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日銀券の発行残高がこれだけ増えても物価が上がらない理由

 10月末のマネタリーベースが344兆4225億円になったと報じられています。15月連続での過去最高更新だ、とも。

 「日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円増やすペースで国債を中心とした金融資産の買い入れを続けており、今年末見通しの350兆円程度に向けて積み上げは順調に進んでいる」(ロイター)

 しかし、その一方で、物価の方は、生鮮食品を除く総合でみるとマイナス0.1%と、インフレの兆候はないのです。

 では、何故マネタリーベースが増えても、物価は思ったほどは上がらないのか?

 原油価格が下がっているから?

 しかし、原油価格の影響を除いたベースでインフレ率を試算しても、1%を少し上回る程度でしかないのです。つまり、2%の目標には遠く及ばす。

 消費税増税の影響があるから?

 しかし、消費税増税の影響があったとしても、消費税率が引き上げられたのは2014年4月のことですから、それから1年を経た2015年4月以降は、影響は殆どなくなっているのです。

 では、何故物価は上がらないのか?

 世の中に出回るお金、つまりキャッシュが増えていないからなのか? 

 ロイターは次のように報じています。

 「10月中のマネタリーベースの平均残高は、前年比32.5%増の338兆8877億円で過去最高を更新。マネタリーベースの構成要因ごとの月中平均残高は、金融機関の手元資金を示す当座預金が前年比47.3%増の242兆4597億円、紙幣は同6.1%増の91兆7792億円、貨幣は同0.9%増の4兆6488億円だった」

 つまり、日銀券は、前年同月比で6.1%も増えている、と。

 グラフをご覧ください。

画像を見る

  確かに、ここ数年、日銀券発行残高の増えるペースが上がっているように見えます。

 では、何故物価は思ったほど上がっていないのか?

 これ、結局、日銀券の発行残高が増えている理由が、投機的動機によるものが大きく、取引需要によるものが小さいからなのではないかと思うのです。

 取引需要によるものとは、景気がよくなり経済活動が活発化することによって起こるものですが、そのような現象はそれほど見られていない、と。

 では、何故日銀券が求められるかと言えば、例えば、金利が異常に低いために、国債や預金という形で資産を保有するよりもキャッシュで持っている方が理屈に合う、と。例えば、短期の国債にマイナス金利がつくような状況では、損をするだけだからです。つまり、いつの日のか金利はまた上がるから、だったら今は現金という形で保有しておいて、金利が上がりそうになったら国債などの債券で保有しよう、と。

 ということは、少なくても貧乏な人の財布の中身が増えている訳ではなく、資産家が保有していた国債等が現金に姿を変えているだけ。そして、その資産家たちは、何かを買うために現金を保有しているというよりも、将来の金利上昇に備えているだけなので、なかなか消費は活発化せず物価も上がらない、と。

 いずれにしても、これほど日銀券の発行残高が増えているのに、インフレ率が低位に留まっていることは日銀にとっても予想外の出来事ではないのでしょうか。

 今から十数年前、竹中教授が金融担当の大臣をしていた頃、竹中氏は、マネタリーベースはどんどん増えているが、日銀券の発行残高の伸び率が低いので、それで物価は上がらないなんて趣旨のことをよく言っていたのを思い出しました。

 何故このようなことが起きているのか、日銀としてもその原因を分析し、世間に公表すべきだと思うのです。

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