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ロシア機墜落はISのテロが濃厚 分派を使った国際作戦に着手か - 佐々木伸 /星槎大学客員教授

10月末にエジプト・シナイ半島で起きたロシア旅客機墜落は過激派組織「イスラム国」(IS)の分派「シナイ州」が爆発物を機内に持ち込んで爆破させたテロであることが濃厚になった。ISが各地の分派組織を使った国際テロに本格的に乗り出したのではないかと警戒を呼んでいる。

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時限装置付き爆弾か

 エジプト政府を中心とする調査団はボイスレコーダーを解析するなどテロと事故の両面で調査を進めている。調査団は現在のところ、「雑音が記録されていた」としながらも、テロの特定は避けている。慎重なのは、外貨の大きな収入源である観光産業に悪影響が及ぶのを懸念していることが背景にある。

 しかし英政府は4日、「テロによる可能性がかなりある」(ハモンド外相)としてシナイ半島のリゾート地シャルムエルシェイクと英国との航空便の運航を停止、同地に滞在していた英観光客約2万人の帰国作戦を実施中だ。観光客は帰国便ではスーツケースなどに爆弾が仕掛けられるのを防ぐため、小さな手荷物の携行だけが認められた。

 この英国の発表に続いてオバマ米大統領がテロの可能性のあると言明、プーチン大統領もロシアとエジプトを結ぶすべての旅客航空便の運航を停止すると決定し、約9万人の観光客の帰国を急いでいる。オランダやドイツなど欧州の主要な航空会社もシャルムエルシェイクとの航空便の飛行を停止した。

 各国のこうした決定は爆発物が機内で爆発したテロが濃厚になったための措置だ。フランスの国営テレビはボイスレコーダーを解析している専門家の話として、「飛行中に突然激しい爆発音が響き何も聞こえなくなった」とテロの可能性が高いとの見方を示した。

 ロシアのコメルサント紙によると、同機は空中で3~4回爆発し、一部の乗客はこの爆発で地上に落下する前に死亡。時限装置付きの爆発物が使われた可能性がある、という。また米国のNBC放送によると、米情報当局が「シナイ州」の戦闘員からISの首都、シリア・ラッカの組織の幹部らとの交信を傍受し、その中には墜落させる方法も含まれていたとされる。

 「シナイ州」は2度目の犯行声明「怒りに震えながら死ね」の中で、「残がいから墜落させた方法を探すがいい。もしわれわれがやっていないと言うなら、それを証明してみろ」と嘲り、「しかるべき時に、どのようにして墜落させたかを明らかにする」と挑戦的な姿勢を示した。

ベイルートの情報筋は「エジプトの手荷物検査がずさんだったのは誰でも知っている」と述べ、「シナイ州」がスーツケースなどに爆発物を仕掛け、甘い検査を通り抜けて貨物室で爆破させた可能性が高いことを示唆した。

元輸入業者が指導者

 「シナイ州」は元々、アルカイダ系の「アンサル・ベイト・マクディス」(エルサレムの支援者)という組織。アラブの春の政治・軍事的な混乱に乗じてシナイ半島を中心に地元のベドウインと結び付いて勢力を伸ばした。そして昨年11月、ISに忠誠を誓ってその傘下に入った。

 同組織はエジプト軍の元特殊部隊の将校、ヒシャム・アシュマウイに率いられていたが、アシュマウイはISの傘下に入った際に組織を離脱、現在はアブオサマ・マスリという元衣料品輸入業者が指導者だ。マスリはカイロにあるイスラムの最高権威機関アズハルで学んだ経歴を持っているとされる。

 「シナイ州」はISに帰順して以来、一段と過激化し、7月にはシナイ半島北部の町などを襲い警官ら70人を殺害、カイロ近郊でクロアチア人を拉致して殺害するなど攻撃の対象者を外国人にも拡大していた。治安の安定を掲げるシシ政権は戦車や戦闘機を送って一掃を目指しているが、依然数百人の勢力を維持している。

 同組織は最初の声明で犯行の動機について、シリアに介入したロシア軍に殺害された同胞の報復のため、としている。ISはこれまでシリアとイラクの“領地”を死守することを優先し、各地の支部に指示してテロを起こすことは大々的にはやってこなかった。

 しかしISにとって、今回のテロがロシアに対するジハード(聖戦)の一環で、配下の分派組織を実行部隊として使って行ったとすれば、これを契機に本格的な国際テロに乗り出す恐れは強い。またISのテロと断定された場合、プーチン大統領が巡航ミサイルなどでISに対して報復に出る可能性も強まる。ISとプーチン氏双方の動きから当面、目が離せない。

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