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日本型量的緩和策の論理的矛盾点

 黒田総裁がバズーカ3を放つのではないかと噂されています。

 つまり、10月30日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策が打ち出されるのではないか、と。

 どう思います?

 先日、麻生副総理は、金融政策でできることは限られているなんて言っていましたよね。それに、黒田総裁は、物価の基調は回復しているなんてことも言っています。

 まあ、それらの発言からすれば、ここで追加策が打ち出されるとはとても考えられないのですが…しかし、バズーカ2が放たれたときの状況を考えれば…ないとも言えない。ですが、そうやって追加緩和策の期待が高まると…やっぱりないかもしれない。

 ところで、私思うのですが…市場関係者が追加緩和策を望むのは彼らの自由なので、どうぞご勝手にという立場ですが、それにしても、日本型の金融緩和策をこれ以上強化したところで何の効果が期待できるのか、と思うのです。

 そのように思いませんか?

 では、何故期待できないのか、本日はそれをご説明したいと思います。

 先ず、追加緩和策ということになれば、さらに国債の買い入れ額を増やすということになろうかと思いますが…そして、国債の買い入れ額を増やすということ自体には異存はないのですが、それ以外の措置が非常にまずいのです。

 もっとも、念のために言っておきますと、私はそのようなリフレ政策を支持しません。今、ここで言わんとしていることは、仮に私がリフレ政策、具体的には物価目標政策を支持する立場にあったとしても、今の日銀のやり方には問題があるということなのです。

 もう一度言いますが、緩和策を強化するために国債の買い入れ額を増額するというのは基本的に問題はありません。(でも、本当なら、国債よりも信用度に劣るおんぼろ債券などを日銀が買い入れる方がどれだけ効果があることか! しかし、それをやると日銀の資産内容が悪化するという別の問題が生じてしまいます。)

 では、何がいけないかと言えば、マネタリーベース(簡単に言えば日銀当座預金残高)を増やそうと懸命に努力しているのがいけません。

 私が、こんなことを言えば、何故それがいけないのかと疑問に思う人も多いでしょう。

 マネタリーベースを増やすことによって世の中に出回るお金の量(マネーストック)が増える筈ではないか、と。

 マネタリーベースとは、具体的には、キャッシュと日銀当座預金の合計です。

 なお、日銀当座預金とは、市中銀行が日銀に預けているお金のことで、いつでも引き出し可能であるのでキャッシュと同等に扱うことができるのです。

 一方、マネーストックとは何を指すかと言えば、キャッシュと預金通貨の合計です。

 そして、このマネーストックとマネタリーベースとは、

 マネーストック=マネタリーベース×貨幣乗数

 という関係が成り立っているとされています。

 ねえ、従って、貴方もこの式をみれば、マネタリーベースを増やすことで確実にマネーストックが増えると思ってしまうでしょう?

 でも、そう思った方は、残念!

 確かに、貨幣乗数が一定であれば、マネタリーベースを増やすことによってマネーストックは増えると言っていいでしょう。

 しかし、貨幣乗数は一定ではないのです。というよりも、マネタリーベースの何倍、マネーストックが存在しているのかを示すのが貨幣乗数と言われているだけなのです。

 幾らマネタリーベースを増やしても、特にそれが日銀当座預金の増加によるものである場合には、殆ど効果がないのです。

 それに、本来、中央銀行が金融緩和策を打つ場合、日銀当座預金を増やすのではなく、減らすことによるのが本筋です。

 預金準備率を引き下げることによって、市中に出回るお金の量を増やすことができると、経済学のテキストに書いてあったでしょ? 今回の中国の預金準備率引き下げも、その教えに従っただけなのです。

 預金準備率が下がると、市中銀行が中央銀行に預けておく預金(日銀当座預金)は減ります。ということは、今日銀がやっているマネタリーベースを増やすという作戦は、経済学のテキストの教えに反しています。

 それで、どうして市中に出回るお金が増えるでしょうか?

 おかしいでしょ?

 バカじゃないか、と。

 つまり日銀当座預金の目標を掲げるのでなく、日銀当座預金をどんどん融資などに向かわせることこそ重要であり、それなくして市中に出回るお金の量は増えないのです。

 しかも、日銀は、その日銀当座預金に金利をつけてあげているので、なお一層、その当座預金が市中に出回る可能性は小さいのです。

 2013年の4月、黒田総裁は、マネタリーベース(日銀当座預金)を2年で2倍にしてインフレ率2%の目標を達成すると宣言しました。

 しかし、日銀による国債の買取りと同じペースでマネタリーベース(日銀当座預金)が増えるということは、日銀当座預金が引き出されることがないことを前提にしている訳ですから、それでどうして世の中に出回るお金が増えるでしょうか?

 欧州において、マイナス金利のマイナス幅が大きくなっていると報じられています。何故だかお分かりでしょうか?

 欧州では、日本とは逆に、準備預金(日銀当座預金に相当するもの)に金利をつけるではなく、マイナスの金利が課されるのです。

 つまり、市中銀行が中央銀行にお金を預けたままにしておくと損になるので、それなら市中銀行は、企業に融資した方がマシだと考えることを期待しているのです。

 日本と全く逆でしょ?

 皆さんは、米国も欧州もそして日本も皆、量的緩和策を採用した、或いはしている、と考えるでしょう。しかし、同じく量的緩和策と言いながらも、マネタリーベース(準備預金)の目標値を設定しているのは日本だけなのです。

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