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マイナンバー法の影で忘れられたもの

さすがに肌寒くなってきた今日この頃、本日12時ごろ突然わたしの右腕が2時間ばかり痛みで動かなくなったところを見ると、本格的に秋に突入した模様です。年に四回、かならず起こる痛みの精度は我ながら感心するところ。

この10月5日に始まったのは秋だけではもちろんありません。マイナンバー法が本日より施行され、マイナンバー通知カードが順次各自に発送され始めた、とのことです。主に税など公的機関との金銭面の管理に使われるらしいですが、それだったら納税者番号とかでもいわけで、わざわざ"マイナンバー”などという名称にしているところを見るとそれ以外の多くの個人情報を番号管理するんでしょう、きっと。まぁちょっと怖い。これを量販店のポイントカードあたりと同列に扱って「マイナンバーが危険だというのならポイントカードだって怖くて使えない」と言っていた人がいたような気がしますが、ポイントカードは漏れてもデータを削除してもらえますがマイナンバーは漏れた場合でも削除も再発行もなされずに永久にそのまま使われるので同列には扱えませんね。ただ、怖いのは怖いですがこういう番号管理は当然行政側としては楽になるやり方でしょうから、個人的には反対ではないです。

よく分からないのは、このマイナンバー法、結構大事にも関わらず「これこれこういう法律が国会に提出された」という報道の流れがほとんどなく、「10月5日よりマイナンバーという新しい制度が法律によって施行される」と、全部決まった段階でやっと報道がなされたような印象があることです。当然この手のは大きな声で反対する人々があるはずだと思うのですが、全部決まった段階でようやく耳に入ってきたので時すでに遅しと判断したのか、他が忙しかったのかは知りませんが、まぁ反対するなら情報はちゃんと自分から取りにいかなければだめで、それを怠った時点で反対する意味はないんです。衆議院や参議院のサイトでは常時提出された法案が公開されていますし、そこをマメにチェックするだけでもマスコミの報道しない情報を知ることはできるわけですから。

このマイナンバーと比べるとアレはなんだったんだ? と思いだされるのが、住民基本台帳、住基ネットの時の騒ぎ。おそらく多くの人は忘れているでしょうが、あの時は「国民を番号呼ばわりする」とか「個人情報の保護」とかマスコミも世論もとてつもなく騒ぎ出し、珍しく政府も総務省もその批判を避けるのに弱気で、結局「日本全国どの役所でも住民票の写しが発行してもらえるようになる、転籍がしやすくなる」という大して役にも立たないものへと変貌してしまいました。行政的には全く利点がなく、だからと言って法律で決まったものだから今更導入しないわけにもいかず(一部で当初導入を見送った自治体もあったようですが)、金ばかりかかるというムダだった印象が強いです。だからこそマイナンバーに関してはあまり大事にしないように導入されたのでしょうけど。

行政面から見ればあまり使いようがないものになってしまった住基ネットですが、わたしら中古業界にとっては大変便利な制度でした。なにせ資格がなくても公的機関発行の身分証明書が誰でも手に入る制度ができたんですから。

中古業界はお客様に対してお金を渡す商売であるため、相手の存在を明確にする必要があります。そうしないと、盗品の現金引換え場として使われてしまうからです。身分と存在をはっきりさせ、証明書を提示させて控えをとっておく。そうしないとその品物が盗品であった場合、容疑者に対する手がかりが一つ失われてしまうからです。それだけでなく、その中古店が犯罪行為に協力したとして罪に問われる場合もあります。だから必ず身分証明書を提示していただくわけですが、かつてはその身分証明書として運転免許証の次くらいによく使われたのが健康保険証でした。ただ、運転免許証や社員証などと違い、健康保険証は顔写真が貼っていないため、ただ持ってきただけではそれが本人のものか確認できません。

ですが「健康保険証は身分証明書として使われる」が常識であった時代は確かにあったため、受け付けないわけにもいきません。最低限の確認として、その保険証を一時預かったうえで住所・氏名など、本人なら絶対に書ける情報を書いていただくことにしています。他人の保険証を借りてきてなりすまそうとした場合、もちろん全く書けません。前にも書いたことがありますが中には気の利いた(?)人もいて、書くべき項目を全部メモしたりコピーをとったりしたものを懐から取り出してそれを丸写ししようとする場合もあります。その場合

「すみません、何も見ないで書いていただけますか?」
と頼みます。すると返ってくる答えはほぼ100%決まっています。
「引っ越してきたばかりでまだ住所を覚えていないからメモをみないと書けないんだ」
です。その場合はもちろん
「なら、完全でなくても結構ですから、住所や他の項目を書けるところだけ全部書いてください」
と言います。もちろんかけないので、よく
「なんで客の自分がそんな面倒なことしなけりゃならないんだ!その保険証見れば書けるだろ!?お前が書けばいいだろ!!!」
と怒られました。なんと言われようと自分で書いてもらうことにしましたし、書けなければお断りしていました。

他人の保険証を持ってきた方々の全員が盗品の現金化を目的にやってきた、とはもちろん言いませんが、その疑いをかけるしかないのもこちらの立場としては当然のこと。いつの間にか保険証は身分証明書として通用しなくなっていました。犯罪者が困る分には一向にかまわないですが、運転免許証も社員証も持っていない人も世の中には多いので、本気で困る人がどうしてもいるわけですね。

ここで話は戻りますが、住基ネットはそういう人の救世主。役所で手続きすれば、公的機関の発行した顔写真入り身分証明書、住基カードを作ってもらえるのですから。これで本当に困っていた人も大丈夫になりましたし、未だに他人の保険証による「なりすまし」を企てる人にも「保険証はダメですから役所で住民基本台帳カードを作ってもらってください」と簡単に断れるようになりました。携帯電話の契約にも使えますし、証明書のためにペーパードライバーになる必要もなくなりました。住民基本台帳は便利な制度だとわたしは思っています。

そしてこのマイナンバー制度の導入。住民基本台帳はどうなるんでしょうね? そのうち忘れられて自然消滅なんでしょうか。さてこのマイナンバー、そのまま身分証明として使えるようになるかと言うと、実はわたしら業界では疑問の声が上がっています。先にあげましたようにあまりに強力な個人情報管理制度であるために、そうそうホイホイと身分証明として扱い、情報を外部に流出させる一因になってしまう危険性があるので、そこまで責任を負いたくないんです。少なくとも、今度送られてくる「マイナンバー通知カード」に関しては身分証明書として扱うには適当ではない、という考え方が支配的になっているようです。

ですが、来年になればこのマイナンバーの入った顔写真入り「個人番号カード」が希望者には発行してもらえるようになるんです。しかも無料で。当然政府としては身分証明書として使え、という考えでこういうカードを作ることにしたのでしょうが、扱う方も怖いですってば。正直マイナンバーはマイナンバーとして導入し、公的機関の身分証明書半専用としてあまり力のない住民基本台帳を使う併用がわたしらとしてはありがたいのですが、まぁ中古業界のことなんて気にするわけがないか。総務省じゃなくて経産省でしたが一度は滅ぼそうとしたんですから。

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