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「ええ、偏っていますが、何か」神奈川新聞の見事な“開き直り” - 中津十三

9月に強行採決された安保法案に対し、全国紙は賛成(読売、日経、産経)、反対(朝日・毎日)と分かれたが、ブロック紙、地方紙はほとんどが反対の論陣を張った。その中でも注目されたのが、神奈川新聞だ。

横浜市に本社を置き、ことし創業125周年を迎えた。発行部数は約19万部。10年前にリニューアルしたホームページ「カナロコ」は、新聞社のサイトらしからぬデザイン。また、毎年8月にみなとみらい地区で開かれる「神奈川新聞花火大会」は約20万人の集客を誇る首都圏屈指の夏の風物詩として有名だ。

本紙面で高い評価を得ているのが、昨年7月から始まった論説・特報面の連載記事「時代の正体」。集団的自衛権容認の閣議決定後初の国会論戦について、識者3人の論評が第1回だった。

その後、米軍基地、ヘイトスピーチ、教科書、ファシズム、表現の自由、イスラム国、従軍慰安婦、日本会議などを取り上げながら、「今」という時代の正体に筆鋒鋭く迫っている。それらに通底するものは何だろうか。8月には1冊の本にまとめられた。

民主主義を脅かすさまざまな問題に、旗幟鮮明に「NO」の立場を取る神奈川新聞。それに対して「記事が偏っている」という批判が寄せられるそうだ。16日付の「カナロコ・オピニオン」で、石橋学論説委員がそうした批判には、こう答えると書いている。

「ええ、偏っていますが、何か」

開き直りのように見えるかもしれないが、これはジャーナリストとしての神奈川新聞の意地と心意気だ。

安倍政権に批判的な記事だから偏っているというのなら、それは、権力を監視し批判するジャーナリズムの役割を見落とした難癖でしかない。そうしたジャーナリズムは民主主義社会に不可欠なものである。

いま権力が暴走している真っ只中だ。ではジャーナリズムは何をすべきか。オピニオンはこう締めくくられる。

言論の幅が狭まれば民主主義は根元から揺らぐ。私たちが直面しているのに、新聞記者である以前に社会を構成する一員としてどのように行動するのかという問題であるはずだ。

民主主義の要諦は多様性にある。一人一人、望むままの生き方が保障されるには、それぞれが違っていてよい、違っているからこそよいという価値観が保たれていなければならない。それにはまず自らが多様なうちの一人でいることだ。

だから空気など読まない。忖度しない。おもねらない。孤立を恐れず、むしろ誇る。偏っているという批判に「ええ、偏っていますが、何か」と答える。そして、私が偏っていることが結果的に、あなたが誰かを偏っていると批判する権利を守ることになるんですよ、と言い添える。

ほかの誰のものでもない自らの言葉で絶えず論を興し、そうして民主主義を体現する存在として新聞はありたい。

御用メディアと化した全国紙に、この文章を捧げたい。

(中津十三)

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