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- 2015年10月28日 10:48
名目GDP600兆円は3年で達成可能だと言う高橋洋一氏の説得力
安倍総理が名目GDP600兆円を目標に掲げたことは皆さんご存知のことと思います。
しかし、当初、600兆円の目標を掲げるのはいいが、いつまでにそれを実現するかという疑問の声が上がったのです。 総理は、期間に関しては何も言っていないではないか、と。
すると、誰が言い出したか知りませんが、いつの間にか、それは2020年頃までに実現すべき目標だということになってしまいました。
そうですよね?
2020年までということは、あと約5年。
でも、殆どの国民は、その目標が実現されることはほぼなかろうと思っています。否、殆ど関心がないと言うべきでしょうか。
或いは、希には名目GDP600兆円の目標も達成可能であろうが、それはインフレにすればいいだけの話だなんて意見もあります。
ということで、名目GDP600兆円なんていう話には殆ど関心をなくしていた矢先、名目GDP600兆円は可能だ、しかも3年で実現するなんてことを言い出している学者が現れました。
一体誰なのでしょう、その人は?
実は、その人の名は高橋洋一。
まあ、この人の評価は、皆さん自身にお任せします。
一部の人には相当人気があると言ってもいいでしょう。しかし、全く信用していない人も同じように多い。
いずれにしても、何故高橋洋一氏は、名目GDP600兆円が、たった3年で達成可能だなんて途方もないことを言うのか?
高橋洋一氏によれば、但し、3つの条件が満たされなければならないと言います。
これらのうち一つでもかけては目標の達成はできない、と。
どう思います?
私、(3)の条件はおかしいと思います。というのも、幾らインフレ目標値を2%から3%へ引き上げたところで、実際にインフレにならなければ意味がないからです。
では、どうやってインフレ率を上げると高橋氏は言うのでしょうか?
なんですって。
しかし、幾らマネタリーベースを増やしたからといって、そう簡単にインフレが起きないのは、先日の「日本型量的緩和策の矛盾点」で私が指摘したとおりです。
繰り返しになりますが、マネタリーベースを増やすことを目標にする限り、その目標値を設定した日銀としては、日銀当座預金勘定からお金が降ろされては困るのです。
だって、お金が降ろされてしまうと、マネタリーベースの目標が達成できませんから。しかし、その一方で、日銀当座預金勘定からお金が降ろされないことには、世の中に出回るお金の量が増えることもないので、インフレを起せない、と。
百歩譲ってというか、千歩、否、一万歩譲って、3%のインフレ率が実現できたとしましょう。では、それで3年後に名目GDPは600兆円に達成するのか。
今現在の名目GDPが500兆円だと仮定すると…
1年後:500×1.03=515
2年後:515×1.03=530
3年後:530×1.03=546
546兆円にしかなりませんね。
高橋洋一氏は何を考えているのでしょう?
経験則で分かっている? 経済環境がいいとそれなりに実質成長率も伸びるのだ?
しかし、そのようなことが当てはまるのは、戦後の日本のように人口が急増しているような場合だけでしょう。
一体どうして労働力人口が減っている日本で、インフレが起きただけで潜在成長率(実質)が高くなるなんてことがあるでしょうか?
一国の経済成長率を規定するのは、人口の増加率と資本の増加率、それに生産性の3つであるというのは、経済学の基本中の基本。
でも、ここでも一応、高橋洋一氏の主張を受け入れて、インフレ率が3%に達した結果、実質成長率が2%ほどにまで高まり、名目GDPの成長率が5%程度になったと仮定してみましょう。
再び、今現在の名目GDPが500兆円だと仮定すると…
1年後:500×1.05=525
2年後:525×1.05=551
3年後:551×1.05=579
579兆円にしかなりません。おかしいですね。
しかし、ここで20兆円の補正予算が効いてくるのです。
つまり、20兆円分の財政出動で、需要を20兆円追加すれば、名目GDPがほぼ600兆円に達する、と。
いずれにしても、全く実現性のない条件を幾つも掲げ、それが満たされれば600兆円の達成が可能だなんてよく言えたものなのです。
というよりも、本人は、どうせそれらの3つの条件が満たされる筈はないと見越した上で、この先、名目GDPがなかなか増えないことが確認されたとき、「俺の言うことを聞かなかったからだ」と言いたいだけなのではないでしょうか。
しかし、当初、600兆円の目標を掲げるのはいいが、いつまでにそれを実現するかという疑問の声が上がったのです。 総理は、期間に関しては何も言っていないではないか、と。
すると、誰が言い出したか知りませんが、いつの間にか、それは2020年頃までに実現すべき目標だということになってしまいました。
そうですよね?
