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楽天・三木谷、カネは出さずに口は出す

内閣参与(特命担当) 飯島 勲

球団を私物化、サッカーでも……

プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが最下位争いで低迷している。7月末に田代富雄打撃コーチが「成績不振」を理由に退団。翌朝のスポーツ紙は一斉に「三木谷浩史オーナーの現場介入に耐えられなかった」と理由を報じた。8月にはデーブ大久保監督の今季限りの辞任も発表された。東北楽天では試合前に監督が決めた打順をオーナーに報告しなければならず、「現場介入しまくり、です」とメディアに言い放ち、必ず赤ペンが入って戻ってくるという報道もあったため、「球団を私物化している」「これでは勝てない」と監督やコーチに同情的な意見がでた。

三木谷は大学までテニス部に所属していて野球経験者ではない。メジャーリーグのとあるGMの著書にあったデータ分析に感化され、自分でも打撃オーダーなどを研究して指示を出していたらしい。しかし、勝てばオーナーの指示のおかげ、負ければ現場の責任では、選手も監督もコーチもやる気など出るはずがない。日本プロ野球選手会発表の平均年俸調査(2015年シーズン)でも、ソフトバンクの5798万円に対し、楽天は2956万円(パ・リーグ最下位)である。三木谷の「口は出すがカネは出さない」姿勢は明確だ。

三木谷はサッカーJリーグでも、オーナーとなったヴィッセル神戸で気に入らない監督を次々解任してチームをJ2に降格させた“実績”がある。このときはサポーターが試合を見にいかないというストライキを決行し、クラブの収入が激減。ビジネスを重視する三木谷は現場介入を控えるようになったという。最下位争いでも球団経営は黒字続きという楽天のファンも、そろそろ怒ったほうがいいのではないか。バカにされている気がしてならない。

スポーツの話が長くなってしまった。しかし、メディアで一流の経営者扱いを受ける三木谷の行うことが必ずしもいい結果を生んでいないのは明らかだ。三木谷は、野球・サッカーにとどまらず、国民の安全を脅かす分野にまで口を出し始めた。

三木谷は近年、自身の発案で誕生させたIT関連企業中心の経済団体「新経済連盟」(新経連)の代表理事として、政府や自民党の経済関係の会議のメンバーに名を連ねるようになった。政府では日本経済再生本部の産業競争力会議の議員となっているほか、自民党の規制改革推進委員会や日本経済再生本部経済好循環実現委員会でも自分の事業に関わる発言を繰り返している。つまり、国の政策の方向性を示す会議を自分の営業活動に利用している疑いがあるのだ。

いま、三木谷は「シェアリングエコノミー」の推進を政府の成長戦略の柱として押し込もうとしている。「シェアリングエコノミー」とは、余っているモノや人などのリソースを使いたい人に提供するという、新しい形の金儲けだ。貸し手と借り手のやりとりが主にインターネットを通じて行われるため、IT関連企業が集まる新経連の利益に直結している。パソナグループ会長に就任した竹中平蔵が政府の諮問委員として派遣法改正を自社に有利な方向に進める発言をするようなものだ。

私が特にまずいと思うのは、「シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備」という大義名分のもと、道路運送法を改正させ、白タク(無許可タクシー)の合法化を進めようとしていることだ。

2015年3月、楽天は米国でスマートフォンを使った配車サービスを運営するLyft(リフト)という会社への3億ドルの出資を発表した。同社は、自動車を所有し運転できる人と、他人の運転で移動したい人を仲介する「ライドシェア」のサービスを提供している「シェアリングエコノミー」の成長株だ。しかし、旅客運送の営業許可を持たない素人ドライバーが一般の乗客を運ぶのだから、白タク営業以外の何ものでもない。

4月には、新経連が主催する新経済サミットにリフトのジマー社長が登場し、ライドシェアの日本進出を猛烈にアピールした。経団連に対抗してつくった新経連は、公的な意味の強い組織のはずだ。なぜ、その組織が主催する会に、自分の出資した会社のトップを招いて自社の宣伝をさせるのか。代表理事である三木谷が新経連を私物化しているのではないかという疑問を、新経連所属企業は一度は持つべきだ。

リフト側は、このサービスは「相乗り」の仲介であり、白タクとは違うと主張した。運転手への支払いも、「運賃」ではなく「寄付」だから問題ないという。そんな誤魔化しで安全性を無視した営業を行おうとする商魂が、私には理解できない。

楽天セールでの組織的詐欺

同社の米国でのライバルである同業のUber(ウーバー)はすでに日本進出を果たしている。

15年2月、ウーバーは福岡市で“実証実験”と称して自家用車による無償旅客運送を始めた。乗客から運賃をとらず、ドライバーに対して「データ提供料」として走行時間に応じた対価を支払うが、「運賃は無償だから問題ない」としていたが、国交省からは「白タクに当たる疑いが濃厚」だと実験中止を言い渡された。当たり前だ。白タクとは、事業用のナンバーは緑色なのに対し、一般車両の白ナンバー車を使うことが名前の由来だ。どういう名目でお客からお金をとろうと、ライドシェアとは白タク行為だろう。

そもそもライドシェアが受け入れられた国というのは、もともとタクシーサービスの水準が低く、利用者からの苦情が絶えなかった地域が中心だ。タクシーは、見ず知らずの人間と初対面で2人きりになる密室空間であり、犯罪現場となることもある。これまで日本のタクシーの防犯課題といえば、しばしば強盗の被害者となってしまう運転手をどう守るかだった。しかし、ライドシェアは、運転免許と最低限の保険があれば、採用試験も研修もなく、ネット上の手続きだけで簡単に運転手になれてしまう。もしも今後、こうした白タクでレイプ事件や強盗事件が発生したとしても、ウーバーやリフトは「自分たちは場を提供しただけだ」と逃げるのだろう。

もし、このような流れの中で、ライドシェアを合法化するなら、実施するサービスで事故や犯罪が起きた場合は、リフトにも営業停止などの重たい責任を負わせるべきだ。

そうでないとタクシー運転手の研修に莫大な経費を払い、何か起きた際は国交省の指導が入るタクシー会社にあまりに不公平だ。営業車数の厳しい制限も実施されている。

それは、楽天市場にもいえる。楽天市場などのネットモールも免許制にして、もし、楽天市場内の店舗で継続的に犯罪が起きたら、免許を剥奪できるような法改正をすべきだ。組織的な詐欺行為だった楽天セールの例を考えても、今後も同様のことを起こす可能性が極めて高い。

楽天がファンや消費者に対してやっているようなことを、政府が国民に行う必要はまったくない。三木谷はあまりに世間をなめすぎだと思う。

(文中敬称略)

『ひみつの教養』(プレジデント社)
リンク先を見る [著] 飯島 勲
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