- 2015年10月23日 23:41
震災と虐待は終わらない
■TEDICと石巻
今日(10/23)と明日、宮城県石巻市にあるNPO法人TEDIC(「ひとりぼっちがいないまち、石巻、社会」 特定非営利活動法人TEDICは、宮城県石巻市で子ども・若者への支援をしている団体です)の1周年記念イベントにゲストのひとりとして呼ばれて、僕は初めて東日本大震災の被災地にやってきた。明日もシンポジウムがあり、僕は不登校問題について語ることになっている。
僕の法人(officeドーナツトーク)は、大阪市南部で貧困ハイティーン支援を行なっている。
そのひとつが府立西成高校「となりカフェ」等の「高校生居場所カフェ」事業であり(高校生居場所カフェプロジェクト(大阪府・高校内における居場所のプラットホーム事業))、これは大阪府の「高校居場所プラットホーム」事業の予算の中で展開している。
TEDICとしては、最前線の問題である貧困や「学校の中の居場所」について僕は話すだけでよかったのかもしれないが、僕は、「震災と虐待」被害の共通点を示し、東北と大阪(のように階層化した社会)のハイティーンは同じような困難さに直面していることを示したかった。
その問題を考えるとき、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と連接して考えると、両者はよりつながる。
■PTSDの4大原因
精神分析の創設者のフロイトは男根主義者であり女性差別主義者ではあるが(100年前のオジサンだから仕方ない)、PTSDに関しては先見的な研究を行なった。
その研究の結果精神分析が創設されたのだが、精神分析創設後、残念ながらフロイトはPTSDのトラウマの事実性に疑問符をつけ、トラウマと虐待/暴力被害というよりは、そこに抑圧された「欲望」を見るようになる。
精神分析創設後の話はさておき、精神分析以前の若きフロイトが抽出したPTSDの原因として、4つあげている。
それは、1.性暴力/虐待、2.自然災害、3.戦争、4.交通事故の4つであり、これは最新のPTSD研究においても同様だから、フロイトには先見の明があったと感じざるをえない。
フラッシュバックに代表されるように、PTSDは一生にわたってひきずるものであると、PTSDの最新研究書『心的外傷と回復』(みすず書房)の著者J.L.ハーマンも述べている。一見治癒したように見えても、壮年になってさえそれは突然当人を襲う。
PTSDにおいては、完全治癒というよりは、そのトラウマやフラッシュバックとどう付き合うか、ということが求められる。トラウマを突然刻印されるのは当事者の責任ではまったくないのに、当事者はそれと一生付き合わなければいけない。
■すべての当事者がそれを終わらせたい
虐待支援(正確にはスーパーバイズ)を行なっている僕(あるいはofficeドーナツトーク)だからこそ、震災被害者に対していつか何かができるのでは、とずっと思ってきた。それが今回、TEDICの記念イベントで語ることで明確になった。
虐待と震災は終わらないのだ。すべての当事者がそれを終わらせたいが、残念ながらそれは終わることなく、突然現在進行形でフラッシュバックというかたちで当事者たちを苦しめる。
それは虐待被害も震災被害も同じだ。同じPTSDという状態だからだ。
が、震災は徐々に忘れられ(と同時に町には活気が蘇る)、虐待は「18才」になることで法のセーフティーネット(要保護児童対策地域協議会、略して「要対協」)から外れる。
PTSD当事者も、そのように徐々に記憶が形骸化していくことを歓迎する。形骸化することでフラッシュバックもなくなるからだ。あるいは、人によってはようやく要対協から離れることができたと一安心するだろう。
が、記憶はある日突然当事者を襲う。襲うけれども、その時当事者はその苦しさをまわりに訴えにくい。また、明確なフラッシュバックはなくとも、その到来に怯え続けるのが当事者でもある。
だからこそ、震災と虐待は終わらない。当事者たちにとってはそれを終わらせたいが、事実として記憶は突如蘇る。その時、世間は過去の自然災害を忘れ、家族は虐待の醜さを過去のものとして封印している。
NPO等ソーシャルセクターの使命は、そうした潜在化させられた被害当事者の立場にずっと立ち続けることだ。その人々を支援し、その人々の苦しさを社会に向けて発信する。
そうした、我々の使命を再確認してもらうことができ、僕はいま石巻に来ることができて本当によかったと思う。★
※Yahoo!ニュースからの転載


