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「抑止力」など無い

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映画「ブラックホークダウン」はソマリアへアメリカが軍事介入した時のエピソードを基にした話*1ですが、登場するソマリア人がとにかくゾンビのような扱いでした。モガディシオ市街地から抜け出そうとする米軍兵士に群がり攻撃する。それを薙ぎ倒す米軍の攻撃。そこには彼我の交流など無く、ただコミュニケーションの否定を象徴していました。

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米軍の挙げた「戦果」は凄まじいばかりで
ハウ*2はそれが腹立たしかった。自分たちは、受けた損耗以上の損耗を相手にあたえたのだ。酷い窮地にほうりこまれて、生き残っただけでなく、敵を打ちのめしたのだ。敵の推定死者数はわからないが、数字はどうあれ、アメリカ史上もっとも一方的な戦闘のひとつだとハウは考えていた。

と記されています。戦闘の目的や成果は殺害数かよ、とげんなりしてしまいます。

ところが、原作にはこのような話があったのです。
誰しもが、また街に行けという命令が出るのをおそれていたが、持てるかぎりの武器と装甲と弾薬を用意して出発する覚悟はあった。メイス*3はなにも持たずに出ていった。彼は、生きていようが、死体になっていようが、自分の同胞を捜しだすつもりだった。メイスを見たレインジャーは、彼の勇気と沈着さに畏怖の念を抱いた。

一見、危険に見える行為ですが、単身完全武装でモガディシオ市街に潜入すれば間違いなく短時間であの世行きだったでしょう。彼が無事に戻ってこられたのは“丸腰”だったからです。彼はそれを充分に承知していました。だから、丸腰で潜入したのです。もちろん、相応のリスクを負う覚悟と度胸と慎重な計画が必要ですが。

ほとんどゾンビにしか見えず、暴徒の集団として国際社会に扱われるソマリアの人々ですが、高野秀行は「謎の独立国家ソマリランド」で、そこに我々の想定するのとは若干違うかもしれないが、社会が成立し人の営みがあることを活写しています。こちらが相手を悪魔化し、強圧的に望めば相応の態度で返されます。相手を人として認めて害意の無い事を示せば、やはり相応の態度で接することが出来る、という好例でしょう。

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あなたにとって、街行く人は敵ですか?武器を、抑止力を持たなければ安心できませんか?

そうそう、個人に「抑止力」が与えられ、それが“保証”されているアメリカって、犯罪が少ないんでしたっけ?アメリカで一番多く起きる銃器犯罪は“身内に向けたもの”です。

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個人レベルだけでなく、国家でも同様の事が云えます。

ドイツとフランスは積年の敵国であり、過去何度となく戦火を交えました。日本と中国など比ではありません。第一次世界大戦や第二次世界大戦時も両国ともに多大な犠牲を払ったのです。ですが、現在、両国国境において互いの戦力は相手に向けられてはいません。そのように信頼関係を築くことだって可能なのです。

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日本と中国で「抑止力」に頼らなければ「防衛」出来ない、という「自称現実的」な対応など、そうした現実の前には狭い了見でしかありません。先例はいくらもあるのですから。

ですから、中国の脅威に対抗する抑止力 というまやかしから否定しませんか。我々は中国を通して自身の姿に怯えているだけです。彼らは日本の写し鏡なのです。

相互軍縮を進めるなら、まず提案し行動するのは日本の側にしましょう。その勇気こそが、誇らしい素晴らしい日本にふさわしいのではないでしょうか。

では。

*1:原作はノンフィクション
*2:作戦に参加したデルタフォースの一等軍曹
*3:作戦に参加したデルタフォースの三等軍曹

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