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野党やメディアが「若者がついに動き出した」と煽るのは、若者全体を見ていない証拠

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“モヤモヤしている人”に対するアプローチこそ重要

-国会前でのデモについては、今後安保法制に賛意を示した議員の落選運動を行っていくと一部では報道されています。

原田:法案が成立した後も様々な活動の方向性があると思います。

あくまでの現在の「与党側は敵だ」という構図を続けていくのか。法案の成立という事実は認めつつも廃案にするための方法を模索するのか。より健全な安全保障の向き合い方や集団的自衛権を行使する具体的なシチュエーション、行使後の検証をどうするのかといった議論に進むのか。

私は、どれが良いとは言えません。ただ、「廃案にするんだ」というのであれば、どのような戦略を取るのか興味があります。一方で、今まで彼らは熱くなっていたし、一緒に熱くなっていた数十万の人がいましたが、逆にいえば他の数千万人の人は熱くなっていないわけです。その熱くなっていない数千万人を巻き込むための戦略を取る場合も、その内容には非常に興味があります。

「One Voice Campaign」の場合、当初2012年の総選挙での解禁を目指していましたが、間に合わなかったという一つの挫折がありました。その際には、政権交代により新たに与党になった自民党にどうアプローチするのか、という議論が必要でした。また、いくつかの党が、公職選挙法改正の法案を出した時にも、それぞれの特色や我々の要望との食い違いがありました。その際にも、粗々かもしれませが、「One Voice Campaign」が望む対案をひとつ出して、その対案を元に議論をするというフェイズまで持っていきました。その状況に応じて、色々と戦略を考える必要はあると思います。

-先程、「中立を意識している」という話がありましたが、自身の政治的志向も当然あると思うので、運動をする以上、完全に中立というのは難しいと思います。

原田:私が、どうして中立を意識するのかというと、「原田は比較的中立な奴だ」と周囲が理解しているからこそ、「選挙の争点は何?」「そもそも参議院って何?」といったことを聞いてくれるからです。

私が「この法案についてはこっち」「○○党支持」だと思われた瞬間、そういうニーズが、私のところに届かなくなってしまう。私の活動においてフォローしなければいけないのは、安保賛成の若者でも反対の若者でもありません。「安保法制という何か大きな法案があって大事なのは分かるんだけど、よくわからないし決めきれないよね」「どんな議論されているかよく分からないよね」という人の受け皿にならないといけないと思っています。

旗印を明確にした方が、支持は広がりやすいかもしれませんが、明確に賛成・反対を言える有権者ばかりじゃありません。私の実感ですが、やっぱりモヤモヤしている若者というのも多いと思います。

現状の私の活動において重要なのは、モヤモヤしている人を賛成・反対のどちらかに送り込むというよりも、その人たちの政治への関心を維持することです。安保法案の影響で、政治への関心が非常に高まっている時期に「政治って結局おもしろくないよね」「ダメだよね」と失望させずに、いかに「安保法案以外についても見ていこう」と考えてもらえるかが重要です。「普通の人」というと定義が難しいですが、普段から政治に大きな興味関心を持っていない人に、いかに触れてもらうかということを重視しています。

-メディアは、賛成もしくは反対の活動が「こんなに盛り上がっています」といった取り上げ方をするのですが、そうではなくてモヤモヤしている人が多いし、本気で活動を広げようと思ったら、そこにこそアプローチしないといけないですよね。

原田:最近の政治全体に言えると思うのですが、無党派層を狙いに行かないですよね。自分たちの支持層にアピールするばかりで、本気で投票率を上げて無党派層を取り込んで勝とうと動いていないように思います。

今回私たちは、賛成か反対かモヤモヤした人向けに、Yahoo!Japanと「ASK NIPPON安全保障法案」という企画をやりました。このように、内容は薄いかもしれませんが、国会の議論やテレビの討論番組論とは、違う見方を提供する取り組みをしていきたいと思います。

-メディアの人間として理解できる部分もあるのですが、今回は物語にフォーカスした報道も多かったように思います。「普通の若者が…」「普通のママが…」がみたい報道を多く見かけました。

原田:最初にも指摘した通り、そうした動きが出てきたこと自体は、本当に新しいですし、すごいことだと思います。ただ、そうした動きがあることと、法案の中身をどうすべきか、というのは、まったく別とは言わないですけど、イコールにはなりません。

「若者が立ち上がった」「若者が関心ある」ということは、議論の内容に加味される必要はあるかもしれませんが、本質ではないでしょう。また、「若者代表」といったようなラベルを貼ることで離れていく若者も多いと思います。賛成でも反対でもない、そもそも安保は知らないという若者は、賛成派にも反対派にも、なんか「違うよね」と思うのではないでしょうか。

似たようなことは、20代の人が生まれ育った街で立候補するとよく起こります。お母さん同士のネットワークで、「◯◯家のなんとかちゃんは、立候補して政治に興味を持ってすごいわね」みたい噂が出回ると、元々仲間だったはずの同級生が「どうせ俺は興味ねえよ」となって離れていってしまうのです。

それほど「若者代表」みたいな形で打ち出さなくても、「若者の動きの一つです」という方が支持も広がりやすいと個人的には思います。「One Voice Campaign」の時も、100人分の1つの大きな主張があるというイメージよりも、1人の若者の声が100個あった方が良いと考えていました。それが本来の民主主義だと私は思いますし、それを勝手にメディアなり、同じ意識を持つ政党なり政治家が、「若者がみんな動き出しました」と言い出すのは違うでしょう。

また、東日本大震災以来、反原発デモなども含めて様々な形でデモが続いていますが、結果的に成功しないかもしれないからといって、「政治家が国民の声を聞かない」と思い込んで欲しくないと思います。デモもしくは選挙しか政治家に声を届ける手段がないかといえば、それは違います。例えば、地方自治体などでいえば、公園を一つ作るだけですら、公聴会を開いて、そこで住民から新しい意見が出れば採用することもあるのです。政治が常に多数決だけ、自分たちの党の利益だけで動いているわけじゃないということも知ってもらいたいですね。

(はらだ・けんすけ)1986年岡山県生まれ。NPO法人YouthCreate代表。東京大学法学部在学中には国会議員事務所でのインターンを経験。インターネット選挙運動解禁を目指す「One Voice Campaign」、NPO法人グリーンバード中野、地方議員と若者の交流会「VotersBar」などで活動。2014年衆院選の際には、Yahoo!Japanとともに政党と有権者の双方向コミュニケーション企画「ASK NIPPON」を実施。内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議委員、観光庁休暇改革国民会議委員なども務めた。

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