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中露先行の北極海資源開発 アメリカも参戦すべし - 岡崎研究所

元米海軍大将のラフヘッドが、米国の北国評議会議長国就任(2015年から2年)を機に、北極海での石油・ガス資源探査をロシア、中国に伍して活発化させるよう、オバマ大統領に求める論説を、8月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。

 すなわち、アラスカでのGlacier会議(北極圏の環境問題等についての外相レベルの国際会議)を前にしてオバマ大統領は、地球温暖化問題への対応強化を誓う談話を発表したが、北極地方の資源を確保するための戦略的対応も同時に強化してもらいたい。

 ロシアはペチョラ海のPrirazlomnaya鉱床で2014年原油採掘を開始し、約220万バレルを採取している。中国も北極海の資源確保を念頭に、周辺で利権を買いあさっている。

 ロシア、中国は単なる資源の入手を越えたことをやっている。ロシアは地域に6000名の兵士を増派し、レーダーその他センサー網を構築している。そして国連の大陸棚限界委員会に大陸棚延長承認を申請し、200カイリの経済専管水域からさらに100カイリまで管轄権を及ぼす構えでいる。中国も北極圏の国でないにもかかわらず、砕氷船を派遣したりしている(注:ウクライナ、フィンランド等に発注したもの)。

 これに比べて米国の無為は際立つ。2007年にチュコト海沖鉱区の利権売却で数十億ドルの歳入を得た後は、この地域の資源開発についての政治的意思と行政的ノウハウを構築していない。

 原油価格が下がり、シェールオイルの見通しもいい時に、北極への対応を面倒がる気持ちはわかる。しかし、米国は原油国内消費の40%を相変わらず輸入に依存、その半分はOPEC諸国に依存している。

 優柔不断にけりをつけねばならない。最近National Petroleum Council、政府の監督・規制諸省庁、NGO、環境運動家、産業界リーダー、アラスカ原住民代表が揃って発表した報告は、連邦政府がアラスカ沖北極海開発を直ちに促進することを求めている。

 オバマ大統領は8月、チュコト海での資源探査をRoyal Dutch Shellに許可したが、ロシア、中国に伍すことができるよう、許可対象を広げる必要がある。また米国は本年北極評議会の議長国となったが、それを利用して北極海での海運、資源開発、漁業に関わる基準・慣行の設定、探査に関わる安全基準の強化等について旗を振るべきである、と述べています。

出典:Gary Roughead,‘In the Race for Arctic Energy, the U.S. and Russia Are Polar Opposites’(Wall Street Journal, August 25, 2015)
http://www.wsj.com/articles/in-the-race-for-arctic-energy-the-u-s-and-russia-are-polar-opposites-1440542608

* * *

 近年、北極海の氷が減少するにつれて、この海域に豊富に賦存すると見られる石油・天然ガス資源開発がイシューになっています。ロシアは自国の大陸棚延長を国連に申請し、専管水域を拡大しようとしています。グリーンランドを有するデンマークも、北海油田の夢再びを狙って活発な外交を展開してきました。米国はこの海域ではアラスカが接するのみで、アラスカ本体にも資源が賦存していますが、本件論説が指摘しているように、ロシアが軍隊までこの海域で増強している現状では、北極海への対応は米ロ関係におけるコマとして使えるものとなっています。

 もっとも、北極海の氷は2011年記録的な後退を示した後、また増加したようですし、油価が下落したこと、そして対ロ制裁によってロシアは深海底掘削技術・ガス液化技術の双方入手を止められたこともあって(ロシアはこの面での自前の技術を持っていません)、議論の切迫度は後退しているものと思われます。

 米国の元駐ロシア大使James Collinsは26日付Carnegie財団ホームページ掲載の論説で、①同地域でのロシア軍の増強は挑発的である、②しかし米ロを含めた周辺諸国は、北極海の公海における漁業の禁止で合意できたし、近く開かれる海上保安当局間会議では海難救助における協力強化についても話し合えよう、③また同海域で砕氷船が不足することが懸念されており、この面でも話し合いが必要、④同海域でのロシア軍の動きは問題であり、北極評議会傘下の国防担当者間会議で話し合われるべきである、⑤米国は国連海洋法条約を批准しないと、北極評議会の他の参加国と同等の基盤に立てない、等の追加的諸点を提起しています。

日本は、北極評議会のオブザーバー国として、この問題には横から参与していくしかありませんが、ロシアの大陸棚延長承認については発言権を行使できます。日本が注意深い検討と対応を要するのは、北極海資源開発、あるいは北極海通商航路の利用が本格化した場合、中国がそのシーレーン防護のために、宗谷・津軽・対馬海峡、南西諸島間、及び日本海通航の安全に切実な関心を示すようになるだろうということです。

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