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高次脳機能障害―患者の就労支援が各地で広がり実を結びつつあるそうです。

6月2日の日本経済新聞・夕刊に、交通事故や病気により脳が障害を負ったことで記憶力などが低下し、日常生活に支障を来してしまう「高次脳機能障害」と、その患者の就労支援についての記事がありました。

記事によりますと、

< 交通事故や病気で脳に障害を負ったことで記憶力や注意力などが低下し、日常生活に支障をきたす「高次脳機能障害」。外見だけでは障害があると分かりにくいため周囲の理解を得にくい面があり、元の職場に戻ったり、新たに就職するにはハードルが高い。事態を打開しようと、病院やリハビリ施設などによる就労支援が各地で広がり、実を結び始めている。>

とのことです。

…少しずつですが患者を支援する輪が広がり始めたようですね。

ただ、「高次脳機能障害」という診断がつくようになっても、見た目には障害を負っていない人と変わらないため、周囲の理解をなかなか得られないようです。

記事にもありますが、この障害の原因の1つに挙げられるのが交通事故…決して他人事ではありません。いつ自分や家族が障害を負ってもおかしくないのです。

障害を負った後に理解されず、苦しむ患者を生み出すことがないよう、正しい知識を身につけておきたいものです。

【記事の内容】


以下、記事の内容です。

―日本経済新聞 2011年6月2日・夕刊―

【記憶力低下など「高次脳機能障害」 医師ら患者の就労後押し―外見からは理解得にくい面も】


 交通事故や病気で脳に障害を負ったことで記憶力や注意力などが低下し、日常生活に支障をきたす「高次脳機能障害」。外見だけでは障害があると分かりにくいため周囲の理解を得にくい面があり、元の職場に戻ったり、新たに就職するにはハードルが高い。事態を打開しようと、病院やリハビリ施設などによる就労支援が各地で広がり、実を結び始めている。

 4月下旬、大阪府高槻市の脳神経外科「やまぐちクリニック」に高次脳機能障害を持つ20〜30代の男女10人余が集まった。互いの近況を報告し合い、空白をちりばめた文章に言葉を入れるリハビリ課題に取り組む。主に就職を目指す患者のための月1回の集いだ。

 ◇人により症状様々

 兵庫県尼崎市の北田賢明さん(33)は、この集いに通いながら2002年に介護施設に就職した。大学時代に交通事故で脳に障害を負い、記憶力が極端に低下。アルバイトに就いても物覚えや要領の悪さから、すぐに解雇されていた。

 集いに通い、同様に仕事を求める同世代の患者と悩みなどを話すことで「自分の記憶や考えを整理できた」と振り返る。「仲間に励まされるし、コミュニケーションの訓練にもなった」。就職した介護施設では高齢者の話し相手やレクリエーションの補佐をする。

 「人と接する仕事に就けて嬉しい。障害があってもお年寄りとの交流は十分こなせる」と笑顔を見せる。

 2年前から通う休職中の男性(29)は「どんな仕事が向いているか助言をもらえてありがたい」と話す。

 04年の厚生労働省の発表によると、全国で30万人に上るとみられる高次脳機能障害の患者の障害の特徴は人によって様々。気が散りやすく、簡単なミスが増えてスケジュールや名前が覚えられなくなるなど記憶に支障が出やすいが、近所で道に迷い1人での行動が難しかったり、感情のコントロールができなくなったりすることもある。

 発症直後に生活や言語の回復を図る一般的なリハビリを終えると、多くの患者は自宅に引きこもりがちになる。ただ身体能力は通常通りなので本人や家族ももどかしさを感じ、現実を受け入れられずにいら立ちを募らせる場合が多いという。

 同クリニックは1999年から就労を目的とする集いを始め、これまでに参加した患者約350人のうち1割強が復職もしくは就職した。就労後も約9割は引き続き集いに通っている。

