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週刊文春記事「お薬手帳なんていらない」への反論

今週の週刊文春(10月22日号)に、
    『薬局は1回あたり410円儲けていた 「お薬手帳」なんていらない!』
という記事が掲載されていました。

薬局・医薬分業をバッシングする記事が出ることは今さら珍しくもありませんが、中には記事を鵜呑みにしてしまう方もいるかもしれません。
内容を振り返り、コメントしておきたいと思います。

※お薬手帳については、以前『「お薬手帳」は不要だと考えている患者さんへ』という文章を書きましたので、ご一読いただければと思います。
http://blogos.com/article/111763/

◆薬剤師の説明不足やモラルの問題?


記事では、お薬手帳の概略について説明した後、「良いこと尽くめとも思えるお薬手帳なのだが、実は最近不要論が高まっている」として、事例を挙げています。

・ 手帳を貰っても、後日別の薬局に行った際に忘れて別の手帳を貰う人が多いのが現状であり、忘れた際にもらったシールを捨ててしまうケースも多い
・ 皮膚科で抗アレルギー薬を処方され、しばらくして眼科でも抗アレルギー薬を処方されたために両方飲んでしまい、耐えられないほどの眠気に襲われた。手帳は持参するのを忘れていた。

その上で、こうした事態は「薬剤師の説明不足やモラルの問題」によって引き起こされているとしています。

誤解を恐れずに言えば、挙げられた事例では、その患者さんが悪いと思います。
私が知る限り、どの様式のお薬手帳にも基本的な利用の仕方は記載されていますし、併用している薬があり、手帳を忘れているのであれば、せめて分かる範囲で申告して頂きたいところです。ノーチェックで併用しても安全なはずであり、問題があれば「薬剤師の説明不足やモラル」が原因だという価値観は、正直なところ、私には理解できません。今の日本では普通なのでしょうか?

どの薬局を利用するかは患者側の自由であり、お薬手帳を使うか否かについても患者自身が決めることができます。利用すれば相応のメリットがありますし、毎回紛失したり、シールを捨ててしまえば、それなりの不利益があります。
ちなみに、お薬手帳を利用しなければ70円(自己負担額は10〜30円)が減額されます。410円のタイトルは意図的なミスリードです。

『よい薬剤師を見つけ、「かかりつけ薬局」を持ちましょう。お薬手帳を継続的に記載して医師・薬剤師に提示し、問題がないかを確認してもらいましょう』

と薬剤師会は言い続けています。
怪しい健康法や医療情報、偏った視点による医療・薬局バッシングを好み、正しく基本的な医療情報を軽視する「メディア側のモラル」に問題があると私は思いますが。

◆院内処方と院外処方で料金が違う


この主張は、最近になって分業バッシングによく用いられるようになりました。
病院内で薬を貰うよりも院外薬局は割高であり、料金を合わせるべきだという主張に繋がることが多いようです。これは病院で勤務する薬剤師の方からも指摘されることがあります。

病院内の各部署は、独立採算制になっているのではなく、病院全体として考慮されているのではないかと思います。診療報酬改定でも、ホスピタルフィー(病院の設備を維持・管理するための報酬)とドクターフィー(診療技術を評価するもの)がどのように反映されているかについて議論されます。
高額の報酬を得る部署が「自分たちが他部署を食わせてやっている」、相対的に報酬の少ない部署が肩身の狭い思いをするといったことは、そもそもナンセンスですし、それを報酬制度が助長しており問題が大きいのであれば、是正すべきだと思います。院内の調剤報酬には、そもそも各部署の独立採算やホスピタルフィーといった観点が反映されていません。

院内処方・院外処方の価格差が、時には分業バッシングのために短絡的に利用され、またある時には病院の報酬増額を狙う意図で持ち出されるのは困ったものです。
厚労省での会議の記事や議事録などを見ていると、政治家や有識者といった多くの立場の方がこの価格差について言及していますが、こうした経緯や背景については理解していない方が多いようです。
医療制度を議論し、決定する担当者は少なくとも「思いつきで物を言うが、医療のことはよく分からない」という人物ではないことが重要です。これは日本特有の問題ではないかと思います。

◆報酬制度をゼロベースで見直すべき


東京医科歯科大学の川渕教授(医療経済学)の意見です。
川渕教授は記事で、薬局の報酬制度はゼロベースから見直した方がよく、医師への疑義照会をどれぐらい実行したか、薬の重複をどの程度防げたかといった、成果によって加算すべきとしています。
これはよくないと思います。日本では薬局の商業化が顕著であり、疑義照会数にノルマが設定されるといった状況が予想されますし、他の先進国の薬事制度の趨勢を考慮しても、報酬はシンプルにすべきです。

■終わりに


今回の記事では、文中に複数の医師や薬剤師、医療コンサルタントといった人物が実名でコメントしていますが、正しいものもあれば、認識不足の箇所、視点の偏りも見受けます。医療の専門家が必ずしも医療制度やその趣旨について、十分に理解しているとは限らないということです。

また全体的な論調について、薬局へのバッシング感情は先行するものの、方向性が定まらない印象を受けました。しかしその一方で、薬局や薬剤師業界のトピックが網羅されているのは、記事に何度も登場する、「匿名の医療ジャーナリスト」の存在によるものでしょう。
実名で登場した他の人物と異なり匿名としたのは、出来上がった記事を読み、名前を出すことを躊躇したのかもしれませんし、そのジャーナリスト自身、現状を踏まえた薬局・薬剤師像のイメージが固まっていないのかもしれません。

ジャーナリズムには期待したいところですが、読者の歓心を買いたい、売れ行きも重要だという事情もあるのでしょう。簡単ではないようです。

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