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恋愛工学に対して女はいかに振る舞うべきなのか

リンク先を見る ぼくは愛を証明しようと思う。

話題のキショ、もとい奇書を読んでみた。著名ブログ「金融日誌」の著者である藤沢数希による小説である。

本書は、著者自身がとなえる「恋愛工学」なるモテマニュアルを紹介するもので、主人公で非モテの「僕」を、取引先の知り合いで恋愛工学のマスター「永沢」が一流のナンパ師へと育てていく小説の形式をとっている。

タイトルでは愛が証明するだとかなんだと能書きを垂れているが、要は、いかに効率よく何人もの女性とよろしくやるかを追究する一冊である。村上春樹を読まずにネットで批判する人々は、たぶん彼がこういう小説を書いているとイメージしているのではないだろうか? 断じてちがう。

読者層がよくわかる内容

何人もの女性とよろしく? そんなふしだらな本をいったいどのような層が読んでいるのか。それを端的に教えてくれるステキな台詞がある。

「ヒットレシオはゼロより大きい数なのだから、そのスタティスティカル・アービトラージ戦略で数を撃ち続ければ、必ずいつかはセックスできるわけですね」

はじめから読んでいないと何言ってんだこいつとなる横文字の羅列だが、それでも最後の最後で「あ、こいつはやりてーって言ってたんだ」とわかるクソ台詞である。

このセリフが、本書を真に受ける層、いわゆる「恋愛工学徒」の欲望を端的に表している。彼らやんぐえぐぜくてぃぶは、ただ単に「こうすればヤれます」と言われてもダサくて寄り付かない。「ヒットレシオ」だとか「スタティスティカル・アービトラージ」だとか、何を言っているのかわからないけれどどこかカッコいい横文字を散りばめれば、彼らやんぐえぐぜくてぃぶの抵抗感が弱まるのである。

心に残った詭弁

そんな本書であるが、ぼくがこの本の中で「感動」を覚えたのは次の箇所である。

100パーちんこをもてあます男の都合をもとに書かれた内容であって、現に多くの人の反感を買っている。著者もそれを見越しているのだろうか、「言い訳」もしている。

「永沢」から「僕」が、連絡先をゲットした全員にアタックしろと指示された場面だ。「僕」は良心の呵責をおぼえたのか、「彼女たちだって、みんな温かい血が流れている人間ですよ」「僕は彼女たちを傷つけたくありません」と抗弁する。

これに対しての「永沢」の反論が素晴らしい。引用しよう。

「傷つける?」永沢さんはふっと冷たい笑いを浮かべた。「お前、調子に乗るなよ。お前が女を傷つけるだって? お前に女を傷つけることなんてできない。たとえ、傷つけようとしたってな」

どうですかこの見事な詭弁。例えばぼくが、女性を性のボロ雑巾のように扱ってゴミ箱にポイするように別れてしまい、罪悪感に駆られたとしよう。そんなぼくに、「永沢」パイセンなら後ろからポンと肩に手をかけ「お前に女を傷つけることなんてできない。たとえ、傷つけようとしたってな」と言ってくれるのだ。「永沢」パイセンまじっすか!? 女ってまじパネーっすね! ぼくが同じことをされたら頭をかきむしりながら憤死すると思うけど。

恋愛工学のなにが恐ろしいのか

ここまでみてきたように最終目的が射精なので、ベッドでの流れも当然書いている。濡場の表現はお世辞にもうまいとは言えないが、高校時代に読んでいたフランス書院を彷彿とするものがあった。

「僕」は自宅まで女性を連れ込むと、最初は拒否されるがものの「嫌よ嫌よも好きのうち」の理論を行使して強引に押し倒し、結局最後までいってしまう。こうした強引なアプローチについては当然批判もあり、一歩間違えれば犯罪である。

だが、ぼくがこの本で恐ろしいと思ったのは、むしろ、「そんな恋愛工学でも合法的に最後までヤリ遂げることのできてしまう余地」があることの方だ。

婚姻関係がないかぎり、犯罪でないかぎり、恋愛においては何をやっても「自由」である。付き合う気がなくて関係をもつのも、複数の人と関係をもつのも、ぼくらが謳歌するこの「自由恋愛」の世界はどんなことをも許容してしまう。恋愛工学が流行る前から、こんなことをしている人はいただろう。むしろ怖いのは、それらをよしとしている「自由」の方なのである。

女性はいかに振る舞うべきか

100パーおちんちんの都合で書かれた一冊だが、女性の側にだって複数の男性との性交渉を望む人だっているだろう。中には、この本を片手に迫ってくる男であっても、ヤれればおkみたいな女性もいるかもしれない。

それはそれでかまわない。ただし、ヤるならばそこに「美学」をもってほしいものである。具体的には、ヤるのならば「性の自由」を主体的に行使してほしい。ヤりたいならヤる。ヤりたくないならヤらない。その判断を主体的に行使してほしいのである。流れでやってしまったけど、あわよくば付き合えるとか思わないでほしい。確実にそいつとは付き合えない。

これはいわゆる「ヤっている」と「ヤられている」のちがいである。お察しのとおり、このふたつを明確に分けることは非常に難しい。ほとんど自意識のさじ加減の問題である。

ただ、ヤってみてあとから「うわ、なんで私、あんな男とヤったんだろう……」という後悔するとすれば、ぼくはそれを「自由」ではないと考える。また「うわ、なんで私、あんな男とヤったんだろう…」と後悔しなかった場合も、実はそれは「後悔する勇気」がないだけで、「最初から体だけの関係でしたけどなにか?」と自ら偽装記憶を埋め込んでいる場合もある。ご注意を。

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