 山口研一郎院長(61)は「工場での作業などノルマが課せられる仕事より、介護や農業など相手や対象物のペースに合わせる仕事が向いている」と指摘。「高次脳機能障害の患者にとっての就労準備には、自分できることとできないことを正しく認識し、意思を伝える力や他者との適度な距離の取り方を身につけることが必要だ」と話す。

 ◇50%が就労を希望

 東京都が高次脳機能障害の患者約200人から回答を得た08年実施の実態調査によると、障害を負った年齢は50歳代が27.3%と最も多く、20〜30歳代が前代の3割弱を占める。平均年齢は45.1歳と働き盛り世代。患者の62.6%が発症時に就労していたが引き続き就労しているのは10.1%にとどまり、無職の患者のうち50.3%が就労を希望していた。

 調査した都精神保健・医療課は「患者は事故で負傷した若年層から、脳卒中で障害を負った中高年まで幅広く、就労を最終目的としてリハビリに励む患者が多かった」と指摘する。

 高次脳機能障害支援センターを持つ千葉県千葉リハビリテーションセンター(千葉市)は07年から患者の就労移行支援を本格実施。リハビリを行う場所を「模擬職場」と呼び、作業する長机を2列に並べ、指導員がその端の“課長席”に座る。一般企業の職場風にすることで「働くことをイメージしてもらう」(太田令子・高次脳機能障害支援センター長)のが狙いだ。

 リハビリの合間には「会議」も入る。毎朝9時45分の会議で1日の目標を話し合い、午後1時、午後3時半の会議では途中経過やその日の成果を話し合う。時事問題から趣味まで様々なテーマでディベートしたり、1週間の事前準備を経て3分間で自分の考えを話したりする訓練も。

 実際の就職面接で自分の障害や状態について聞かれることが多く、「面接対策にもなる」(太田センター長)。これまで23人が支援を受け、15人が新たに就職または復職したという。

 患者や家族らの団体による取り組みも。特定非営利法人(NPO法人)「高次脳機能障害者支援『笑い太鼓』」(愛知県豊橋市)は01年から就労支援を開始。今も就職を希望する約15人が、社会福祉士らの指導で日常生活の事柄を書き留める「メモリーノート」を使う訓練をしている。

 記憶力を補うためスケジュールや仕事の手順、交通手段などをノートに書き、読み返して行動を確認する。ビジネスマナーを身につけるための面接や挨拶の練習にも取り組んでいる。

―職場の支援不可欠 国に制度拡充求める声も―

 高次脳機能障害の患者への企業の理解はまだ十分に進んでいるとはいえず、このため患者が職場に復帰したり、新たに就労したりするには、企業への支援策も不可欠となる。国が障害者全般の就労促進のために導入しているジョブコーチなどの制度も利用できるが、障害の特性に応じた支援策を求める声もある。

 高次脳機能障害の患者は、精神障害者保健福祉手帳を取得してハローワークなどを通じて就職することができる。精神障害者全体の就労は、06年に企業の障害者雇用率の算定対象となったことが後押しし、ここ数年は大企業を中心に急増している。厚労省によると、10年度にハローワークを通じて就職した精神障害者は約1万4000人で、知的障害者(約1万3000人)を初めて逆転した。

 ただ高次脳機能障害は見た目には障害が分かりづらく、同僚の理解を深め、職場環境を整える支援も必要だ。同省の「トライアル雇用」制度は、障害者を雇用したことのない企業などに、試行的に3ヵ月間雇うことで1人あたり4万円の助成金を支給。この間に企業が障害の状況を把握して経験を積み、通常の雇用に移行することを狙う。

 障害者と一緒に職場に入って仕事のサポートなどを行うと同時に、上司や同僚に障害に関する啓発を行う「ジョブコーチ」事業も利用できる。

 ただ、高次脳機能障害に特化した国の就労支援制度はない。患者の職場や地域生活への復帰を支援する都内の社会福祉法人の幹部は「高次脳機能障害は特に周囲から障害を理解してもらいにくい。今までできた仕事ができなくなったことで苦しむ人も多く、就労支援には、よりきめ細かい対応が必要だ」と話している。

以上です。

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