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MRJ初飛行。 日本の航空産業の行方

やっとMRJが初飛行を行いました。

何はともあれ、という感じです。
初めてのパリ航空ショーでは、日本大使公邸で開催したレセプショを開くも潜在顧客もプレスも招待せずに日本の関係者ばかりで飲み食いしており、当事者意識の無さに呆れましたが、その後意識改革もあって、なんとかここまで来たというところでしょうか。

重工本体ではなく、三菱航空機として独立させたのも功を奏したのでしょう。

前世紀、後半に日本で航空産業が育たたなかったのは、経産省の作戦ミスと防衛でリスクのない商売に慣れた業界の体質が大きな要因だったでしょう。
航空機以外でも売れるものは多数ありましたし、航空機は防衛庁が無リスクで全量買い上げてくれる。それは企業努力せずに、膨れ上がるGDPにスライドして売上があってきた。これでスポイルされて当然です。

リスクを負って、航空機で勝負する必要も薄い時代でした。

その昔747の開発でつまずいたボーイングが日本に737の身売りを打診してきたことがありましたが、あの時それを受け入れていれば今頃ボーング、エアバスに継いで1極となっていた可能性もないもでないでしょう。エンブラエルですらあそこまで成長したのですから。

ところが日本の官僚にも業界にもそのような度胸は無かったわけです。

軍用機が輸出できない我が国ですから、民間機に特化すればよかったわけです。
それをおこなっていれば、今頃航空産業の姿は大きく変わっていたでしょう。
そうであれば、防衛産業もマーケットを意識した製品づくりを行えたのではないでしょうか。

対して欧州には強い危機感がありました。独自の旅客機メーカーがなければアメリカにやられる。多分エアバスがなければ、今頃どこの国もボーイングの言い値で旅客機を買わざるをえなかったでしょう。であれば、これほど海外旅行が手軽にはなっていなかったでしょう。

そのエアバスは30年もかけて税金じゃぶじゃぶ使って、どうにか商売になるところまで成長しました。そのくらいの負担は我が国だってできたはずです。くだらない箱物に使う予算があれば航空産業に出す補助金なんて安いもんでした。ところが乗数効果も期待できない土建にばらまいて無駄遣いをして、今の借金の山です。


また航空機メーカ−はボーイングやエアバスなどの下請け仕事で潤ってきましたらから、ますます自分でリスクを取って商売をするという気質が日本の航空機メーカーからなくなり、防衛費が下がってきても官需にしがみつく体質が染み付いてしました。

こんな体質ですから、防衛省向けの機体でもまともなものができない。何しろどんなクズをつくっても天下りさえ受けいれれば買い取ってくれるわけです。リスクがない。イスラエルみたいに常に戦争をしているわけでもなく、実戦で機体が使用されるなんて運用側もサラサラ考えていない。

そんな状態で世界一線の航空機が開発できるでしょうか。まともな思考力がある人間ならば、大本営発表的な、自衛隊の兵器の能力を疑いたくなるのが普通でしょう。

川重はC-2の民間転用を未だに謳っていますが、それは無理です。市場で売るためのMRJは機体開発と平行して滞空・型式証明を取る作業をしてきましたが、苦戦の連続で多額の費用をかけてきました。多くの外国製コンポーネントを採用しているMRJでもこんな状態です。

はじめから市場で売るつもりもなく、無駄に国産コンポーネントを使用した機体でそれが可能でしょうか。更に申せば、完成してから滞空・型式証明をとるとなると何倍もコストが掛かるのが普通です。
MRJよりも遥かにセールス機数が少ないであろう、C-2民間転用機にそこまでカネを掛けるでしょうか。
しかも間違って10機ぐらい売れたら大変です。採算分岐は完全に赤字、そこでも機体の寿命が尽きるまでアフターケアをしなければならない。YS-11で嫌というほど体験した悪夢の再現です。

そんなことも知らずに、C-2の民間転用機は世界で引く手あまただと大騒ぎするのは、リテラシーの欠如です。
それが中学生ぐらいまでならともかく、技術愛国心に燃えたいい歳した大人が信じているのは痛すぎる光景です。まあ、その手の人たちに限って事情通という自意識が高かったり、選民意識をもっていたりするので大変です。

MRJで三菱重工の航空宇宙部門は市場での厳しい現実に直面し、そこで売れる機体をつくるべく奮闘してきました。日本の航空産業にとってこれは大きな財産です。MRJが成功し、後に続く機体、後に続く企業が出てきて欲しいものです。

陸自のUH-XでエアバスのX9が選定されていれば、ヘリの分野でも市場参入が加速され、売上も大きく伸びたでしょう。UH-Xの選定には政治的な介入があったとの声もききます。多分その通りでしょう。要求されるものが当初と全く異なっていました。

ですが、政治的介入があったとすればそれは極めて大きな失敗でした。日本のヘリ産業の遅滞を招くだけではなく、日本はゲームのルールを途中で変えるアンフェアで信用出来ない国であるというイメージを強く諸外国、ことに欧州に与えました。
一同失った信用を回復することは容易ではありません。
また、今後欧州大陸最大の防衛航空宇宙企業であるエアバスから意趣返し受ける可能でもあります。

航空産業よりも日本の政界や官界のセンスや常識により問題があるように思えます。

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