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副教材では不十分。自治体と教育現場が組んで実際の政策やまちづくりへの参画プログラムを創れ!

主権者教育の副教材と教員用指導資料


2016年夏の参院選から「18歳選挙権」が実施されるのに合わせ、文科省と総務省が9月29日、高校生が政治や選挙の仕組みを学ぶための副教材と教員用指導資料を公表した。

この副教材等については、『370万部のベストセラーが、高校生を政治から遠ざける!? ~総務省と文科省がつくる「副教材」がヘンだ』でも書いたように、多くの課題を感じる。

単純化して話をすれば、ネガティブリストのように羅列された禁止事項が、法律の理解などに慣れていない教員にとっては、禁止された事項に限らず、様々な取り組みへの挑戦を躊躇させかねない、と懸念している。

もう一つ、逆にポジティブリストとして提示された事例が、本当にモデルケースなのかという疑問もある。

今回は、その中から、自治体レベルでの地域課題の発見や政策提言などといった取り組みについて触れておきたい。

特に首をかしげてしまったのが「地域課題の見つけ方」という項目だ。これを書いた人は、自治体の現場における課題発見や解決、政策形成などの仕組みをほとんど知らずに書いているのではとさえ感じる。シティズンシップ教育や主権者教育というより、小学生向けの調べ学習としても怪しいレベルだ。

あくまで個人的な見解だが、こうした「おままごと」みたいなレベルの「ゴッコ」しかさせないから、子どもや若者が関心を持たないのではないだろうか。少なくとも自分が高校生だったとしたら、こんなことをやって「楽しい」とはまず思わないし、少なくとも真剣にやろうとはしなかっただろう。

では、今後、どういうプログラムの検討が必要になってくるのか?

政策課題に取り組むアクティブ・ラーニング「自治体版PBL」


9月26日、私が特任准教授を務める中央大学で、高大連携の体験学習プログラムとして、高校1年生約40名を対象に『自治体版PBL(Project-Based Learning 課題解決型学習)』を実施した。

以前、『若者の政治教育には、若者自身が主体的に取り組む、より実戦的なプログラムが必要だ!』と題して紹介したが、大学教育も転換が叫ばれるようになり、中央大学でも生徒が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングを導入しようと、大学1年生を対象に『ビジネス・プロジェクト講座1』を行っている。

通常は、オリエンタルランドやサントリー、キッコーマン、JAXAといった企業からもらった課題を解決しているのだが、今回は、千葉市と連携し、千葉市における「こども若者参画政策を提案する」というミッションをもらい、その課題解決を行った。

そもそも今回は、アクティブ・ラーニングやグループワークなどもほとんど体験したことのない高校1年生が対象。これまで、「政策」どころか、自分たちのまちについてすら考えたことなどなく、しかも千葉市在住でもないという逆境の中で、「そもそも『参画』ってなんだ?」から始まった。

しかし、こうした取り組みは、時間が経つにつれ、状況は大きく変わってくる。終了後の感想を見ると、休憩なしで3時間ディスカションを続けるプログラムにもかかわらず、参加者全員が「面白かった」とコメントしていたのだ。

「自分から意見を言うのは難しいと思ったけど、楽しかった」、「今まで役所とか市の取り組みなどに目を向けることをしなかったが、この機会を機にもう少しそのような取り組みに関心を持とうかなと思った」といった意見などが目立った。

この日の最後には、生徒全員がグループごとにパワーポイントを使い「千葉市のこども若者参画政策」についてプレゼンした。

参加した千葉市の職員たちからもフィードバックをもらった。「学生だけの学生市役所を作ってみてはどうか」といった斬新な提案から、参画のためにわざわざ市の事業に参加するのはハードルが高いので、各学校に「市に提案するための委員会」を作ってみてはどうかといった、学校活動に参画を埋め込んでいくアイデアが出た。

また、そもそも情報が共有できていないことが問題だとして、高校生に情報を伝えるためにSNSを使ったり、高校生同士で情報を発信させたりするべきなど、当事者ならではの声も聞かれた。

こうしたPBLプログラムは、通常、フレームワークの設定から、実施計画の立案、プロジェクト実行まで、すべてを学生たちが自ら行う。その過程で、学生たちが課題解決に向かって積極的、主体的に取り組むことにより、学習意欲を強く持つとともに、通常の講義では得られないロジカルシンキング、課題解決能力、プレゼンテーション能力、デザイン力などといった実践的な力を身に付け、目覚ましい成長を遂げるなど、その効果は大きい。

今回の場合は、1日のプログラムであるため、こうしたところまで実施することは出来なかったが、大学での実施はもちろん、さらに低年齢の高校レベルでも、通常通りの15回、あるいは短縮版の3~5回程度のプログラムとして実施できるのであれば、より質の高いものにすることができる。

今回、ミッションを提供してくれた千葉市でも、今後、さらに色々な学校で実施してもらい、こうした授業での提案から声を吸い上げ、実際の政策に活かしてもらえたらと思っている。

千葉市に限らず、こうした取り組みを行いたいという自治体があれば、是非、ご連絡いただきたい。

インターンも「ゴッコ」から「政策形成の主体」へ


自治体でのこども若者参画においては、とくに「こども」年齢を対象に実施されている事例が多く、その内容も私から見ると単なる「ゴッコ」だと感じるものが多い。

自治体現場からは、「参加者が少ない」とか、「特定の参加者ばかりが集まる」などといった相談を受けることがあるが、それは、こどもや若者から見て、こうした取り組みが「つまらない」もしくは「つまらなく見える」からではないだろうか。

