[東京 13日 ロイター] - 産業革新機構の勝又幹英社長は13日、ロイターとのインタビューで、経営再建中のシャープ<6753.T>への資本参加の可能性について「会社として成長資金のニーズがあるなら、投資方針に合致する範囲で相談は受けていく」との方針を示した。
勝又社長は今年6月に就任。2009年の設立から同機構のトップを務めた能見公一前社長の後を引き継いだ。能見社長時代には、2000億円を出資したジャパンディスプレイ<6740.T>、顧客8社と共同で1500億円を出資したルネサスエレクトロニクス<6723.T>の2件の大型投資があるが、勝又社長は、今後も1000億円を超える案件が出てくる可能性はある、との認識を示した。
シャープへの投資については「個別案件なので何とも言えない」としながらも、「成長資金を投下することで潜在的な成長力を顕在化することができる機会があるなら、個別案件としてみていく」と語った。一方で、「再生のための再生は投資方針に合致しない」として、救済を目的とする資本注入は行わない姿勢を強調した。
革新機構はジャパンディスプレイ(JDI)に35%を出資する筆頭株主でもあるが、シャープとJDIの連携については「現経営陣の判断が第一で、その上で、われわれが関与するのかしないかという話になる」との見解を示した。
インタビューの詳細は以下の通り。
――JDI、ルネサスに続き、今後も1000億円を超える投資はあり得るか。
「相手先がある話だが、先方の成長戦略にわれわれのポジションがフィットする案件はまだあるので、その可能性はある。われわれは(2兆円の)政府保証枠を使い切ることがミッションではないが、個々の案件と発行体の成長戦略のフィットとがあるかどうかで考えていく」
――JDIは株式の一部売却で上場益を確保した。
「われわれ官民ファンドにとって、成功したかどうかは、リターンだけで決められない。元本回収でボトムラインは守りつつ、産業の競争力強化や、規模の利益に資するかという面での評価がある。JDIは今のところリターンは確保しているが、最終的なエグジットについては、官民ファンドの仕事として考えていかなければならない」
――ルネサスも投資して以来、株価が上昇して含み益を確保しているが、今後の方針は。
「日本の半導体の会社がわれわれの資金で立ち直っている例だ。われわれとして一定の仕事はしつつあるが、海外に目を転じると日本の半導体産業は世界的な合従連衡の大きな流れにある」
――ルネサス中心に半導体の再編を考えているのか。
「半導体では、海外で起きている大きな業界の流れの中で、われわれとしてまだ役に立てる余地も考えなければならない。一方で、日本独自で成長して自走できると判断したなら、スタンドアローンの成長戦略もある。官民ファンドとしてどこまで支援できるかが、これからのテーマになる」
――液晶の再編を考えているか。シャープは投資対象として関心あるか。
「個別案件なので何とも言えないが、シャープは歴史のある会社であり、そこで会社としての成長資金のニーズがあるということなら、投資方針に合致する範囲において、今後とも相談は受けていきたい」
「個別の会社というよりも産業ベースで考えている。ひとつの会社に成長資金を投下することで、潜在的な成長力やアップサイドのポテンシャルを顕在化させて、成長を加速させる機会があれば、個別案件としてみていくという方針に変わりはない」
――シャープ本体への投資は救済措置ととられないか。
「再生のための再生は、投資方針には合致しないのでやらない。ただ、資金の入れ方で特定の産業が成長軌道に乗れるという案件、そこが既存の融資や資本市場からの資金が調達できない、何か仕組みが必要というなら、金融機能を持ったファンドが入る余地はある」
――シャープとJDIの連携は考えているか。
「それはJDI自身の成長戦略としてどう考えるかだ。提携先との戦略的なフィットがあるかどうかだが、われわれのような金融出身の人間がすぐに判断できることではない。現経営陣の判断があった上で、われわれが関与するのかしないかという話になる」
――液晶を統合すると、大口顧客のシェアを減らす可能性もある。
「(投資先の)顧客の意向も大事。最終的に判断する場合には、それも視野に入れなければいけない。もしも独占禁止法で問題があるなら、それについてもきちんとした対応をするのも大事な観点だ」
――電機業界に再編の余地はまだあるか。
「まだプレーヤーは多いし、多角化している。経営判断の中で、OBの意向もあるなど、なかなか思い切ったことができなかったが、どこかで経営の舵を切らなければいけない会社も出てくるし、そこでリスクマネーが必要になる局面が出てくると思う」
*見出しを手直しして再送します。
(村井令二 浦中大我 山崎牧子 編集:田中志保)