低公害車政策研究員が語るプラグインハイブリッド車の課題

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの清水孝太郎主任研究員(撮影:田中丸善治)
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三菱UFJフィナンシャル・グループの総合シンクタンクとしての業務を行なう三菱UFJリサーチ&コンサルティングにて、環境対策技術に関する普及政策、新エネ・省エネ政策、低公害車政策などに従事してきた清水孝太郎主任研究員。電気自動車普及に向けた政策提案などに尽力してきた清水氏に充電インフラや次世代環境車普及の展望について聞いた。

2020年までに充電器200万基以上という政府目標にはまだ程遠い


EV(電気自動車)・PHV(プラグイン・ハイブリッド車)と、それに付随する充電インフラの普及率は現在、どのような状況になっているのだろうか。

『いきなりですが、ガソリンエンジン車の燃料を満タンにしたらどれくらいのエネルギー量があるかイメージが沸きますか? ちなみに、日本の平均的な世帯で1ヵ月に使う電気エネルギー量がだいたい300kWhと言われていて、これをメガジュール(熱量の単位。1kWh=3.6MJ)に換算すると1,080MJくらいという数値になります。

一方で、ガソリンエンジン車が満タンの燃料(50ℓ程度)を使い切る際に使うエネルギー量は1,730MJにもなります。つまり、ガソリンエンジン車は一般家庭1ヵ月分以上のエネルギーを積んで走ることができるわけですね。

それに対しEVの場合は100MJもありませんので、化石燃料(ガソリン)は自動車にとって極めてエネルギー密度が高い燃料ということになります。「じゃあもっと電池を大きくすればいいのでは?」という意見もありますが、乗用車はボディサイズがある程度決まっていますし、充電時間や重量など使い勝手を考慮すると電池を闇雲に大きくはできません。仮にめいっぱい電池を積んだとしても車両重量がかさんで航続可能距離に悪影響を及ぼしてしまうからです。

また、電池はその性質としてエネルギー密度を上げることが現在の技術では容易ではないので、電池そのものを大きくしなければエネルギー量を大きくできないのです。そういったジレンマのもと、今もそのせめぎ合いが続いているのが現状ですね。そんな状況ですから、EVを選択する際にはまだまだ制限や課題もあるというのが正直なところでしょう。

エネルギー量≒航続可能距離の劇的な改善が期待できない以上、充電インフラを徹底的に整備するなどEV・PHVのための環境を整えていくという社会全体での取り組みが必要となります。でなければ、大幅な普及は見込めません。もちろん政府も手をこまねいているわけではなく、エネルギー基本計画では、2020年までに普通充電器を200万基、急速充電器を5,000基導入(ともにH22.6閣議決定)というポジティブな目標を示しています。ただ、現時点では普通充電器が約1万1000基で急速充電器が約3,000基(ともにH27.3経済産業省発表)と、急速充電器は良いペースで来ていますが、普通充電器は目標までかなり遠い数字となっています。現時点でのEV・PHVの普及率からすれば必ずしも少ないとは言い切れないのですが……。

その大きな原因としては設備投資に対するリターンが少ないということが挙げられます。たくさん設置すれば集客数が増えるといったように大きなメリットがあれば話は別ですが、そこまでEV・PHVが普及しているとは言えませんし、課金の有無もまちまちでそのシステムや管理体制を構築するのにもお金が掛かります。充電器が少なければユーザーはEV・PHVに手が出しにくいですし、EV・PHVが普及しなければ充電器の設置にお金を掛けても効果が薄い。鶏が先か卵が先かの状態になっているのは確かですね』

ユーザーコストにおいて、現時点でガソリンエンジン車に匹敵するのはハイブリッド車だけ?


自動車を選ぶにあたり現時点で一番合理的な選択とはどのようなものになるのか? また2016年の電力全面自由化によりEV・PHV及び充電インフラの普及率に影響はあるのだろうか?

『もちろんEVには、技術面においても環境面においても、夢や可能性があります。ただ、イニシャルコストやランニングコストといったユーザーコストに限っては、ガソリンエンジン車に匹敵する自動車は現時点ではハイブリッド車になるのではないでしょうか。なぜならそれだけの商品力、競争力がハイブリッド車にはありますから。

というのも、現時点での電気料金とガソリン料金を基準に、EVとハイブリッド車が1km走るのにかかるコストを比較してみたところ、EVは確かにハイブリッド車に比べるとランニングコストが安いものの、航続可能距離が短いうえに車種モデルにもよりますがプリウス等のハイブリッド車と比べると比較的、車両価格が高いものが多い。PHVは電池を使い切ってもガソリンで走行できるため、航続可能距離の問題はありませんが、こちらもプリウス等のハイブリッド車と比べるとやはり車両価格が高い傾向にある。

つまり、EV、PHVともにイニシャルコストをランニングコストで補うのは現時点ではハードルが高い。よって、ユーザーのトータルコストが安いハイブリット車に現時点では軍配が上がると思います。

ただ、2016年の電力全面自由化によって価格競争が起こり、電気代が値下がりすると予想されます。充電インフラへの影響という意味では、ランニングコスト低下により充電インフラ利用者がいくらか増加することも考えられますが、設置コスト自体が変わらなければ劇的な収益改善には繋がりにくいと思われるため、すぐに効果は出てきにくいと考えられます。一方で、EV、PHVでもランニングコストは下がってくることになりますが、EVの航続可能距離については劇的な改善はすぐにはハードルが高いと思うので、PHVにとっての追い風となるかもしれませんね。』

※次回へ続く

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