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特集:岐路に立つ日本経済とアベノミクス2.0

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景気が思わしくありません。中国経済減速の影響はやはり深く、間もなく発表される7-9月期GDP速報値もマイナス成長になりそうです。内閣府は10月の月例経済報告において、奥歯に物が挟まったような言い方で現状判断を下方修正しました。そして金融政策の方向性もいま一つはっきりしません。

そんな中で、この秋からアベノミクス2.0がスタートします。「強い経済、子育て支援、社会保障」という「新・三本の矢」はいかにも新味が乏しく、「一億総活躍社会」というスローガンも世間の評判は芳しくありません。ただしこれまで、安倍政権の経済政策に欠けていた「中長期の視点」が入ったことは、評価すべきではないかと思います。
日本経済の現状とアベノミクス2.0について、あれこれ考えてみました。

●「追加緩和」をめぐる葛藤

金融政策の「次の一手」に対して、市場の見方が半々に割れるということは、本来、望ましいことではない。それは「市場との対話」がうまくいっていないことを意味するからだ。「中央銀行は次にこう動く」という読みがごく自然に市場で共有され、決断が下されるときには既に期待が醸成されている、というパターンが望ましい。

ところが今は、日米ともに金融政策が読みにくくなっている。米連銀は年内利上げを目指しているようだが、市場はなおも半信半疑である。そして日本も、10月30日の日銀金融政策決定会合を控えて市場の見方は「追加緩和あり」「なし」と真っ二つに割れた。事実、10月26日(月)朝のご存知「モーサテサーベイ」では、次のような結果が出ている(テレビ東京、『モーニングサテライト』)。

Q:日銀の追加緩和は?(10/23-25調査)
・10月30日      25.00%
・ 11月~来年3月  28.57%(*合算)
・ 来年4月以降    21.43%
・ なし          25.00%

コメンテーターの意見がほぼ四等分されてしまった。恥ずかしながら筆者などは、前の週までは「あり」と考えていたけれども、週明け26日になって急きょ心変わりして、「なし」に転向した口である。外資系のエコノミストなどは、「この予想を外したらクビかもしれない」と心配していた人も居るくらいで、まことに罪作りな話である。

こうなると予想が外れた人は、「日銀の出方がわからなくなった」という印象を持つだろう。もっと言えば、黒田日銀に対して批判的になることも避けられまい。ちなみに最新の調査結果は以下の通りで、今度は三等分になってしまった

Q:日銀の追加緩和は?(10/30-11/01調査)
・ 11月~来年3月  33.68%(*合算)
・ 来年4月以降    32.26%
・ なし          32.26%

なぜこんな風に意見が割れてしまうのか。
やはり市場には、昨年10月31日に追加緩和が実施されたときの「黒田バズーカ」の鮮烈な印象が残っている。あのときは米国のQE3が前日に終了し、世界全体が漠然とした不安を抱いていたタイミングで、「先手必勝」とばかりに追加緩和が実施された。結果として日本発の金融緩和が、全世界同時株高につながった。鮮やかな手際の印象が残っているから、「そうは言っても、また緩和するだろう」という見方がなくならない。日銀としては、成功体験に逆襲を受けているようなところがある。

現に追加緩和が見送られたのであれば、市場は失望して円高と株安に向かうのが筋であろう。ところが30日金曜日の株価は上昇し、為替はむしろ円安に推移した。これは多くの市場参加者が、「いずれ日銀は緩和する」と期待しているからであろう。

ただし昨年秋の場合は、4月に消費税率を8%に上げた影響で景気が減速しているところへ、原油価格の急激な下落が重なり、せっかく始まった期待インフレの回復機運に水が差されそうな状態であった。そこで黒田日銀が先手を打ったのだが、現在はそこまでの状態ではない。むしろ石油価格下落の効果は、前年比で見ると着実に小さくなってゆく。今後もよほどのこと(=物価が再び下落を始める恐れ)がない限り、「追加緩和」はないと見るのが自然ではないか。「変心後」の筆者はそんな風に考えている。

●デフレ脱却は成功しているのか?

黒田総裁は2013年春に今の「異次元の金融緩和」を始めるとき、「物価安定目標2%」を2年以内に実現すると言っていた。それから既に2年半が経過している。そして目標達成期限は、2016年度前半に先送りされていたが、今回はさらに「2016年度後半」に延期された。日銀のコミットメントはまったく果たされていないことになる。

しかも消費者物価指数は、最新の9月分が前年同期比で0.0%となっている。1年後の消費者物価指数が前年比2%増に達しているという事態は、正直なところ想像し難い。つまり金融緩和は効果を上げておらず、デフレ脱却はめどがついていないことになる。

ところが黒田総裁は、「物価の基調は着実に改善している」と言っている。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数は、前年同期比で8月に1.1%、9月に1.2%と着実に上昇している。いつの間にか物価の尺度が変わっている、という点は確かにズルいと思うが、この間の石油価格の変化を除外しなければならないのも間違いないところである。

POSデータをもとに作られている「東大物価指数」を見ても、同様な傾向が見て取れる。すなわち石油価格などの要因を取り除いてみれば、物価は上昇軌道にある。特に食料、外食、耐久消費財において、メーカーは値上げを実施できるようになり、消費者はそのことを受け入れつつある。すなわちインフレ期待が上昇しているということだ。

真面目な話、「最近の物価は?」と聞かれると、生活実感として「上がっている」と答える人が多いのではないかと思う。ガソリン価格が下がる一方で、食品価格などは上がっている。他方、そのことは消費支出にも響いていて、家計貯蓄率が上がっていたりする。つまりは買い控えを招き、景気を冷やす方向に働いている。

本気でデフレ脱却を目指すのであれば、ここで賃金が上がらなければならない。ところがそうはなっていない。企業収益は上がり、雇用情勢も改善しているのに、賃上げにはお金が回らない。労働組合側の賃上げ要求も、それほど強くはない。連合は来年度のベア要求を「2%程度」とし、今年度分の「2%以上」よりも事実上下げている。労働組合のインフレ期待は、昨年よりも低下していることになる。

日銀としても、その点に焦りを感じているようだ。かといって追加緩和をすれば企業が賃上げしやすくなるとか、労働組合の要求水準が上がるかというと、それはちょっと考えにくい。賃上げが起きない理由は、金融政策とは別のところにあるからだ。
するとアベノミクスは、手詰まりになってしまったのだろうか。

むしろ実態は逆で、アベノミクスは思っていた以上に成功してしまい、金融政策でできることはおおむね達成されてしまったのではないか。ここから先は民間部門の出番となるはずだが、あいにく企業経営者のマインドは極度に悲観的になっている。そこを変えるために、アベノミクスは「第2ステージ」が必要になった、というのが本稿の仮説となる。

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