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あなたの子供はデジタル中毒にはならない

新たなテクノロジーがもたらす悪影響に怒りの声が上がり、あるとき、1人の新聞記者がそれに同調してこう書いた。「まともに考えれば、多大な被害を引き起こしたことに疑いの余地はない」。新たなテクノロジーは「浅薄で唐突、情報の取捨選択がされておらず、真実を追求するにはスピードが速すぎる」。この記事が書かれたのは1858年で、ここで糾弾されているのは電報である。同じように電話、ラジオ、テレビもこの世の終わりをもたらす元凶と見なされてきた。

 現代でそれに当たるのがスマートフォンのような携帯用機器だ。親は、10代の子供に使わせたら今以上に社会から疎外されたり遮断されたりするのではないかと不安に感じており、多くの記者や物書きはそれに賛同したり、懸念を煽(あお)ったりしている。過去のテクノロジーは全て、比較的害がないことが分かっているのに、なぜ私たちはこれほど恐れるのだろう。

 理由の1つとして考えられるのは、しかたのないことだが、テクノロジーが出現してすぐにその影響を評価することはできないからだ。次世代に対する影響を考えるときはなおさらである。その一方で、不安や具体的な事例はあっという間に広まる。統計学で昔から言われているように、具体的な事例の寄せ集めは「データ」とは呼べない。「論説記事」と思った方がいいいかもしれない。

 米デューク大学のマデリン・ジョージ、キャンディス・オジャーズの両氏は心理学の学術誌「パースペクティブス・イン・サイコロジカル・サイエンス」に来月掲載される論文の中で、若者に対するソーシャルメディアの影響についてこれまでに示された科学的証拠を再検討した。それによると、10代の若者は確かにデジタルの世界にどっぷりと漬かっている。ある調査では、10代の若者は1日当たり平均で60通の電子メールを送信し、若者の78%がインターネットに接続可能な携帯電話を所有していることが分かった。

 しかし、ジョージ氏らの研究では、親の不安を裏付ける証拠もほとんど見つからなかった。若者にとっては、携帯電話でつながった世界での経験が現実の世界での経験に取って代わるというより、おおむねどちらも並行して存在している。若者はほとんどの場合、携帯電話やインターネットとは関係ないところで知り合った友人とのやりとりに携帯機器を使っている。インターネット上で嫌な経験をすることもあるが、それらは現実の世界でも経験するようなことと大きな差はない。

 オランダとバミューダで2007年と2013年に数千人の若者を対象に行われた大規模調査によると、携帯電話などの通信機器を使って友人と連絡を取り合うことが多い若者のほうが友人が多く、友人関係も良好だと回答することが多かった。他の小規模の研究でもこのことは証明されている。携帯電話を頻繁に利用するようになって友人関係が変わったとか悪化したという証拠はない。

 ジョージ氏らは、モバイル・テクノロジーについての親が抱える不安――親との関係が悪くなることや知らない人の影響を受けやすくなるなど――を集めたところ、こうした懸念を裏付ける事例はほとんど見つからなかった。研究で判明したのは、携帯電話などの画面が睡眠に実に破壊的な影響を及ぼしているらしいということだ。これは発光ダイオード(LED)照明の影響による可能性もあるし、人とのやり取りで興奮するせいかもしれない。したがって、お子さんには携帯電話を持ってベッドに入らせないほうがよい。(それはあなたも同じだ)

 この研究では、こうした問題はごく最近の現象であり、過去の研究結果にはどうしても限界があることも強調している。しかし、これまでの研究結果は不安を覚えさせるよりも安心感を与えるもののほうが多い。

 こうした研究結果があり、テクノロジーがこの世に終わりをもたらすという過去の予言がことごとく外れているにもかかわらず、なぜわれわれは「今回は違う」と思うのだろう。大人と子供ではテクノロジーや文化の変化に対する感覚が違うからかもしれない。心理学者はこれを「文化的なラチェット(一方向にしか回らない歯車)効果」と呼ぶ。どの時代でも子供は過去の世代のテクノロジーを何の苦もなく身につける。しかし、どの時代にも新しいテクノロジーがあるが、大人として新しいテクノロジーを習得するのは子供時代よりはるかに難しい。

 登場したばかりのテクノロジーがあまりに鮮烈な印象を与えるため、歴史が繰り返していることに気付かないのも無理はない。自分が生まれる前の時代がエデンの園のように太古の昔に感じられ、自分の子供が生まれた後の時代が近未来を描いた映画「マッドマックス」のように感じられるのは致し方ないことなのだ。

By ALISON GOPNIK

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