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「ちょっといい話」その54―チェルノブイリの礼状―

日本赤十字社の国際部の方が、ウクライナの首都キエフを訪れた折預かったといって、書簡を郵送してくれた。

チェルノブイリ原発事故の発生は1986年で、来年は30周年になる。
ちなみに、福島の原発事故も来年の3月11日で5周年である。

ゴルバチョフ大統領(当時)から直接、チェルノブイリ原発の医療活動支援の依頼を受けたのは1990年であった。彼は、日本財団、笹川記念保健協力財団の用意した援助活動に必要な特製の医療診断車5台と、医療機材や薬品を輸送するため、世界最大の航空機・アントノフを成田に飛来させ、協力してくれた。その後もロシアのアエロフロート航空会社は、70数回に亘り支援物資を無料で輸送してくれた。




モスクワの赤の広場で引き渡し式

以来、事件発生当時10才以下の子供を中心に、18万人余(ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)の被爆者の精密診断を行った。医療診断車の走行距離は地球を約90周するほどに相当した。10年間に及ぶ詳細な活動報告書は英語、ロシア語で纏められ、IAEA(国際原子力委員会)やWHO(世界保健機関)にも提出され、高い評価を受けた。

チェルノブイリ救援活動の経験と知見に基づき、福島原発事故後、住民の健康被害(外部被爆は勿論のこと、食料からの内部被爆)は早期の住民移動によりほぼ安全であったこと。また、土壌の被爆線量の議論が1ミリシーベルトを中心に行われたことに対し、インドのケララ州では自然放射線量が20ミリシーベルトでも問題ないこともいち早く発言したが、嵐のように恐怖を煽る専門家と称する人々を中心にしたメディア報道を前に、多勢に無勢であった。

特にチェルノブイリで中心的な活動をしてくれた長崎大学の山下俊一教授対する批判報道はすさまじく、私は何度も激励したが、先生は「私は福島の被害者のために命をかけて頑張ります」と、いつもニコニコ笑顔でおられ、力強いことであった。

1ミリシーベルトの除染基準は1兆円近い金が無駄となり、多くの避難者を帰宅困難者にしてしまった。最近、この問題はあまりメディアの話題にならないが、私の尊敬する京都大学名誉教授の丹羽大貫先生は、今日も原発被災地で宅和集会(少人数の話し合い)を開催し、被ばくと健康問題についての住民の素朴な質問にやさしい言葉で説明する活動を続けておられる。「科学者の良心」にはいつも教えられること大で、頭の下がる思いです。

話はそれたが、以下はキエフの病院長からの書簡で、今も感謝されていることは望外のことである。この心のこもった手紙は、よく見ると何かの印刷物の裏側を使ったものであり、物資不足に悩む現下のウクライナ情勢を如実に物語っている。

以下はその書簡です。




裏面は使用済み?


笹川様

キエフ地方病院の理事会は、チェルノブイリ原子力発電所の事故の犠牲者に対する貴財団からの1991年から2001年に亘るご支援に、謹んで感謝の意を表します。

貴財団の基金と会長のお陰をもちまして、チェルノブイリ災害の後、キエフ地方の子供たちの健康チェックに必要な医療備品や試薬品を備えた「ササカワ―チェルノブイリ」担当部署が、病院内に組織されました。

この期間に41,000人以上のキエフ地方の子供たちが適切な診療を受け、医療的措置を施されたお陰で、多くの命が救われたのです。

謹んでお礼申し上げます。

ウクライナ保健省キエフ地方自治 キエフ地方病院
ヘッド・ドクター V.V.エラジン


ウクライナと日本の友好を表す子どもの絵です

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