本中のテレビマン達は「秘境・異国」を先を争う様に撮り続けた。バラエティ番組でもやりにやった。やがて地球は掘りつくした金鉱の様になり、「秘境・異国映像」は滅多に見られなくなった。あるいは現地に住む日本人を捜しに行くとか長期滞在するとか言う「企画性」を持たせなければならなくなった。まあそれも時代の流れだろう。

「ネタ切れ」。これはメディアが持っている宿命だ。それをただ嘆いても仕様がない。「見たことないもの」を人間は見たがるからだ。映画創世記。フランスでは工場の出口から仕事の終わった人がたくさん出てくるシーンが驚くほどの観客を集めた。ほとんどの人はその光景を見たことがなかったからである。

そして、現代TUBEは10万回再生された素人からの投稿映像に100万円を賞金として与えていたことがあった。スノボーで信じられな曲技を見せる素人。家庭内で起こる巧妙なドッキリ。これも観たことがないものを見せるためである。いまはこの懸賞制度はやめているみたいだが、これも映像がパターン化することによる新鮮さの喪失を避けられなかったのだ。

しかし、地球上では、今も「脳」を駆使して人間たちが様々な活動をしている。良いことも悪いことも。優秀なディレクターや出演者がその技を駆使したり、最新テクノロジーを駆使すれば、まだまだ「見たことがない」映像が生まれてくるのだろう。

1212年に書かれたと言われる方丈記は「ゆく河の流れは絶えずしてしかも元の水に非ず。よどみに浮かぶうたかたはかつ消え、かつ結びて久しくとどまりたるためしなし。」と書いているが、どんな最強のコンテンツもやがては消滅する運命にある。また全く予期しないところから強力なコンテンツが生まれてくる。これはすでに800年前に鴨長明が予言していたのかもしれない。

ただ野性や自然映像が苦しくなりつつある今、私の予言だとスポーツと世界で通用するドラマが今後隆盛して来ると思われるのだが。明石屋さんまさんはこの状況をかなり残念がると思うのだが。

(了)

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