米ヤフーは、電子メール利用者に向けた新たな売り文句を得た。「パスワードのことは忘れよ」だ。
同社が15日にブログで明らかにしたところによると、「ヤフーメール」利用者は、ユーザー名とスマートフォンだけでサインインできるようになる。スマホを認証に使うパスワードなしのログインによってセキュリティー面が向上し、ネットユーザーを日々悩ませる最大級の煩わしさが解消されるとしている。
同社はまた、メッセージや連絡先の検索ツールが強化されたウェブ版およびモバイル版メールサービスの新バージョンも公開した。ヤフーメールを使い、AOLやホットメール、マイクロソフトのアウトルックに持つアカウントのメッセージを入手することも初めて可能になった。
電子メールは1990年代以降、ヤフーで最も人気のサービスの1つ。マリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)がスマホ時代に合わせて各種サービスの改革を進めるなかでも、同社の要であり続けている。ジェフリー・ボンフォート上級副社長(コミュニケーション担当)が14日の記者会見で語ったところによれば、ヤフーメールの1日当たりの利用の半数以上が今やモバイル端末で行われている。
ヤフーは、ボンフォート氏率いるコミュニケーション部門の強化と、メールサービス改善のための新技術構築に資源を投じている。同氏によると、パスワードなしのログイン機能開発には、過去2年間で数千万ドルを投入。検索機能向上にも多額の資金を投じたという。
ヤフーの新サービス「アカウント・キー」にサインアップしたユーザーは、デスクトップパソコンからメールアカウントにログインしようとすると、スマホにプッシュ通知が送られる。この通知はアカウントへのアクセスを要求しているコンピューターの場所を利用者に知らせる。そこで「イエス」をクリックすると、そのコンピューターにパスワードなしでのアクセスを提供する。パスワードなしでのログインは永続的に、つまり別ユーザーによるアクセスを示唆するような異常をヤフーが検知するまで提供される。
これは、グーグルなどのライバル企業が提供するいわゆる2要素認証を超えた機能だとボンフォート氏は説明する。2要素認証はユーザーの携帯電話にコードを送信し、ユーザーはその後、ウェブブラウザにそのコードを入力する必要がある。
ボンフォート氏は「業界でこれを手掛けている企業はない。アカウント・キーを導入するのは当社が初めてだ」と述べた。
ヤフーはアプリを刷新することで、グーグルに奪われたシェアの一部を取り戻したい意向がある。調査会社コムスコアによると、2013年8月の時点ではグーグルもヤフーも米国で約9600万のメールユーザーを抱えていた。しかし2年後の15年8月までに、グーグルのユーザーが40%増えて1億3500万人に達した一方、ヤフーは26%減って7100万人になった。
ヤフーの新メールアプリには、同社が13年に買収したゾブニーが開発していたメール検索技術の一部が組み込まれている。ゾブニーのCEOだったボンフォート氏は買収を通じてヤフーに加わった。
ユーザーが新しいヤフーメールの検索ボックスに1〜2文字を入力すると、アルゴリズムを使って、どの人ないしメッセージを探そうとしているのかを推測する。
同氏は「ユーザーが3文字以上入力しなければならないのだとしたら、われわれの仕事はまだ終わっていないということだ」と話した。
By DOUGLAS MACMILLAN