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女性が行き詰まれば、米企業も行き詰まる=サンドバーグ氏

今のペースでいけば、経営幹部職において男女平等を実現するまでに100年以上かかる。米航空宇宙局(NASA)が今、人を宇宙に送り込んだとして、その人が火星を超えて、はるばる冥王星まで行って地球に帰還することを10回繰り返しても、まだ女性は幹部職の半数を占めるには至らない。そう、私たちはそれほど目標からかけ離れたところにいるのだ。

 (女性の社会進出を支援するために設立した非営利団体)リーンイン・ドット・オーグとマッキンゼーは9月30日、米国企業社会における女性の地位に関する包括的な調査報告書「Women in the Workplace(職場における女性たち)2015」を発表した。合わせて118社の企業と3万人近い従業員が調査に参加、人材供給データ、人材に関する慣習、仕事への満足度や性別に関する考え方を共有した。

 私たちの調査によって明らかになったのは、12年以降に状況はささやかに改善したものの、企業のあらゆるレベルで依然として女性のリーダーが少ないということだ。さらに、幹部職の女性が少ない主因が自然減ではないことも分かった。こうした企業に勤める女性の平均離職率が男性より高いわけではない。正確に言えば、女性は男性と比べて、昇進の過程で多くの障害に直面し、経営幹部職までたどり着く可能性が低いということだ。

 女性の目の前に広がっているのは不平等な環境、女性に不利な職場である。自分の性別ゆえに昇進が難しいと考える可能性は男性より女性のほうが2倍も高く、幹部職に就いている女性は新入社員レベルの女性以上に、性別を大きな障害だと考えている。

 残念ながら現実には、キャリアのどの段階にいる女性も男性ほど経営トップになることに関心を持っていない。通説と異なり、単に家族のことが心配だからではない。私たちの調査では、子どもを持たない女性でも、経営トップになりたくない最大の理由にストレスやプレッシャーを挙げている。ということは、リーダーになることを希望する女性が男性より少ないのは、幹部職への道のりが女性にとってひどくストレスに満ちたものだからという説明が成り立つかもしれない。

 女性が行き詰まれば、米国の企業社会も行き詰まる。チームや組織が多様性のおかげでイノベーション、創造性、売上高、利益の点でよりよい成果を挙げていることを示す証拠は枚挙にいとまがない。全国民の才能を活用することは米国の経済成長、企業の生産性、個人の幸福にとって極めて重要だ。

 女性を指導者の地位に就かせるには、女性のリーダーに対する、文化に根付いた不快感に対処しなければならない。女の子は遊んでいるときに「bossy(生意気)」と言われるが、男の子は指導力を発揮するように期待され、奨励される。この力関係は職場にも持ち込まれ、女性は好かれることと尊敬されることをなんとか両立させようとするが、男性はそのようなことはしない。こうした絶えざる偏見が女性を二重に束縛している。私たちはこの二重の束縛を表面化させ、事実として認め、解決しなければならない。

 企業は、最高経営責任者(CEO)が性別の多様性に非常に真剣に取り組んでいると回答しているが、残念ながら、そのメッセージは伝わっていない。自分が勤める会社のCEOにとって性別の多様性が最優先事項の1つであると考える従業員は半数にも満たない。調査に参加した企業の過半数は長期休暇や時短勤務のようなキャリア開発や柔軟な勤務のための制度を用意しているが、これらを利用する従業員はほとんどいない。長期休暇を利用すればキャリアが傷つくと考える従業員は男女共に90%に上る――そう、90%もいるのだ。キャリアに著しく傷がつくと考える人も半数を超えている。

 こうした懸念を持ちつつも、子どものいる男性や女性は、子どものいない人と比較して昇進して経営幹部になりたいと回答する傾向が高かった。前述の制度は誰もが仕事と家庭生活を両立して、自分の目標を達成できるように企業が用意したものだ。社員に制度を活用してもらえる方法を見つけ出すことが企業の一番の得策である。

 この報告書を読めば、まだやらなければならないことがたくさんあることが分かる。改善の第一歩は進展状況を評価することだ。この調査に参加した企業は基準、目標の設定や他社と比較する際に利用できるデータ収集に着手した。全ての組織は全ての職務、全てのレベルでの人材供給を評価すると共に、文化や考え方に関するデータをまとめて、社内で多様性がどれだけ進んでいるかを検証するべきだ。

 透明性とトレーニングは欠かせない。従業員は、組織の中に計測可能な男女不平等が実際に存在することを認識すれば、解決に向けて努力する可能性は高くなるだろう。従業員が性差別を認識、解消する方法を学べるようにトレーニングを実施することは、多くの従業員の日々の仕事の内容を決めるマネージャーにとって特に重要になる。

 最後になるが、女性は男性と比べて、職場で幹部級の相談相手や支援者と接触する機会が少ないことで損害を被っている。これは変えなければならない。同僚間の支援は1つの解決策となるかもしれない。現在、650社を超える企業にリーンイン・サークルというピアグループがあり、女性の目標達成を支援するために定期的に会合を開いている。このグループに所属するメンバーのうち83%がサークルの支援を受けた結果、難しい課題や機会に取り組みやすくなったと回答した。

 変化は決して簡単なことではない。しかし、思ったより早く大きな成果を挙げることは可能だ。私たちは80年ではなく8年間協力することで月に到達した。同じように一刻も無駄にせずこの任務に取り組もう。これはより強く、より成功した職場を実現するだけでなく、米国の全ての労働者や家庭により大きな経済成長と利益をもたらすことになるだろう。

(サンドバーグ氏はフェイスブックの最高執行責任者で、リーンイン・ドット・オーグの創設者)

By Sheryl Sandberg

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