2020年までということは、あと約5年。
でも、殆どの国民は、その目標が実現されることはほぼなかろうと思っています。否、殆ど関心がないと言うべきでしょうか。
或いは、希には名目GDP600兆円の目標も達成可能であろうが、それはインフレにすればいいだけの話だなんて意見もあります。
ということで、名目GDP600兆円なんていう話には殆ど関心をなくしていた矢先、名目GDP600兆円は可能だ、しかも3年で実現するなんてことを言い出している学者が現れました。
一体誰なのでしょう、その人は?
実は、その人の名は高橋洋一。
まあ、この人の評価は、皆さん自身にお任せします。
一部の人には相当人気があると言ってもいいでしょう。しかし、全く信用していない人も同じように多い。
いずれにしても、何故高橋洋一氏は、名目GDP600兆円が、たった3年で達成可能だなんて途方もないことを言うのか?
高橋洋一氏によれば、但し、3つの条件が満たされなければならないと言います。
(1)20兆円補正予算
(2)10%への消費再増税の凍結
(3)インフレ目標3%(日銀法改正)
これらのうち一つでもかけては目標の達成はできない、と。
どう思います?
私、(3)の条件はおかしいと思います。というのも、幾らインフレ目標値を2%から3%へ引き上げたところで、実際にインフレにならなければ意味がないからです。
では、どうやってインフレ率を上げると高橋氏は言うのでしょうか?
「マネタリーベースを今のペースより増やせば、インフレ率3%も達成できる、ということだ。ざっくりと試算すると、今の年間60−80兆円のマネタリーベース増加を100兆円程度に増やせばいいだろう」
なんですって。
しかし、幾らマネタリーベースを増やしたからといって、そう簡単にインフレが起きないのは、先日の「日本型量的緩和策の矛盾点」で私が指摘したとおりです。
繰り返しになりますが、マネタリーベースを増やすことを目標にする限り、その目標値を設定した日銀としては、日銀当座預金勘定からお金が降ろされては困るのです。
だって、お金が降ろされてしまうと、マネタリーベースの目標が達成できませんから。しかし、その一方で、日銀当座預金勘定からお金が降ろされないことには、世の中に出回るお金の量が増えることもないので、インフレを起せない、と。
百歩譲ってというか、千歩、否、一万歩譲って、3%のインフレ率が実現できたとしましょう。では、それで3年後に名目GDPは600兆円に達成するのか。
今現在の名目GDPが500兆円だと仮定すると…
1年後:500×1.03=515
2年後:515×1.03=530
3年後:530×1.03=546
546兆円にしかなりませんね。
高橋洋一氏は何を考えているのでしょう?
「インフレ率が2〜3%になると実質成長率も2%ぐらいになるということが経験則でわかっている。経済環境がいいとそれなりに実質成長率も伸びるのだ」
経験則で分かっている? 経済環境がいいとそれなりに実質成長率も伸びるのだ?
しかし、そのようなことが当てはまるのは、戦後の日本のように人口が急増しているような場合だけでしょう。
一体どうして労働力人口が減っている日本で、インフレが起きただけで潜在成長率(実質)が高くなるなんてことがあるでしょうか?
一国の経済成長率を規定するのは、人口の増加率と資本の増加率、それに生産性の3つであるというのは、経済学の基本中の基本。
でも、ここでも一応、高橋洋一氏の主張を受け入れて、インフレ率が3%に達した結果、実質成長率が2%ほどにまで高まり、名目GDPの成長率が5%程度になったと仮定してみましょう。
再び、今現在の名目GDPが500兆円だと仮定すると…
1年後:500×1.05=525
2年後:525×1.05=551
3年後:551×1.05=579
579兆円にしかなりません。おかしいですね。
しかし、ここで20兆円の補正予算が効いてくるのです。
つまり、20兆円分の財政出動で、需要を20兆円追加すれば、名目GDPがほぼ600兆円に達する、と。
いずれにしても、全く実現性のない条件を幾つも掲げ、それが満たされれば600兆円の達成が可能だなんてよく言えたものなのです。
というよりも、本人は、どうせそれらの3つの条件が満たされる筈はないと見越した上で、この先、名目GDPがなかなか増えないことが確認されたとき、「俺の言うことを聞かなかったからだ」と言いたいだけなのではないでしょうか。