突然ですが、日韓通貨スワップなんてものがありましたよね。
で、その日韓通貨スワップについて、どう思っていましたか?
えっ、通貨スワップってなにかって、言うのですか?
一般的に通貨スワップ協定というのは、2国間の間で結ばれる協定で、いずれかの国が経済危機に陥った時に備えて事前に通貨を融通し合うことを定めておくものです。通常は、各国の中央銀行同士で締結されることが多いのですが、日韓の場合には、さらに日本政府(外為特別会計)が直接関与していたことも特徴的であると言えるでしょう。
ただ、この日韓通貨スワップのおかしなところは、スワップと言いながら韓国側が提供するのは韓国通貨のウォンであるのに、日本が提供するのはドルなのです。
おかしいでしょ?
というのも、日本が仮に危機に見舞われた際、韓国からウォンを融通してもらってそれほど役に立つとは思えないからです。
要するに、この日韓通貨スワップ協定は、形式的には同等を装いながら、実態としては日本による韓国に対する一方的な支援でしかなかったのです。
で、皆さんご承知のように、2012年秋に当時の韓国の大統領が竹島に上陸するなどしたことから両国の関係がぎくしゃくし、この通貨スワップ協定の期限延長が取り止めとなり、そして、今年の2月には完全に終了したのです。
日韓通貨スワップ協定が終了して、よかったと思っているようですね。
でも、そのように感じている人にとっては悪いニュースがあるのです。
麻生財務大臣と黒田日銀総裁がG20会合に出席するためにペルーに出張していた訳ですが…現地で中国、韓国のカウンターパートと会談したというニュースが流れていました。
彼らは何を話し合ったのか?
こんな声明が発せられているのです。
「世界経済の成長は予想下回っている、地域の金融安定を脅かす課題が存在」
地域の金融安定を脅かす課題が存在しているのだ、と。
何を意味しているかお分かりですか?
中国経済が減速しているでしょ? そのため中国では資本の流出が起きており、また、その煽りを受け新興経済国においても資本流出が懸念されているのです。当然のことながら韓国もうかうかしてはおれない、と。
グラフをご覧下さい。
画像を見る
中国の外貨準備の推移を示しています。
右肩上がりのグラフが当たり前だと思っていたら、中国では最近外貨準備が減る傾向にあるのです。
何故?
それは、繰り返しになりますが、中国の景気減速を嫌気して海外の投資家が資本を引き上げる動きに出ているからなのです。
つまり、海外の投資家が手持ちの人民元を売ってドルに交換し、ドルを国外に持ち出そうとすると人民元安の圧力がかかりますが、それに対して中国当局が過度な人民元安を起さないようにと人民元を買い支えているので、外貨準備高が減り始めているのです。
まあ、それでも中国は3.5兆ドルもの外貨を有しているために、急に何かが起きるという懸念は少ないと思いますが…しかし、韓国はそれほど安心してはいられない、と。
というよりも、韓国は常にそのような心配に苛まれていたために、日本としても通貨スワップ協定を結び韓国を支援してきたという経緯があるのです。
「地域の金融安定を脅かす課題」とは、そのようなことを意味していると理解すべきなのです。
では、どうするか?
だから、またぞろ通貨スワップを再開するのではないかという疑念が生じるのです。
特に、黒田総裁などは、財務官当時からアジア版の通貨圏、或いはアジア版のIMFを創ることを夢見ていた人ですから、この種の話には大変関心があるのです。
しか~し…
慰安婦問題などを別としても、日韓通貨スワップにはおかしなことばかりなのです。
そもそも、日本はドルを提供するのに、何故韓国はウォンを提供するだけで済むのか?
百歩譲って、日本もそのときに円を提供するなら一応、形は整う。でも、その場合でも、円はSDRの構成通貨であるのに、ウォンはなんでもない、と。
だとしたら、通貨スワップという名を借りた経済援助であると考えなければなりませんが、そもそもかつて円借款の供与を受けていた韓国は、今や卒業国となっているのです。
当たり前ですよね。それだけ経済的に成長を成し遂げたからです。
だから、日本の援助の基準からすれば、韓国は援助の対象にはなり得ないのです。
しかし、今言ったように、日本は、自ら設定した基準をかいくぐるようにして韓国を支援してきたのです。
おかしいではないですか?
仮にここでまた中途半端な形で韓国との間で通貨スワップ協定を結んでも、韓国自身のためにならないし、日本国民の多くも決して納得しないでしょう。
記事
- 2015年10月09日 11:17