- 2015年11月11日 22:44
「小中学生にお薦めする○冊」の欺瞞と、それでもオススメする10冊
1/2「小中学生にお薦めする○冊」を見かけるが、舐めてるだろ。それは大人のエゴイズムの押し付けにすぎぬ。選者のノスタルジックなブックリストであって、今それを手にする人を想像していない。そんな大人の自己満足を、子どもは正しく見抜いてる。
どうしてそんなに言えるのか? わたし自身が薦めてきたから。『モモ』であれ『星の王子さま』であれ、読まない。考えてもみろ、学校だけでいっぱいで、動画やラインやゲームを無理やり詰め込んでいる生活に、『モモ』読む時間があるものか。それな! それこそがエンデが描いたカリカチュアなのだが、気づくためには読むしかないという自家撞着に陥る。
さもなきゃ逆に考えろ、「愛読書はエンデです」なんて言う小学生がいたら気になるだろ。ふだん何してるの? ポーズなの? 本気なら、本気で親の顔が見たい。どうやって培養したのか知りたい。「愛読書は西村寿行」だったわたしには、得がたい世界だ。
お薦めされる人は、自分より少し若いだけであって、毎日があり、学校があり、好きなもの、苦手なもの、まだ知らない世界がある。だから、その人の興味と世界を考慮せず、単純に「面白くてタメになる」じゃ読むわけがない。その人よりも、少しだけ年齢と経験がある分、「自分にとって」どう面白くて、「自分の経験上」どうタメになったかを語らない限り、ただの学校推薦図書リストと変わらない。
だから、導線が要るんだよ。彼・彼女の興味を、「この一冊」に結びつけるための橋渡しが大人の役目なんだよ。もちろん放っておいても読むやつは読むし、読まないやつは読まない。でも、もったいないなぁ、と思うのなら、そういう理由となる「自分の経験」を語れ。その一冊で世界が変わって見えたのなら、使用前・使用後の自分を出せ。それが琴線に触れたなら、後は勝手に読むだろう。
あるいは、彼・彼女の興味を、本の世界につなげる見晴らしのいいところに連れて行くのが大人の役目なんだよ。もちろん自力で見つける輩もいる(そういう自助努力を推す大人もいる)。でも、その獣道よりこの王道を知っておいても損はないと思うのなら、語れよ、こっちの道は旨いぞと。それが好きなら、これを読めと。熱っぽく「好き」を語るんだ。夢中になって生きる姿を見せることは、大人の役目なのだから。
ここに挙げるリストは、わが子や周りにオススメして、反応の良かったもの。わたしの「好き」を熱く(暑苦しく?)語り、うまくノってもらえたもの。だから万人ウケもしない代わりに、その人に向けた導線が沢山あるリストと見てもらえばいい。
■死とセックス
人生においてかなり重要なのに、教育課程で軽く扱われているのは次の三つ、「死」「セックス」「税金」だ。税金は高校で簿記をやればいいが、前二つはこれを薦める。
まず、宮崎学『死を食べる』だ。動物の死の直後から土に還るまでを定点撮影した写真集で、キツネの死骸に蝿が群がり、蛆が湧き、その蛆を食べるための獣が訪れる様子が順に展開される。いわば九相図の動物版だな。どんな死も、誰かが食べてしまうということがわかる。蛙から鯨まで、さまざまな死の変化を並べることで、「死とは、誰かに食べられる存在になること」、そいつを裏返して「生きるとは、誰かの死を食べること」、さらに「死を食べている私も死ぬ」という、シンプルな真実に行き当たる。
リンク先を見る 次はピーター・メイル著『ぼくどこからきたの?』だ。あるがままの命の話で、ごまかし、妥協、一切なし。男と女の違いから始まって、セックスとは? 赤ちゃんができるとは? 子どもの質問に、真正面から答えている。親子で読めて、きちんと話し合える。生々しすぎる描写ではなく、かといって抽象に逃げない。ひと通り読んでから、避妊の方法、性感染症の情報と、十代の妊娠の話を補足する。セックスはシンプルだ。そして、死と性と食はつながっている。これはセットで読んで欲しい。
■サイエンスとノンフィクション
世のお薦めリストは、なぜか小説・物語が多い。これは、お薦めするほうに理由がある。いわゆる「本が好きな人」の「本」とは、小説を指すことが多いから。なので、小説や物語に埋め尽くされたリストは残念至極なのだが、わたしも胸を張れぬ。「コレ!」という奴が出てこないから。学研まんがシリーズや、まんが歴史シリーズは分量が多いので、ここではとっかかりとなる本を選んだ。「写真から入る」は大事、エビデンスであり、想像力のブースターなのだから。
リンク先を見る サイエンス代表として、『パワーズ・オブ・テン』を挙げる。公園で昼寝をしている姿から、10倍、100倍、1000倍と、どんどんカメラを引いていって、最後は10億光年離れたところからの映像を見せる。そして、逆に1/10、1/100、1/1000と、どんどん縮小していって、素粒子レベルの世界から見せてくれる。スケールによって見える世界が一変するのに、極大と極小が近似するという不思議。センス・オブ・ワンダーを見える化した、稀有な一冊。
リンク先を見る ノンフィクションでは開高健『オーパ!』の反応が良かった。「オーパ!(Opa!)」とは、驚いたとき、感嘆したときの「うわっ」「すげぇ」に相当するブラジルの人の言葉で、タイトルどおり驚愕と瞠目の連続なり。釣竿を手にブラジルを旅した紀行文+写真集で、食、色彩、混沌、森、未明、雷雨、蕩尽、あらゆる描写と映像が読み手を圧倒する。わたしもそうだったが、「釣りが好き」「ルアーフィッシングに興味あり」という間口から入ると、体長5m体重200kgのピラルク釣りでのけぞって、ピラーニャは水面をバシャバシャ叩いて呼ぶ件で、釣りの本質を再考させられる。巨大から微小まで、生あるものの強さ儚さを見る一冊。



