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こういう人が支持されてしまうことの方が恐ろしい

寂聴さん「若さは恋と革命よ」 岩手・青空説法に2千人(朝日新聞)

 僧侶で作家の瀬戸内寂聴(じゃくちょう)さん(93)=京都市=が11日、名誉住職を務める岩手県二戸(にのへ)市の天台寺で約1年5カ月ぶりの「青空説法」をした。社会問題を交えて教えを説いた。

 境内を埋めた聴衆約2千人を前に、本堂前に法衣姿で登場。昨前の続き年5月以降、圧迫骨折やがんで約1年間療養した日々や、荒廃してほとんど参拝者がいなかった、かつての天台寺を振り返った。戦後の日本について「お金、お金、お金になり、恐ろしいこと」と指摘。「本当は目に見えないものが大切。神や仏、ご先祖様は目に見えない。もっと見えないのは人の心。しかし、生きていく上で一番大切。目に見えないものによって生かされていると考えて」と説いた。

 さて瀬戸内寂聴氏が、「教えを説いた」そうです。伝えられるところでは「(戦後の日本について)お金、お金、お金になり、恐ろしいこと」と指摘したのだとか。確かにこの人、2012年にも「私が生きてきた90年で、こんな悪い時代はなかった」「戦争中の方がまだ、ましでしたよね」とも語っています。安倍総理だって、ここまで露骨に戦前・戦中賛美はしないと思われますが、まぁ恐ろしい人もいたものです。

 それはさておき現実の日本の戦後は「お金、お金、お金に」なっているのでしょうか。そうしたステレオタイプの存在は間違いないとしても、どこかシャドーボクシングの印象は拭えません。例えば就職するときだって「お金のためです」と公言できますか? むしろ採用側では「待遇ばかりを気にする学生は採用しない」と断言していたりするのが実態です。「金のため」と口にすることが憚られる、そうではなく「やりがい」だの何だのと「心」を装うことを強いられるのが日本社会のはずです。

 「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう」とは、小泉純一郎の弁です。小泉政権はまさに日本の暗黒時代、日本が世界経済の成長から取り残されていった時期であるにも関わらず、一方で首相交代まで国民の幅広い層から高い人気を保ち続けた内閣でもありました。今でも朝日新聞や民主党、時には共産党からさえも賛辞の絶えない小泉純一郎ですけれど、それは景気回復に背を向けてでも改革の(自分なりの)理想を追う姿勢もあってのことでしょうか。日本を貧しくしたけれど、金ではなく理想を追った、そんな「心」優先の政治に精神的な満足を覚えていた人は多かったのだろうと言えます。

 しかしまぁ、こうした精神論、道徳論が罷り通ってしまうことにこそ私は危機感を抱いてしまいますね。曰く「目に見えないものによって生かされている」等々、その次には「サムシング・グレート」とか言い出しかねない勢いですけれど、そんなオカルトで救われるのは金と時間に余裕のある有閑な人々――瀬戸内寂聴氏のような――だけです。現に貧困に苦しんでいる人、経済的な理由から人生の選択肢を奪われている人、ローンが払えず自殺に追い込まれる人、医療にかかる金すら捻出できない人、そうした人々を救えるのは第一に「金」です。しかし精神論者は「金」の必要性を訴える声を道徳によって封じ込めてしまいます。

 「心」の心配が先に来るのは、「金」の心配とは無縁の恵まれた人です。一方で経済的弱者にとって喫緊の課題は「心」ではなく「金」であることは言うまでもありません。しかるに瀬戸内寂聴のような「持てる者」には、それがわからないわけです。端的に言えば瀬戸内寂聴の説法は「金持ちの道楽」以外のものではなく、間違っても弱者の側に立った言説ではあり得ません。まぁ、ブルジョワ新聞やファッションで政治活動をするような人にとっては、共感しやすい領分なのではないかとも思いますが。

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