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「IRのビジネスモデルは破綻」(by 鳥畑与一)の間違い

昨日の更新はちょっと「皮肉」が効きすぎた鳥畑氏のアンチ・カジノ論に対する反論となってしまいましたが、本日はトーンを落として引き続き鳥畑氏に対する反論を展開したいと思います。昨日のエントリをまだご覧になってない方はこちらのリンク先からどうぞ。


「米国カジノは衰退産業」(by 鳥畑与一)の間違い
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8985412.html


そもそも鳥畑氏は先の横浜におけるカジノ反対集会でも行われたように(参照)、最近しきりと「IR型カジノはビジネスモデルとして破綻しつつある」などという論を展開するのですが、彼のその主張自体が外的要因でマーケットが傷んでいるものと、内的なビジネスモデルの不全とを完全に混同している発言であると言えます。

現在、米国の特定地域で目立ったカジノの経営破たんが続いているのは、①リーマンショックの余波から回復できずに財務的な基礎体力が落ちたままの企業が未だ数社存在してきた事、②新規カジノ合法市場が急増する中で旧来市場が相対競争力を失っており、それら旧市場でドミナント戦略(集中出店戦略)を取ってきた一部企業の業績が急速に悪化していること、の二つが複合要因として発生しているもの。

そして、この二つをまともに喰らってしまった特定企業(例:Caesars社, Trunp社など)系列の施設が、ドミノ式に倒れてるのが大きく報じられているワケですが、先のエントリでも説明した通り(参照)米国のカジノ産業規模自体は既にリーマンショック前のレベルに回復していますし、施設閉鎖が続いているような特定地域においても周辺地域総体としての市場規模が減退しているワケではありません。

鳥畑氏が殊更に取り上げて「IR型カジノのビジネスモデルの失敗」などと主張している例は、あくまでマクロ的な市場環境の変化に対応できなかった特定グループ企業の施設例であって、統合型リゾートとしてのビジネスモデルが「破綻している/いない」のお話では全くないといえます。

同様に鳥畑氏がIR型カジノの失敗例としてしばしば取り上げるマカオの事例ですが、これまたビジネスモデル自体の破綻ではなく、外的要因によるものです。

毎年GDP2桁成長を記録し経済が好調であった時代の中国には、世界からあらゆる資本が集まってきており、長らく中国はその富の集積を謳歌してきました。また、その時代は好調な国内から海外に流出する資金量が相対的に少なかったため、中国共産党は大陸から海外への送金規制の運用に比較的寛容でした。

ところが、一転して中国経済に明確な陰りが見えている現在、中国国内から富を海外に逃がそうとする動きが顕著になっています。対して、中国はあくまで共産主義国家ですから、国富である中国人民の財を個人資産として海外逃避させる人間に対して厳しく取締りを始めています。それが、今いわれている習政権による「汚職摘発」や「贅沢禁止令」であり、同時に現在行われている海外への資金移送に対する厳しい監視と制限であるワケです。

これまでのマカオというのは、かつてのユルユルの送金規制時代を背景に豊富な大陸人の消費力を前提として成長してきた市場であって、そのような中国共産党による制度運用上の変更があれば、一転して供給超過に陥ってしまうのは当たり前。現在のマカオは、まさにその崩れた需給バランスの調整局面の真っ只中であって、どこかのレベルで底打ちするまでは暫くシンドイ状況は続くでしょうが、少なくともこれも外的な市場環境の変化によるものであって、統合型リゾートとしてのビジネスモデルそのものの失敗ではない。

寧ろ、現在のマカオではギャンブル中心の営業から、様々な観光商品で多面的に収益を稼ぐビジネスモデル、すなわち統合型リゾートへの転換の真っ只中であり、業態転換に向けた大きなリゾート投資が続いている状態です。


【参照】2017年までに13ホテル、1万2千余室 まだまだ続くリゾート建設(マカオ観光局)
http://www.macautourism.jp/rep/talkabout.php?pubid=3&page=2&news=1


さらに、最近になって鳥畑氏は「シンガポールIRの成長にも陰りが」などというコメントを加えるようになっているワケですが、これもミスリード甚だしい。

現在のシンガポールにおける統合型リゾートの局面は、2010年の開業直後から始まった「開業景気」が一旦落ち着いてきた状態で、このような開業時における業績の急騰というのはカジノだけではなく、飲食店、ホテルなど多くのホスピタリティ施設業態には共通してみられるものです。逆に言えば、開業景気が延々と続くなんて状況はどんな業態においても存在しないワケで、そのような開業景気から通常運行に転じた市場状況の一点を捉えて「成長性に陰りが」などと評するのは、正直、経済学者として如何なものかと思うところです。

そもそも、鳥畑教授は経済学者という肩書こそ付いていますが、我々がいわゆる「経済学者」と聞いてイメージするところの近代経済学のご専門ではなく、社会主義思想の原点となるマルクス経済学派の流れをくむ研究者であると聞き及んでいるところ。かつて、史上唯一の共産系東京都知事として都政を担った美濃部亮吉氏(元・法政大学教授、マルクス経済学者)が知事就任にあたって都営の公営競技場を全廃させたことに象徴されるように、マル経学者からしてみれば賭博なんてのは資本主義の悪の象徴として憎悪の対象以外のナニモノでもないワケです。

…ということで、前回のエントリで皮肉交じりに論じた同氏の社会運動家としての各種ご活躍も含めて、鳥畑氏における各種データ分析はイデオロギー的なバイアスがかかり過ぎていませんか?という指摘をしつつ、本稿を閉じたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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