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オンコセルカ感染症とイベルメクチン

昨日、大村教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。オンコセルカ症は日本ではなじみのない寄生虫疾患ですが、その治療薬であるイベルメクチンの果たした役割を中心に論じでいきたいと思います。

オンコセルカ症は、Onchoceca volulus感染したブユに刺されることによってヒトにうつります。オンコセルカ症の99%はサハラ以南アフリカ(31か国)で発生しています。また、ラテンアメリカやイエメンでも症例がみられます。“河川盲症(River blind)”ともよばれ、川岸でブユに刺されて感染し、失明することがあります。オンコセルカ症の患者は年間1800万人といわれ、そのうち27人が失明すると報告されています。特に、途上国の子どもの失明原因として、重要な疾患です。


オンコセルカ症には有効なワクチンも予防法もありません。このため、WHO(世界保健機関)は1974年から2002年にかけてアフリカ地域オンコセルカ制圧活動を行いました。この結果、4000万人がこの病気から救われ、60万の失明を防いだとされています。特に、1800万人の新生児失明を未然に防いだインパクトは大きく評価されています。

この制圧活動に大きな役割を占めたのが、イベルメクチンです。イベルメクチンの発明まで、制圧活動は寄生虫駆除のための殺虫剤空中散布でした。これは人体にも影響があることは明らかです。こうした人体への影響をほとんど心配することなしに、オンコセルカ症の治療ができるようになったことは、いかに大きなインパクトを与えたかは想像に難くありません。こうしたイベルメクチンの効用は患者を治すだけにとどまりません。
殺虫剤散布で汚染されるところだった、2500ヘクタールの農地が救われ、1700万人を飢えから救ったのです。

世界中には、多くの感染症があり、人々を苦しめています。マラリア、結核、HIV/AIDSがWHOが最も重要視している疾患といえるでしょう。しかしながら、これらの三大感染症以外にも、多くの感染症が途上国に住む人たちの大きな問題です。これら、あまり注目されない感染症は、NTD(Neglected tropical Diseases)と呼ばれます。

NTDはその症例数や広がりにおいて、マラリアなどよりはインパクトが低いと評価されがちですが、今回のオンコセルカ症のように、生まれながらの見えない子どもたちを増加させる重要な疾患ばかりです。

2015年、ゲーツ&メリンダ財団は、オンコセルカ症を含む寄生虫疾患対策の重要性を書面でWHOに対して強調しています。

疾病コントロールには、予防のツールである予防薬やワクチン、また治療薬の開発が必要です。製薬会社は、高血圧や糖尿病といった、費用対効果が目に見えてすぐれている薬剤に目を向けがちです。しかし、イベルメクチンのように、長期的に見た場合、その地球規模でのインパクトが大きい疾患に対して、力を注いでほしいと思います。

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