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- 2015年10月12日 05:30
IoTは通信政策を問いなおす
■IoTは通信政策を問いなおす
総務省近未来ICTセッション。前回はドローン規制についてでした。
今回は、IoT、ロボティクス、AI、ウェアラブルについての議論。
ぼくはドローンよりこちらの問題のほうがうんと本質的で、国政上急がなければいけないテーマだと考えます。そして、これを総務省が取り上げるのはとても大事なことだと考えます。
この回はシスコ、コマツ、GE,ソニーが動向をプレゼンし、その質疑応答でした。IoTやウェアラブルに関する米欧その他の先端事例が網羅され、体系だった知識をいただきました。ありがたいことです。
ただ、ぼくは、民間の取組や技術動向よりも、それを行政としてどう扱うかに強い問題意識があります。政府や産学の関係者が集まって、勉強している余裕はないと思うのです。
IoTやAIに対する政策テーマとしては、技術開発の支援や標準化がまず浮かび上がります。その点、ドローンに対する規制策よりも、攻めの行政であり、性に合います。でも、IoTやAIは、行政に対してもっと本質的な問いかけを投げかけます。
頭の整理がつかないままに会議に参加し、でもそうした焦りから、またも空気を読まず、いや、あえて空気を破って、質疑と離れたことをコメントしてしまいました。メモしておきます。
総務省及び委員・関係者のみなさますみませんでした。
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この問題について総務省が取り組むのは重要と考えます。3点コメントします。
1. IoTを今なぜ総務省で議論するかがポイント。
30年前に電気通信事業法が制定され、通信行政が転換した。それまでは公衆電気通信法であった。ぼくは公衆法を運用した最後の世代。それが事業法に移行し、電気通信事業部も設置された。
その事業法第1条「目的」は、「通信役務の確保」と「利用者保護」の2点となっている。通信役務は、設備を「他人」に供給すること。利用者も「人」。つまり、行政対象はあくまでヒト。
だがIoTはモノ同士をつなぐもの。では、その行政目的は何なのか。それを規制するのも、振興するのも、行政の手段だ。目的は何なのか。それが根本的に問われる事態。それを考えることが必要。
2. IoTは利用政策が重要。
既に現実問題としてIoTやAIの利用政策が重要になっている。ロボットや自動走行車は、勝手に仕事をし、事故も起こす。バーチャルの世界でも、自分のAIエージェントが自分の代わりに話し、仕事をし、トラブルも起こす。その権利と義務はどうなるのか。その責任分界はどうするのか。
3. ウェアラブル。
15年前、ぼくがMITにいたころには既に24時間ウェアラブルを装着する研究者たちがいた。技術はあった。が、普及しなかった。PC、ケータイ、ネットの普及を待つ必要があったとも言われるが、カッコ悪かっただけかもしれない。とすると、今後の普及速度も不明。
今回のウェアラブル議論はUIの問題だ。視聴覚に加え、触覚、体温、脈拍などをセンシングするといっても、その面では通信行政としてのインパクトは少ないのではないか。
他方、ウェアラブルはモバイルと異なる点には注意を要する。モバイル=いつでも、だが、ウェアラブル=いつも。24時間、常時つながっていることのインパクトと問題を行政として考えておくべきではないか。
運転時のグーグルグラス着用を禁ずる法案がアメリカ8州に提出されたが、取締り困難という理由でまだ不成立と聞く。しかしいずれ、逆にGoogleは安全運転機能をソフトで提供するのではないか。するとグラス着用のほうが安全となり、いずれ着用を義務づける法案が提出されることも考えられる。
つまり、ウェアラブルがもたらす不安もあれば、ウェアラブルがもたらす安心もあろう。その近未来を空想し、行政課題を組み立てることが求められる。 以上です。