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嘘が下手な方がまだしも

 誤った認識を与えやすい用語ってのもありますよね。例えば「実効税率」なんて聞くと「実際に課される法人税率?」みたいに感じてしまう人もいるかも知れません。ここは実効税率ではなく「額面税率」とか言った方が意味が正しく伝わりそうな気がするところです。他にも「奨学金」という呼称も闇が深い、給付型の奨学金は当然ながら奨学金ですけれど、貸与型で返済の義務がある、利子がかかる、返済が遅延するとブラックリストに載せられるような類が日本では主流です。これは「学資ローン」と呼ばれるのが正しいはずですが、なぜか「奨学金」という誤解を生む名称の使用が社会的に容認され続けています。学資ローンを奨学金と称するのは誇大広告なんじゃないですかねぇ。

 まぁ学資ローンに限らず半ば意図的に誤解を生むような広報の在り方が許されている分野もあるものでして、求人広告などはまさに典型でしょうか、これは虚偽の記載が許されており、実際の待遇や業務内容とは異なる記述で人を募っても何ら咎めを受けることはありません。実態の酷さもさることながら、こうした嘘偽りが許されているのが嫌だな、と私などは思うわけです。実態は同レベルでも内容を明示しているのと、偽りの看板で人を欺くような類とでは、やはり後者の方にこそ卑劣さを感じるところ、最初から「待遇劣悪、業務過酷、雇用継続の保証なし」とでも書いてあった方が、まだしも正直ですから。

<おいでまいガール>募集 容姿条件ずらり、県文言に批判も 色白美人/スタイル良し /香川(毎日新聞)

 県産米「おいでまい」のイメージガールの募集で、県が「フレッシュで透明感があり、色白でスタイルの良い女性」と容姿を条件に挙げていることが23日分かった。他の自治体などでは性別を問わなかったり、元気ややる気を条件にしており、有識者は「時代遅れだ」と批判している。

 おいでまいは「米の食味ランキング」の最高ランク「特A」と評価された県産米。PRを担当するイメージガールは県などが今回初めて募集した。応募資格は、「お米が好きな16歳以上の女性」などで、締め切りは来月23日。年内に決定し、来年3月末まで活動する。

 県のホームページに掲載されたチラシには、「色白でスタイルの良い方」「色白美人で透明感のあるイメージガール」を募集すると明記している。事務局の県農業生産流通課の担当者は「おいでまいは透明感のある白色、粒ぞろいのいい形が特長で、米のイメージを擬人化したもの。問題があるとは思っていない」と説明している。

 米どころとして知られる宮城県では毎年、宮城米キャンペーンキャラクターを募集。対象は男女問わず、「ごはんが大好き」な人とする。同県食産業振興課は「昔は女性のみだったが、米をPRするのに、女性に限定する理由もない」と話した。また、「ミスあきたこまち」を実施する秋田県のJA全農あきた米穀販売課の担当者は「元気でやる気のある人であれば大丈夫だと説明している」としていた。

 求人広告においては「若年層のキャリア形成のため」と書いておけば、年齢による差別を行うことが許されています。この辺は公的機関(ハローワーク)のお墨付きのようですが、どうしたものでしょうかね。望み薄ですがTPPとか国際的な枠組み作りが広がる中で日本にもグローバルな基準が適用されるようになれば、許されない差別として是正を求められてもおかしくない慣習であるようにも思います。あるいは年齢による排除を継続するにしても、せめて正直に「年齢による差別を行うため/若くなくなった人には退職を強いることがあります」とか求人広告上に明示させた方が、まだしも誠実ではないかと。

 ……で、上述の「イメージガール」の募集はいかがなものでしょう。年齢を理由にした選別は「若年層のキャリア形成のため」と、おまじないを唱えれば許されます。では容姿を理由にした選別が許されるためには、どんなおまじないが必要なのでしょうか。まぁ私としては「容姿によって女性に優劣を付けるため/容色が衰えれば外れてもらいます」などと明示した上で「美人」を募集するのなら、それはそれで嘘偽りのない代物として許されてもイイかな、ぐらいには思います。もっともらしい言葉で誤魔化した代物が、一番いけません。実態は包み隠さず伝えるべきです。

 なお宮城県は「昔は女性のみだったが、米をPRするのに、女性に限定する理由もない」、秋田県は「元気でやる気のある人であれば大丈夫だと説明している」そうです。では実際に、宮城県と秋田県が採用した人々を見てみましょう。

宮城米マーケティング推進機構/私たち 2015「みやぎライシーレディ」です

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ミスあきたこまちの紹介 秋田のお米 JA全農あきた

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 どうにも言動不一致と言いますか、宮城も秋田も募集時の「建前」が違うだけで、選別の基準は香川県のそれと違わないように見えます。いずれも若く見栄えの良い女性を求めているのは同じで、ただ香川は「正直だった」ということなのかも知れません。「若年層のキャリア形成のため」と書いておけば済むところを、「年齢による差別を行うため/若くなくなった人には退職を強いることがあります」と隠さず書いてしまったようなものでしょうか。香川県の募集の仕方も批判されて然るべきだとは思います。ただ私には、香川の方が誤魔化しは少ないのかな、とも感じられるところです。嘘の下手な人の方が、私は好きですね。

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