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人口論で一番大事なこと、アーバナイゼーション

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このグラフは何を示しているだろうか?

答えは、この100年ほどで起こっている世界人口の地方から都市への大移動、つまりアーバナイゼーション(Urbanization 都市化)と呼ばれる現象である。

青い右肩上がりの線が、世界の全人口に対する都市に住む人の割合、そして緑の右肩下がりの線が地方(農村部)に住む人のそれである。

たった60年前には、世界の人の7割が田舎に住んでいた。

それが徐々に都市に流れて行って、2007年に都市人口と農村部人口が均衡した。

そしてこれからたかだか40年で、中国やインドやアフリカなども含めて、全地球上の人の7割が都会に住む世界になる。

(出典:国連)

人口動態は会社や国などあらゆる組織の将来計画にとって最も基本的でかつ重要な外部要因のひとつである。

なぜなら人口動態は経済・社会のあらゆる事象に最も相関が高いからである。そしてその人口動態のなかで世界的に最も顕著な潮流のひとつが、このアーバナイゼーションである。

日本では東京だけでなく札幌や福岡などの地方中枢都市に、田舎から人がどんどん移り住んで人口が増え経済や社会インフラの集積が進んでいる。その一方で山間部の農村などでは人口・経済の規模がどんどん縮小している。

このようにアーバナイゼーションとは、首都圏だけではなく地域の中核的な都市への周辺部からの人とそれに紐付く冨の移動の事である。いわば「世界の都会化」だ。これは日本だけではなく、冒頭見たように世界中で、全人類的に起きている。

ではそのように大都市偏重が進み、それ以外の地方部との格差が広がった結果、世界はどうなったか?

それは端的に言えば世界における国同士の差よりも都市単位での差のほうが大きくなった、そういう事である。

例えば、アメリカの郊外をドライブした時に見る光景は、日本の地方の国道沿いの光景に似ているが、逆にニューヨークやロサンゼルスなどはアメリカの地方部よりもバンコク、クアラルンプール、上海などにずっと共通点が多い。

物価についても、どの国に行っても首都圏ではほとんど変わらなくなってきている。

前回も述べた通り 「一人当たりGDPが日本の20分の1以下の新興国」と思ってインドに行ってみて、いざニューデリー空港を降りてみたら、まともなホテルはどこも日本並みの値段で、レストランへ行っても食事の値段は日本と大して変わらない、そういう経験をすることになるし、インドネシアの首都ジャカルタには高層ビルや豪奢なショッピングモールが立ち並びベンツがまたぞろ走っている。

では年収が日本人の何十分の一の人々は新興国のどこに住んでいるかといえば、そのほとんどは地方に住んでいる。

同じインドでも地方に行けば未だに電気が通ってない無電化村があるし、インドネシアの地方部には未だに樹木の上に暮らす原住民もいる。

つまり、世界中の都市(およびその住人)がどんどん発展して、そこではもはや新興国も先進国も変わらないレベルまで差が縮まっている。一方で地方部とは相対的にどんどん差が開いている。その格差は世界中で起きている、そしてこれから更に加速度的に進展していく。なにも過疎化や地域格差は日本だけで起きている特殊な事象ではない。

そうなるともはや「アメリカと比べて日本は」とか、「東南アジアは日本よりも」などと論じるよりも、「大阪に比べてムンバイは、深センは、福岡に比べてベルリンは、ポートランドは」というように、都市単位で比べるほうがより実践的であって、ビジネスや政策立案においては農村部と大都市をひっくるめた外国と自国を比べる事がむしろ危険ですらある。それほどまでに都市と地方の間の差は大きく、逆に世界の大都市同士の力は拮抗してきている。そして重要な事は、それらの世界中の都市が互いに人材や企業や資産を奪い合う激しい競争を繰り広げているのである。

特に新興国ではその点への留意が肝要であって、「あの国は一人当たりGDPが日本の何分の一だから」、などと高を括るのは最も危険だ。

福岡や北海道は既にバンコクやジャカルタやデリーに経済規模で抜かれている。油断してるとすぐに次はそれぞれの第二の都市、チェンマイやスラバヤ、ムンバイに追い越される。そうしてオセロゲームのように国全体が逆転されていく。

大阪は昨今の政治的混乱は大変残念だが、まだまだ世界上位の巨大都市である。証券取引所も(諸外国のそれよりは相対的にまだかろうじて)強いし、京都・奈良・神戸などの観光資産も経済圏にあり、国際競争力は元来はとても高いはずだ。にもかかわらず既にソウルにも上海にも抜かれてしまった。このままでは東南アジアの主要都市に抜かれるだろう。大阪(関西圏)は東京に対抗意識を燃やすのではなく、世界のライバル都市に対する国際競争力を高めてまだまだ発展を目指すべきである。

「地方創生」は大アーバナイゼーション時代に逆行している

最後に蛇足だが、日本で現政権が推進している「地方創生」という政策は私には全くピンとこない。

その理由はまず第一に、日本だけではなく全世界で、この百年かけておきている社会人類学的な大潮流である都市化に対して逆行する事の実現可能性自体が極めて低いと思っているからである。実現可能性が極めて低いプロジェクトの膨大なコストを国民に強制的に負担させる行為だからである。

第二に、私はこの大アーバナイゼーション時代に掲げるべき正しいビジョンはむしろ逆で、田舎を活性化するのではなくて、都市をより強くする事だと思っている。もっと言うと、日本各地の中枢都市の国際競争力を上げる事であり、大阪が深センや香港に負けない事、福岡がマニラやクアラルンプールに負けない事だと思っている。そのような激しい国際競争に対峙しなければならない時に、国が国民に対して「おたくは(競争を諦めて)田舎に引っこみなさい」と言うのは真逆の行為だと思う。

田舎の活性化を重点政策にしているのは日本政府くらいなもので、諸外国でイシュー化しているのはむしろ都市再生、都市の国際競争力強化である。

強いて言うなら、新興国と日本の各都市の力が拮抗して互いに人や資産を奪い合う激しい競争時代に対峙するために国がやるべきは、地方の活性化ではなくて、地方分権、この一点しかないと思う。

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