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消えた金融政策という矢の意味

 9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新たな三本の矢は、「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」となり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするそうである。

 アベノミクスの第一弾は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であった。麻生財務相は9月25日に旧3本は「新たな3本の矢の1本目」に集約されているとした。

 「強い経済」というかなり曖昧な表現のなかには、経済を支えるための金融政策、財政政策、成長戦略が組み込まれていると考えるのは自然かと思うが、「金融政策」との表現を消したことについてはそれなりの軌道修正を図ったとみてしかるべきかと思われる。

 アベノミクスはのちに三本の矢とかを出して体裁を整えた格好ながら、その柱はリフレ政策にあった。これによりデフレから脱却することが目的となり、その目標は政府と日銀が共同宣言で打ち出した消費者物価指数の2%となっていた。

 2013年4月の量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和により日銀は2年で2%の物価目標を達成するとした。それから2年以上の月日が経過し、2015年7月の消費者物価指数は総合で前年比プラス0.2%、ベンチマークといえるコア指数ではマイナス0.1%と、まさに異次元緩和を決めた時点と同様のマイナスに陥った。

 この結果をみればアベノミクスの柱といえる大胆な金融緩和が、結果としての物価の上昇を起こさなかったことは明らかである。なぜ物価目標は達成されなかったのか、いずれこの検証は必要となろう。しかし、数値目標は達成されなくても、日銀は基調はしっかりしていると判断し、政府はデフレから脱却しつつあるとの認識を示している。

 25日の昼に安倍首相と黒田日銀総裁は首相官邸で会談した。定例ともいえる会談ではあるが、タイミングが興味深い。安倍首相がアベノミクスの新たな三本の矢を打ち出したあとで、8月の消費者物価指数も確認したあとである。市場では当然ながら追加緩和期待が出ていたようだが、そう期待してしまうのも無理はない。

 異次元緩和が物価目標達成に直接結びついていないことは誰の目にも明らかとなっている。安倍首相はここにきて携帯料金の引き下げを検討するよう指示を出した。新三本の矢やこの携帯料金引き下げなどは来年の参院選を見据えた動きではあろうが、少なくとも携帯料金の引き下げは物価の下落圧力となる。それでなくとも目標達成どころか元の木阿弥に戻ってしまっている物価に対して、首相は関心を失いつつあるように思われる。

 政府と日銀が打ち立てた物価目標とはいったい何であったのか。それが達成できなかった理由を明確に示さぬ限りは、日銀による追加緩和は難しい。物価はさておき、緩和をすれば株価は上がるとの発想ありきでは、中央銀行の金融政策は株価対策でしかないことになる。

 結果が出なかった限りは金融政策のあり方そのものを再考する必要がある。金融政策は万病に効く特効薬などではない。あくまで一時的な痛み止めに過ぎないことを認識する必要があるはずである。しかし、それを表明すると市場の期待が大きく剥がれかねないほどに、市場が金融政策に過度に依存してしまっていることもまた事実であり、これも金融政策のあり方をより困難にさせてしまっている。

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