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本が売れない原因は、図書館ではなく、文化の変化

発売から一定期間、新刊本の貸し出しをやめるよう求める動きがあるそうです。
本が売れぬのは図書館のせい? 新刊貸し出し「待った」」(朝日151029)

 公立図書館の貸し出しにより本が売れなくなっているとして、大手出版社や作家らが、発売から一定期間、新刊本の貸し出しをやめるよう求める動きがある。背景には、深刻化する出版不況に、図書館の増加、サービス拡充もある。本を売る者と貸す者、相反する利害のはざまで、出版文化のあり方が問われている。


作家の端くれとしては、気になる記事です。
記事は、出版側の主張とその背景、そして海外事情などをまとめて、広範に問題提起しています。

なるほど、と思わせられるものの、タイトルにある”本が売れぬのは図書館のせい?”という問いに答えを出しているとは思えませんでした。

ということで、分析というより憶測になりますが、なぜ本が売れなくなったのか、について私なりに思っていることを書かせて頂きます。

と、大見得切ったのは、私なりに本が売れなくなっている理由を、ずいぶん前から考えていたからです。

 大手出版社の文芸作品は一般的に、最初に刷った部数(初版)の9割が売れて採算ラインに乗り、増刷分が利益となるといわれる。数十万部に到達するベストセラーはまれで、大御所から中堅人気作家による初版2万~3万程度の作品で収益を確保できるかが死活問題だ。だが、近年はこれらの作品でなかなか増刷が出ないという。


私のデビュー作『黎明の笛』については、積極的に図書館に置いてもらいました。
販売戦略としては、正しい選択だったと思います。無名の作家の本を少しでも手に取ってもらうためには、図書館は宣伝ツールでもあるためです。

出版社の内部事情には詳しくありませんが、恐らく、人気作家の売り上げであげた収益を使い、私のような駆け出し作家の本を出しているのでしょう。
投資と回収というビジネスの側面から考えれば、それが正解のはずです。

しかし、その利益回収手段である人気作家の新刊を、発売早々に複数刊購入し、無料で貸し出されては、確かに出版社の利益は低減します。
ですから、この記事で取り上げられている新潮社社長の発言も肯けます。

新潮社の佐藤隆信社長が、売れるべき本が売れない要因の一つは図書館の貸し出しにある、と口火を切った。

 佐藤社長は、ある人気作家の過去作品を例に、全国の図書館が発売から数カ月で貸し出した延べ冊数の数万部のうち、少しでも売れていれば増刷できていた計算になると説明。


これは、事実なのでしょう。
ですが、本が売れなくなった根本原因とは違うと思っています。

基本的に、私は、一度読んだ本は、もう一度読むことはしません。
それでも、本を買いますし、古本として売ることをしません。(くだらねぇ!と思った本は売ります!)

それは、本が文字情報であるだけでなく、所有する喜びがあるコレクター商品であるためです。

ですが、このような感覚は、既に古いモノとなりつつあるでしょう。(私が古い人間だということ)

その感覚の変化が、本の売り上げに悪影響を与えているのだとすれば、感覚の変化をもたらせた要因が現れた時期と、本の売り上げデータに相関性があるはずです。

前掲記事に載っている書籍の売り上げ推移を見ると、1996年まで右肩上がりだったデータが、その年を境に右肩下がりに変化しています。
この頃起こった社会の大きな変化は、インターネットの普及です。

ウィキペディアのインターネットの項には、「1995年、NSFNetは民間へ移管され、Windows95の登場で一般の人にインターネットが急速に広まった。」とあります。しかし、Windows95にインターネット関連の機能が標準搭載されたのはマイナーバージョンであるOSR2からであり、OSR2の発売は1996年末でした。

つまり、インターネットが本格的に普及し始めたのは1997年からであり、この時から、書籍の売り上げが右肩下がりに変化しました。

インターネットでは、情報は右から左に流れて行くものであり、所有する対象ではありません。
ネットの普及で、情報(本)をコレクションするという感覚が、薄れたことが書籍の売り上げに悪影響を与えた根本原因ではないでしょうか。

一方、この感覚の変化は、人々の行動を、本を買うよりも、図書館でタダで借りるという方向に変化させたでしょう。
そのため、この記事で書かれている図書館のせいで本が売れないという評価も、間違ってはいないと思います。

社会の変化は止められません。
ネットの登場で、購買行動が変化したと思われる以上、出版の在り方、それによって作家が創作活動を続けて行く仕組みについても、従来とは異なるビジネスモデルが必要になってくると思います。

その一つは、電子書籍でしょう。

新作を12月にリリースしますが、電子書籍版の比率が、前作と比べてどの程度増えるのか、ちょっと気になっています。

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