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誰がフォルクスワーゲン社を殺したのか

独自動車大手、フォルクスワーゲン社(VW)が米国で販売したディーゼルエンジン車に排ガス規制を不正に逃れるソフトウェアを搭載していた問題は、自動車産業史上例を見ない巨大なスキャンダルになりつつある。

VWは現時点で今回の対応のため7~9月期決算に特損として65億ユーロ(約8700億円)を計上する方針にしているが、不正の範囲は拡大しており、出口の見通しはたっていない。

米メディアによると、調査結果次第では当局から180億ドル(2兆1600億円)の制裁金が課される可能性があり、さらに集団訴訟でどれだけ膨れ上がるか全く予断を許さない状況にある。

VWの内部(業界)事情や技術革新の問題、政治的な駆け引きなどこの問題には様々な構成要素があるが、ここではこの問題が水面上に浮上した経緯から政府(国)の不正摘発能力に焦点を当ててみたい。

今回のスキャンダル摘発の主要プレーヤーとして、米当局EPA(米国環境保護局)、NPO団体のICCT(国際クリーン交通委員会=International Council on Clean Transportation)とウェストバージニア大学の作業チームが挙げられる。

スキャンダルの経緯については、もともと欧州の規制当局の不正を疑う調査結果が(規制基準の厳しい)米国当局に提示され、EPAが本格的な調査に乗り出した、という説と、EPAが”Independent research group"からの報告を受け、調査に乗り出した、という説がある。

9/24のScientific Americanによると、Independent research groupはICCTであり、欧州規制当局の疑惑の根拠も米国発という見方が強い。
というのも、もともとディーゼルエンジンが環境に優しいと証拠立て、推奨してきたのがICCTのヨーロッパ支部であり、その欠陥と修正について、同支部は多くの情報を握っていたと考えられるからである。

ICCTは米国の規制当局、EPAと太いパイプを持っている。

もとEPAの局長Margo Ogeが現ICCTの幹部であることを考慮すると、ICCTは日本でいう省庁の外郭団体のような位置にあると言えよう。

しかし、両者には根本的に異なる点がある。

日本の外郭団体が政府や業界団体からの出資により運営されているのに対し、例えばICCTはもともとヒューレット・パッカード社の出資(寄付)で設立されており、現代は同じ規模のNPO、Climateworksとともに多くの基金によって運用されている。

(両団体の多くの幹部がジョージ・ソロスの有名なOpen Soceity Foundationのメンバーであることから、ソロスの影響は大きいと思われる。)

こういったスキャンダルは巨額のカネが動くので、情報収集的な面で基金(foundation)の運営には好都合だろう。

さて、ICCTはEPAからの調査依頼を受け、ウェストバージニア大学の作業チームに調査を委託した。
同チームは3台(VW2台、BMW1台)の自動車をサンディエゴからシアトルまで走らせて NOxの排出量を調査。VW車が規制値の15~30倍の排出量を記録したとされている。
(ICCTは結果をあらかじめ予想できていたと思われる。)

この作業にかかった費用は約50,000ドルだそうだが、雑誌の見出しなどでは50,000ドルで自動車産業界の巨人を倒した、と煽りが入れられている。

しかし、実際はこれを動かすまでには用意周到な計画があったと見るべきだろう。

ICCTを中心に規制当局者、基金関係者(=環境保護団体幹部)がシナリオを練りつつ、ウェストバージニア大学に調査を下すタイミングを測っていたのではないか。

日本ではNPOや外郭団体の成り立ちや運営形態が米国とは異なるので、彼の国ほど同種の団体が影響力を持つことはない。

米国では政府の影響力がNPOによって弱体化されている、という見方もできるが、NPOが政府の権力をある程度調整している面もあり、日本のように何から何まで政府(霞が関)に頼りっ放しというよりは自浄作用が期待できるのではないか、と思われる。


蛇足

米国でNPOの就職人気が高い背景には、NPOの安定した財務基盤と独立性が評価されているのではないか。

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