「政府は今月の月例経済報告で景気の現状について、緩やかな回復基調は続いているものの、中国経済の減速の影響で企業の生産が減っていることなどから「一部に弱さも見られる」とし、景気判断を1年ぶりに下方修正しました」
どう思います?
「どう思いますって、アベノミクスが成功していないと言わせたいのか?」
いえ、そうではないのです。景気判断の下方修正は本当に1年ぶりのことなのか、と言いたいのです。
何故私がそのようなことを言うかと言えば、先月の月例経済報告において、内閣府は、景気判断が修正されたのか、それとも据え置きなのかについて判断を示さなかったからです。
では、何故9月25日に行われた月例経済報告において、景気判断の方向性が示されなかったのでしょうか?
でも、その前に、基調判断の文章がどのように変化していったかを見てみましょう。
2015年1月
「景気は、個人消費などに弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。 」
2015年2月
(前月と同じ)「景気は、個人消費などに弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。 」
2015年3月
「景気は、企業部門に改善がみられるなど、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年4月
(前月と同じ)「景気は、企業部門に改善がみられるなど、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年5月
「景気は、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年6月
(前月と同じ)「景気は、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年7月
(前月と同じ)「景気は、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年8月
「景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年9月
「 景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。」
2015年10月(今回)
「景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。」
如何でしょうか?
眠くなってきた? そんなこと言わずにお付き合い下さい。でも、眠くなると言いたくなるのは分からないではありません。というのも、若干の文章の変化はあるものの、「景気が、緩やかな回復基調が続いている」ということに関しては一貫しているからです。
でも、どういう訳か10月発表分の今回になって、下方修正された、と。
だったら、9月に下方修正された可能性もあったのか?
しかし、実際には下方修正されなかっただけではなく、据え置きという判断もされなかったのです。つまり、内閣府として、判断を留保した、と。
これまで長い間、毎月、据え置きなのか、上方修正なのか、それとも下方修正なのかを示してきたのに、何故9月はそうしなかったのでしょう?
その点に関し、甘利大臣は当時次にように述べています。
「景気が緩やかな回復基調であることは変わりはない。黒か白かという判断は適切ではない」
但し、その一方で、実質的な下方修正であることは否定しなかったとも伝えらえています。
何とも腑に落ちない!
黒か白かという判断は適切でないというのであれば、今回だって、緩やかな回復基調が続いているという文言はそのままである訳ですから、今回だって判断を留保すべきではなかったのでしょうか?
しかし、今回はまた、方向性を示した、と。
考えてみたら、9月25日に月例経済報告が発表された前日の24日に、安倍総理は新3本の矢を打ち出し、アベノミクスが第二ステージに入ったと高らかに宣言したのでした。名目GDPを600兆円にする、と。もはや「デフレではない」という状態まで来た、と。デフレ脱却はもう目の前だ、と。
そんなに威勢のいいことを言った翌日に、どうして内閣府が景気判断を下方修正することができるでしょう?
否、内閣府の役人たちが仕事に忠実であるのならば、下方修正すべきだったのです。
しかし…そうはいっても…結局、誰も猫に鈴を付ける勇気のある者はいなかった、と。
でも、だとしたら「経済が最優先だ」など言うのは口だけの話としか思えません。何故ならば、経済の現状を正確に把握することなくして、的確な対策を講じることなどできないからなのです。
ああ情けない!
これでは中国のことを批判することなどできなくなってしまうではないですか。日本だって偉そうなことを言うが、都合の悪いことは伏せてしまうのだから似たようなものだ、と。
黒田総裁プラス安倍総理の下で、益々情報が操作されているような気がしてなりません。