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5金スペシャル SEALDsが日本社会に投げかけた素朴な疑問



 5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では安保法制に反対する国会前デモで一躍注目を浴びた学生グループ「SEALDs(シールズ)」の中心メンバーを迎えて、彼らシールズの活動を通じて見えてきた日本の実相への素朴な疑問について、大いに語ったもらった。

 ラップ音楽に乗った「コール」で、安保法制に反対するデモをリードしてきたシールズ(SEALDs:Students Emergency Action for Liberal Democracy-s = 自由と民主主義のための学 生緊急行動)は、2013年に成立した特定秘密保護法に反対する学生団体サスプル(SASPL: Students Against Secret Protection Law = 特定秘密保護法に反対する学生有志の会)をその前身に持つ。

 東日本大震災と原発事故後の政府の対応や特定秘密保護法、安保法制の制定過程などを通じて、日本の民主主義の在り方に対する根本的な疑問を持つ人が増える中、実際にその影響を最も強く受けることになる若者、とりわけ学生たちにも、その危機感は十二分に共有されていた。しかし、民主主義や民主主義を守るために立ち上がった学生たちと聞くと、従来の学生運動を思い起こす人も多いに違いない。ましてやその中心メンバーとなれば、さぞかし意識の高い若者たちなのだろうと思いきや、その一人、奥田愛基さんは、今回の安保法制への反対運動を始めるまでは、ほとんどデモに参加したこともなく、特に特定の政治問題に対するスタンスを公言したこともなかったという。

 同じく中心メンバーの一人、福田和香子さんも、たまたま国会前で秘密保護法に反対する座り込みをやっていると聞き、独りで出かけてみたことが運動に参加するきっかけだったというが、毎週金曜の夜にデモに行かなければならなくなると、クラブに踊りに行けなくなることを気にかけながら、マイペースで運動に参加していたという。
 しかし、奥田さんにしても福田さんにしても、反対の声をあげる必要があると感じたきっかけは、今の社会や政治に対する素朴な疑問からだった。奥田さんは、末代まで市民社会に大きな影響を与えるような法案が、数の力だけ押し切られてしまう特定秘密保護法の成立過程を見ていて、「議会制民主主義が機能していない」ことに危機感を覚えたという。  しかし、後にシールズとして注目されることになる彼らが、従来の学生運動と最も大きく異なっていた点は、運動の展開の方法だった。物心がついた時はすでにインターネットが普及していた、いわゆる「インターネットネイティブ世代」の彼らは、ただ反対の声を上げるだけでは意味がないことを、皮膚感覚として持ち合わせていた。ただ、声をあげるだけでは自己満足で終わってしまう。しかし、同じ声を上げるにしても工夫次第で、周囲の多くの人を巻き込むことができる。白黒文字がぎっしり並んだ声明文をどれだけ配っても、ほとんど誰も読んでくれないが、カラフルでグラフィックなフライヤーなら、より多くの人が関心を持ってくれるかもしれない。シールズは誰もか薄々感じてきた社会や政治の在り方に対する素朴な疑問を、単に「表出」させるのではなく、それを「表現」して見せた。そこが彼らの新しいところであり、面白いところであり、多くの人が彼らに新しい草の根運動の息吹を感じたところだった。

 シールズが正式に立ち上がったのは今年5月。毎週金曜日夜の恒例となった国会前のデモでは「コール」と呼ばれるリズムに乗った掛け声で、参加者からの「レスポンス」を求めることで、多くの人の参加意識を刺激することに成功した。また、ビジュアルにも気を配り、ファッション性や音楽などをミックスすることで、若者を中心に、これまでデモや市民運動に参加したことのない多くの人々を惹きつけた。
 しかし、奥田さんらはそうした表層的な側面だけを切り取ってシールズの活動に今風の若者像を重ねようとするメディア報道には違和感を感じるという。実際にそうした広報戦略が功を奏した面があったことは確かだが、それはシールズのほんの一面に過ぎない。

 シールズのメンバーはLINE(ライン)などのSNSを通じてメンバー間の緩やかなネットワークを作り、情報を共有している。そのラインのグループには現在全国で400人前後の学生が関わっていて、イベント情報の共有や班ごとの役割分担の連絡に利用しているという。しかし、シールズのメンバーを繋いでいるのは基本的にそれだけで、メンバーの名簿すら存在しない。シールズの活動にどの程度コミットするかも各人の自由で、例えば、デモとバイトが重なったために、バイトを優先するメンバーがいても、周囲はそれをごく当たり前のように受け入れているという。得意の英語を活かしたコールで、デモでは注目を浴びた福田さんは、シールズの運営面にはほとんど関わらず、普段はダンスや彼氏とのデートに忙しい普通の学生生活を送っていると、平然と言ってのける。

 そんな彼らだが、シールズの活動を通じて見えてきた日本の実相に対する指摘は鋭く、手厳しい。

 福田さんは自分とシールズの関わりが広く報道されたことで、近所の人から「かわいそうに」とか「そっちに行っちゃったのね」などと、自分が変なことをしているかような扱いを受けたと苦笑する。日本では政治的な発言をするだけでも敬遠される傾向があるが、それが若い女性の場合、その風当りはさらに何倍も強いものになることを実感させられたそうだ。また、一見シールズを応援しているかのような発言をする大人の中には、派手目に見える福田さんのファッションに難癖つけてくる人も多いという。他人に自分たちの主張を聞いてもらいたいのであれば、それ相応の服装やスタイルを身につけなさいということだそうだ。まだまだ日本では、出る杭は打たれて当然と考えている人が多いことを、彼らはシールズの活動を通じて痛感したという。

 メディア報道によって有名になったことで、シールズのメンバーがネット上で誹謗中傷に晒されたり、発言の一部が切り取られてネットが炎上するような現象もしばしば起きている。匿名の陰に隠れて誹謗中傷を書き込む卑怯者たちも問題だが、シールズの活動自体には賛同すると言っておきながら、そうした行為を批判もせずに放置しておける日本社会の在り方についても、彼らは強い疑問を抱く。

 シールズのメンバーたちは、自分たちにできることをやるだけやった上で、来年夏の参議院選挙をもって解散すると、あっさりと言ってのける。「シールズは次は何をやるんだ」、とか、「解散はもったいない」などと言われることも多いが、それは旧態依然たる「まかせてブーたれる」おまかせ民主主義の悪弊の反映にすぎない。彼らは普通では到底できないことをやってのけ、既にできることは十二分、いやそれ以上のことを成し遂げている。問題の核心は、彼らが投げ掛けた日本の民主主義に対する素朴な疑問を、われわれ一人ひとりがどのように受け止め、次の行動に移していくかにある。沖縄の翁長知事も同じことを指摘していたが、多くの深刻な問題を抱える日本の現状は、「シールズは次は何をやってくれるの」などと見物人気分で呑気に聞いている場合ではない。

 分からないこと、おかしいと思うことがあれば、声を上げるのが当たり前の社会への第一歩を踏み出す先鞭をつけた学生グループのシールズが、その活動を通じて見たもの、感じたことを、その中心メンバーの奥田愛基さん、福田和香子さんと、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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