その要因の一つは、明らかに「ゴッコ」にしか見えない形式的な参加スキームにあると思う。

選挙の際に、有権者から「どうせ自分が選挙に行っても結果は変わらない」などという声を聞くことがあるが、同様に、子どもたちもまた、「参加して、意見を出してもどうせ採用されない」と思うものにははじめから参加しようとはしない。

こども若者参画については、いくつかの課題があるが、その一つに「形式的な参加」をどれだけ「政策形成の主体」に変え、実際にその提案を「どれだけ実現できるか」ということがある。

そのための一つの論点として「こども」だけの参画という考え方から、step-by-stepで年齢や成長に合わせた参画の受け皿をシームレスで作り上げていくこと、また「ホンモノの参画」にしていくためにも、対象を「こども若者」へと広げていくことも重要になる。

そうした中、千葉市では、大学生を対象に、当事者ないし当事者に近い目線で、千葉市のこども若者参画や生徒会活性化に関する施策を検討し、提案してもらう『こども若者参画・生徒会活性化インターンシッププログラム』を実施する。

このプログラムは、通常のインターンシッププログラムとは異なり、PBL(Project-Based Learning =課題解決型学習)インターンシップの行政版であり、受け入れる学生をまちづくりの当事者として捉えると同時に、行政職員としての立場も体験しながら、より実践的に政策提言などの課題解決を行うものだ。

こども若者参画の先進自治体をめざす千葉市の政策を当事者ないし当事者に近い目線から評価、課題発見、問題解決策など検討、提案することで、より価値のある政策形成を行うとともに、自治体現場での政策形成などを直接体験し、地方自治や行政への関心を高め、行政にとって新しい公共の担い手としてのパートナーシップを期待している。

旧来の「お仕事体験」的なインターンシップでは満足できず、自分の能力が通用するかと挑戦したい人、自らのスキルをさらに伸ばしたい人、公務員志望などでこの段階から公的な仕事を体験したい人など、意欲のある学生は、ぜひ挑戦してみてほしい。

「生徒会」は政治教育の柱になる


最後に、高校生向けの実践的なプログラムとして、「生徒会活動」の可能性について紹介しておきたい。

今年4月、「一般社団法人 生徒会活動支援協会」の理事長に就任し、本格的に活動を開始した。顧問には、元文科副大臣の鈴木寛 文科大臣補佐官や、シティズンシップ教育の第一人者でもある小玉重夫 東京大学教授などにも加わってもらい、18歳選挙権実現後の具体的な政治教育プログラムとして、その可能性を提案している。

生徒会は、そもそも第二次世界大戦後、GHQにより、民主主義を確立するために設置されたもので、アメリカの生徒会議(student council)をモデルに、校長から一定の権限を認められ、立法、執行組織などを持ったものとされた。

1960年代後半から70年代後半のいわゆる学園紛争時、当時の文部省は高校生の政治活動にも厳しい規制を加えるようになり、その後は全般的に生徒会活動に積極的に参加する生徒が減少し、生徒会は形骸化してしまったが、海外においては、生徒会が非常に積極的に活動をしている。

若者参画先進国のスウェーデンやドイツには、各学校に最高意思決定機関として学校会議や学校協議会(School Board/School Conference)がある。

この会議には、校長や教員、保護者代表、地域代表、弁護士といった専門家と共に、生徒会の代表もメンバーして加わる。

その権限は、予算編成、日程調整、学校方針、雇用、学校環境などにおよび、学校規則・校内規則・教室の割振 ・授業時間や休憩時間の配列といった学校生活や授業の組織編制にわたる。また、通学路の安全・就学援助・校内事故防止の取組といった児童生徒の保護、学校パートナーシップ・林間学校の原則・遠足・企業見学や美術館見学といった学校行事にも携わる。

こうした国々では、さらに学校ごとの生徒会は、州レベルや国レベルに連合体を持つ。連邦制をとるドイツでは、州ごとに州生徒会連合の仕組みを持ち、各学校代表が州生徒会委員会等を構成する。

昨年ドイツ視察を行った際には、ブランデンブルグ州が州における地方選挙権年齢を16歳に引き下げ初めての選挙を行うにあたり、州生徒会が行政と連携し、16歳選挙権の浸透と若者の政治参加を促進させるために各政党青年部を招いたイベントやキャンペーンを実施していた。

また、生徒会を支援する生徒会支援協会(SV-Bildungswerk)という組織があり、リーダー育成の研修やコンサルティングなどを行う。

スウェーデンには、国レベルでも全国生徒会(SVEA)という組織があり、各学校生徒会のエンパワメントを行うとともに、国レベルでの生徒の影響力強化にも取り組んでいる。

こうした生徒会の連合体は、単に学校内での民主主義の仕組みに留まらず、国や地域といった様々なレベルでのまちづくりや政策形成にさえ関わっていく仕組みなのだ。

日本における行政と教育現場が連携した自治体の取り組みにおいても、大いに参考になるのではないだろうか。

自治体レベルでの参画の取り組みにおいては、質の問題とは別に、特定の層の特定の者だけが参加しているという問題もある。また、参加の仕組みが個人単位であるため、提案された内容もまた個人レベルの意見であることが多い。

世代の意見として提案していく仕組みを創るという側面や、合意形成をはかるプロセスを加えるということを考えれば、生徒会活動には、大きな可能性があるのではないだろうか。

興味のある首長、行政職員、学校関係者は、是非、声をかけて欲しい。

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