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小手先の景気対策では、生産年齢人口の減少による内需縮小に全く対処できない

 久しぶりに、読み応えのある新書に出会いました。既にあちこちのサイトで紹介されている藻谷浩介著「デフレの正体 −経済は「人口の波」で動く− (角川oneテーマ21)」です。

 この書籍の内容を一言で表すとすれば、エントリータイトル通りとなるのですが、「団塊世代の大量退職によって今後生じる現役世代の急速な減少と高齢者の激増が、どれだけ極端な内需の縮小を招くか」ということが、国政調査などのデータをわかりやすい図表で見える化しながら、丁寧に論証されています。

 このブログでも都会と地方の経済格差に関してはいくつか記述してきたように思いますが、この書籍を読んで、「都会の方こそ今後は深刻な需要不足に陥る可能性が高い」ということがよくわかりました。地方から首都圏に集められた団塊世代が今まさに一斉に退職をしています。彼らは65歳を過ぎて年金所得がもらえるようになってもそれほど大きな消費はせず、将来の医療関連支出に備えてひたすら貯蓄を増やします。平均寿命が延びた親世代の遺産相続もこの世代に集中しますから、結局財産が死蔵されて消費は増えません。一方で消費意欲旺盛なはずの団塊ジュニア以下の若年世帯はどんどん所得が減少しています。著者の指摘するように、首都圏の内需の大幅縮小はより深刻で、むしろこれからが本番ということなのでしょう。それにしても、絶対額は別として、個人所得と小売販売額の伸び率がここ10年最も高いのが、沖縄戦のために老齢人口比率が小さく、高水準の出生率のおかげで人口も伸びている沖縄県だというのが、なんとも意外でした。

 書籍の2/3は、ひたすらに生産年齢人口減少→消費減少→供給過剰の過当競争→賃金下落→更なる内需縮小のデフレスパイラルがこれでもかというほど語られており、読み進めれば進めるほど暗くなります(もちろんデフレスパイラルの原因は他にも様々あるのでしょうが、著者の指摘も一つの原因であることは間違いないでしょう。)

 そして、最後の1/3になってようやく著者なりに「ではどうすればよいのか」という処方箋が、以下のように示されています。

① 高齢富裕層から若者への所得移転
② 女性の就労と経営参加
③ 労働者ではなく外国人観光客、短期定住者の受入

 いずれもよく言われる処方箋ではあるわけですが、特に②は本当に待ったなしで進める必要があると思いました。著書にあった以下の図(p231より転載)は、「若年女性の就業率(X軸)と出生率(Y軸)が正の相関」にあることを明確に示しています。両者の因果関係は定かではありませんが、「夫婦共働きが当たり前」という環境を整えて若者世代の所得を少しでも底上げして消費を増やさないと、この国は本当に持たなくなりそうです。

     女性就業率と出生率.jpg

 ① も国が住宅資金贈与の促進などを政策で進めていますが、その行き先も高齢世帯というのではあまり意味がありません。高齢者から若年世代への所得移転をもっと積極的に促すには、もう人為的にインフレを起こすしかないのかもしれません。

 誰もが入手できるデータを使って、ここまでわかりやすく現状の日本経済の問題点を指摘している書籍はなかなかないように思いました。「製造業の海外移転などで、定型化しやすい低付加価値労働が海外流出し、雇用機会そのものが減ってしまっているという現状にどう対処すれば良いのか」というもうひとつの重要な問いへの処方箋が十分に記載されていなかったのは残念ではありますが、「今年一押しの新書」という評判に誤りはないように思います。少なくとも、ここにある図表を丹念に追いかけて理解するだけでも700円のバリューは十分にあると思いますので、通勤時の読書の友に皆さんもどうぞ。

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