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手術給付金の支払を巡る裁定事案。

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<申立人の主張>
 平成8年6月、胃がんの内視鏡手術(以下、「手術①」という)を受け、手術番号87番に該当するものとして、給付倍率10倍にて手術給付金が支払われた。

 その後、平成21年6月に「内視鏡的胃ポリープ粘膜切除術」(以下「手術②」という)を受け、同年9月に手術名「内視鏡的、十二指腸ポリープ・粘膜切除術」(以下、「手術③」という)を受けた。そこで、手術給付金を請求したところ、手術番号82番に該当するものとして、給付倍率20倍にて手術給付金が支払われた。

 しかし、下記理由により、手術②と③については、内視鏡手術を手術番号80番の「悪性新生物根治手術」として給付倍率40倍にて手術給付金を支払うとともに、手術1について支払われた追加給付金について平成8年の請求時からの遅延損害金を支払ってほしい。
 (1)平成21年6月及び9月の胃がんの手術(手術②と③)について、相手方会社と同じ約款を使用しているにもかかわらず、他社からは、給付倍率40倍の手術給付金が支払われており、給付倍率20倍で手術給付金を支払っていることには納得できない。

 (2)相手方会社において、手術①を内視鏡手術を手術番号82番「その他の悪性新生物手術」として給付倍率20倍にて支払う取扱いに遡って変更していることから、平成8年の請求時から遅延損害金を付して支払うべきである。

<保険会社の主張>
 下記理由により、申立人の請求に応ずることはできない。

 (1)申立人の受けた手術(手術②と③)は、内視鏡を用いて胃の粘膜又は粘膜下層を切除したものであって、周囲組織を広範に切除し、転移した可能性のある周辺のリンパ節を郭清(かくせい)したものではないため、「悪性新生物根治手術」には該当しない。

 (2)本件保険約款制定当時及び申立人が本件契約を締結した当時、内視鏡を用いた悪性新生物の手術は一般に普及しておらず、内視鏡を用いた手術については手術番号87番が適用されていたが、その後の医学の進歩により、内視鏡を用いた悪性新生物の治療が普及したため、内視鏡を用いて悪性新生物の治療を行った場合には,手術番号87番ではなく、同82番の「その他の悪性新生物手術」に該当すると誤解される可能性が生じてきたため、当社では、約款を改訂(平成13年4月)して、内視鏡を用いた手術については、悪性新生物の治療であっても手術番号87番に該当することを明確にした。
 (3)当該約款改訂以前に契約をした契約者については、平成20年9月22日以降に手術給付金の請求がなされた内視鏡を用いた悪性新生物の手術については、契約の時点を問わず、手術番号82番に該当するものとして、給付倍率20倍にて手術給付金を支払うこととした。

 申立人に同8年6月の手術①に係る給付金を支払った際は、そのような取扱いを行っておらず、そもそも手術番号87番に該当する手術であったため、同8年6月当時、当社が給付倍率20倍での手術給付金の支払義務を負っていたものではないから、請求時から遅延損害金を支払う必要はない。

<裁定の概要>
 裁定審査会では、申立人および相手方会社双方から提出された書面等の内容にもとづき、申立契約約款の「手術給付金額表」のうち、本件各手術に関連する手術としては、「80.悪性新生物根治手術(給付倍率40倍)」、「82.その他の悪性新生物手術(同20倍)」、「87.ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる脳・喉頭・胸・腹部臓器手術(同10倍)」が考えられ、いずれに該当するかについて検討したところ、下記理由により、申立人の申立内容は認めることができないことから、裁定書にその理由を明らかにして、裁定手続きを終了した。

 1.適用する手術の種類(給付倍率)について
 (1)相手方会社の現在の約款には、「悪性新生物根治手術」及び「その他の悪性新生物手術」につき、「(ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる手術は除く)」と記載されており、本件各手術は、いずれもファイバースコープ(内視鏡)を用いて行われたものですので、手術番号87 の手術に該当し、同80、82 の手術には該当しないことは明らかである。

 (2)他方、申立契約(平成元年)時の約款には、「(ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる手術は除く)」との記載はなく、本件各手術がいずれの手術に該当するのか必ずしも明確とは言えない。しかし、手術番号87の手術は、脳・喉頭・胸・腹部臓器と広く手術の対象となる臓器を定め、もっぱら手術手技の観点から給付倍率を定めたものと認めることができるので、申立契約時の約款の解釈としても、ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる悪性新生物手術は、全て手術番号87の手術に該当すると言え、本件各手術について、申立人の契約上の権利は、給付倍率10倍の手術給付金請求権となる。

 (3)しかし、相手方会社は、平成13年4月の改定前の約款には、現在の約款に記載されている「(ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる手術は除く)」との文言がないことから、ファイバースコープ等を用いた手術が悪性新生物の治療のために行われた場合には、保険契約者において、当該手術が悪性新生物に関する手術に該当すると誤解する可能性があったとして、契約者等保護の観点から、平成13年4月の改訂以前の約款が適用される契約について、同20年9月22日以降に手術給付金の請求がなされた手術には、「その他の悪性新生物手術」として、給付倍率20倍にて給付金を支払う取扱いとした。

 また、既に支払済みの手術についても、顧客からの申出があれば、差額を、追加で給付金として支払う取扱いとした。

 (4)したがって、相手方会社が、手術②、③について、「その他の悪性新生物」(手術番号82)を適用して、給付倍率20倍にて手術給付金を支払ったのは、相手方会社が決めた取扱い(3)のとおりであったと言える。

 (5)なお、申立人は、相手方会社の取扱いが他社と異なることを問題にするが、相手方会社の取扱いは契約者等に対して有利に約款の適用を拡大して運用するものであり、約款の適用の拡大をどのように運用するかは、専ら保険会社の判断に委ねられていると言え、他社と同様の取扱いを求めることはできない。

 2.遅延損害金について
 手術①の手術給付金の請求時点で、給付倍率20倍にて手術給付金を支払うという取扱いを行っていなかったことから、平成8年の請求時点に遡っての遅延損害金の請求を認めることはできない。

以上です。

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